webstation plus

(※『素敵な日本人』表紙より)


 短編はお好きですか。

 私は小説に驚きや感動、励ましのようなものを求めているので、物語の世界観にどっぷり浸れて、イッキ読みできる長編を好んでいました。

 今もその思いは変わりませんが、東野圭吾さんの短編集『素敵な日本人』はひと味違います。

夢中になってイッキ読み。寝不足必死のサスペンス。それもいいけれど、読書は、もっと優雅なものでもあるのです。

 と帯にも書かれているように、短編集なのにじっくりと楽しめるミステリー小説です。意外性と機知に富んだ短編にハマること間違いなし!?

 今回は、『素敵な日本人』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『素敵な日本人』のあらすじ(『正月の決意』)

 子供達が独立し、夫婦二人きりになった前島達之と康代。彼らは近所の神社に初詣に行きました。

 そこで、お賽銭箱の前に倒れている男性を見つけます。はじめは酔っ払いかと思われましたが、倒れていたのは町長でした。

 前島夫婦はすぐに警察に通報します。しかし、やって来た警察官は「新年会があるのに」「正月なのに」と面倒くさがるばかり。宮司もお賽銭が少ないとぼやいてばかりいます。

 そんな彼らの姿を見ていると、前島夫婦の決意は揺らぎました。彼らが正月に立てた決意とは――。

 最後にどんでん返しと感動が待っている物語です。

 『素敵な日本人』のおすすめポイント

1. タイトルに込められているのは皮肉!?

 『素敵な日本人』というタイトルにも関わらず、素敵な日本人はあまり登場しません。あらすじで紹介したダメ警官や宮司のような人物ばかりが出てきます。

 ということは、笑小説シリーズのような皮肉が込められたタイトルなのでしょうか。

 しかし、そうと決めつけるわけにはいきません。『今夜は一人で雛祭り』に登場する主人公の亡き妻のように素敵な登場人物もいるからです。

 彼女は結婚後すぐに義母と同居することになりました。夫はそんな彼女を不憫に思っていたのですが…。

 実は自分なりに楽しみながら苦難を乗り越えてきたことがわかります。本当に素敵なお嫁さんだったのです。

 そんな彼女のことを『素敵な日本人』と言っているのでしょうか。

 それとも、正月や雛祭り、クリスマスなどの四季折々の風物を楽しむ日本人を素敵と言っている!?

 このようにタイトルに込められた意味を考えるのも楽しめるポイントです。

2. じっくりと楽しめる短編集

 『素敵な日本人』は全9章で構成されています。どれも意外性のある物語なので、読み終わった後も余韻が楽しめるんですよね。だから、じっくりと読みたいと思えるのかもしれません。

 なかでもオススメなのは『10年目のバレンタインデー』『壊れた時計』『クリスマスミステリ』の3編。

 それぞれ簡単に紹介していきます。

『10年目のバレンタインデー』

 大好きだった女性から何の前触れもなく、突然別れを切り出された作家の峰岸。彼は別れた後も彼女のことが忘れられませんでした。

 しかし、ある日。ファンレターのなかに彼女の名前を見つけます。そこには「久しぶりに会えませんか?」の文字が。

 こうして10年ぶりに彼女と再会することになった峰岸は、今晩のことを考えると胸の高鳴りがとまりません。しかし、彼女が峰岸に会おうとしたのは、ある理由があったからでした。その理由とは――。

 意外性のあるオチに驚くこと間違いなし!?

『壊れた時計』

 裏社会の仕事を引き受ける俺は、ある部屋に行って彫像を持ってくるよう依頼されました。

 しかも、犯行日時が特定できる証拠を残してほしい、つまり依頼主のアリバイ工作をするようにとの注文が。

 しかし犯行当日。目的の部屋に侵入しても彫像が見つかりません。なんとか見つけようと部屋中探し回っていると、帰ってきた家の主人と鉢合わせになり殺してしまいました。

 俺は考えます。明らかなアリバイを残せば、かえって疑われるのではないかと。

 そこで殺害時刻を指している被害者の壊れた腕時計を持ち帰ることにしたのですが――。それが原因で悲劇が!?

