重松清『みんなのうた』感想/田舎暮らしは大変すぎる

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 田舎に帰っていますか。

 私は都会で暮らしてきたので、田舎と呼べる場所はありませんが、重松清さんの小説『みんなのうた』を読んで、田舎暮らしの大変さが少しだけわかりました。

 田舎と聞くと自然に囲まれた良いイメージをもっていましたが、それだけではないんですよね。




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 なぜ田舎暮らしをしたくないのか

 物語の主人公は東大受験に3回失敗したレイコさん。彼女は都会で暮らすことを夢みていましたが、夢破れ、東京から田舎の梅郷に帰ることになりました。

 その帰り道に偶然出会ったのが幼馴染のイネちゃんです。

 イネちゃんは、レイコさんとは真逆のタイプで、高校一年生で家出をして東京で結婚していましたが、夫を東京に残して子供と二人で田舎に帰ろうとしていました。

 レイコさんは、そんな活動的なイネちゃんを避けようとしますが、田舎暮らしにすぐに馴染んだ彼女に振り回されるんですよね。

 では、なぜレイコさんは田舎暮らしを嫌っていたのでしょうか。

 それはプライベートがないからです。噂話がすぐに広まるなど、多くの人から監視されているように感じて、疲れるからです。

 とはいえ、田舎暮らしをしている人たちも、のんきに他人のことを詮索しているわけではありませんでした。

 なぜなら…。

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 田舎には若者が暮らしたいと思える魅力がない?

 田舎には若者が住みたいと思えるほどの魅力あるものがありません。そのため、梅郷で育った若者も、どんどん都会に出ていきました。

 その象徴がこいのぼりです。昔は梅郷にも多くの子供たちがいたので、5月になると多くのこいのぼりが泳いでいましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。

 もちろん、実質的な悩みもあります。農業で生計を立てていた人たちが歳をとったので、田んぼを耕すことができなくなったのです。

 梅郷に残っているのは、大学受験に失敗するなどして、都会で暮らすことができなかった人たちばかりです。とはいえ、その多くは60歳を過ぎています。

 そこで若者に何とか梅郷に残ってもらおうと、カラオケ店を作ったり、こいのぼりをたくさんひるがえしたりして活性化をはかっているわけですが、それだけでは難しいんですよね。

 だからこそ、余計にレイコさんたち若者のプライベートを監視して、動向を伺ってしまうわけですが…。

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 田舎の魅力は人間のあたたかさ

 レイコさんの家族は、梅郷に残って欲しいと思っていましたが強制しませんでした。

 東京に3年間もお金を出して行かせてあげたレイコさんに、「梅郷に残れ!」という権利はあるはずなのにです。

 それは、「自分の人生は自分で決めるべきだ」という想いをもっていたからでした。

 そんな家族のあたたかい気持ちに触れたレイコさんは、少