 こちらも意外性のある結末に驚かされる物語です。

『クリスマスミステリ』

 劇団の看板役者である黒須は、日本屈指の女流脚本作家・樅木弥生と付き合っていました。

 しかし、若い女性と浮気をしていた黒須は、浮気がバレると仕事がなくなると思い、マンドラの毒で弥生を殺すことに。

 アリバイ工作をして弥生に毒を飲ませることに成功した黒須でしたが、その後のクリスマスパーティーで弥生の姿を見かけます。一体どうなっているの!?

 『素敵な日本人』の中で一番驚いた物語です。オチが読めないのでドキドキしながら楽しめました。

 最後に

 東野圭吾さんの小説『素敵な日本人』。

 たとえば「毎日寝る前に一編」というように、じっくりと楽しめる短編集です。私は他の小説と並行しながらじっくりと楽しみました。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

『かがみの孤城』は人とのつながりを大切にしたくなる小説

(※『かがみの孤城』表紙より)  辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。  見ず知らずの中学生7人が鏡の世界に入り込み、一年間ともに過ごす物語です。読めば、「人とのつながりを大切にしよう」と思うこと間違いなし!?  今回は …

『バレエなんて、きらい』は他人にあわせて生きるのはやめようと思える物語

 他人にあわせて生きていませんか?  私も昔は他人にあわせて生きていましたが、そうすることがとてもシンドイことだと気づいたので、自分らしく生きるようになりました。  それから生きるのが楽になったんですよね。  『バレエな …

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』/人間の最大の武器は信頼と習慣

 「あなたが犯人だ!」とマスコミに取り上げられたとき、どれだけの人が無実だと信じてくれるでしょうか。  私の場合は…。もっと誠実に生きないとダメですね。伊坂幸太郎さんの小説『ゴールデンスランバー』を読んでそんな思いになり …

離婚はイヤ!?滝口悠生『茄子の輝き』は妻を大切にしようと思える小説

(※『茄子の輝き』表紙より)  滝口悠生さんの小説『茄子の輝き』。  数年前に妻と離婚した男性があれこれ過去を振り返る物語です。読めば「妻を大切にしよう!」と思うこと間違いなし!?  今回は『茄子の輝き』のあらすじとおす …

犯人は誰!?米澤穂信『愚者のエンドロール』は探偵がいないミステリー小説

(※『愚者のエンドロール』表紙より)  米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。  前作『氷菓』に続く古典部シリーズ第2弾の本作は、2年F組の先輩たちが自主制作したミステリー映画の謎に迫る物語です。読めば驚きの結末が! …

毎日が勝負!?池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』は会社と野球部の逆転劇を描いた小説

(※『ルーズヴェルト・ゲーム』表紙より)  毎日、闘っていますか。  私は闘っていません。会社に行って「今」という時間をやり過ごしているように思います。目の前の仕事に追われて、流されている感じ。  しかし、池井戸潤さんの …

『小太郎の左腕』は出世の代償は高くつくことを教えてくれる小説

(※『小太郎の左腕』表紙より)  和田竜さんの小説『小太郎の左腕』。  山奥でひっそりと暮らす小太郎が、戸田家の名将・林半右衛門(はやし はんえもん)によって戦場に連れ出され、圧倒的な力を発揮する物語です。読めば、出世の …

他人の考えに縛られる必要はない/伊坂幸太郎『重力ピエロ』感想

 強姦魔に犯されて生まれてきた子・春が、遺伝子のつながりと家族との絆の間で揺れ動く物語。それが伊坂幸太郎さんの小説『重力ピエロ』です。  とにかく暗い物語ですが、ラストですべてが救われたような気分になれるんですよね。その …

東野圭吾『探偵ガリレオ』は科学的な視点で事件を解決するミステリー小説

(※『探偵ガリレオ』表紙より)  東野圭吾さんの小説『探偵ガリレオ』。  警視庁捜査一課の草薙俊平が、帝都大学理工学部の准教授・湯川学とともに科学的な視点で事件を解決していくミステリー小説です。読めば、湯川准教授に挑戦し …

法律なんてクソ食らえ/東野圭吾『沈黙のパレード』感想

 沈黙を続ける殺人犯を証拠不十分で無罪にした草薙たち警察が、その犯人を殺した関係者を追い詰める物語。それが東野圭吾さんの小説『沈黙のパレード』です。  久しぶりのガリレオシリーズとあって期待を裏切らない面白さでしたが、そ …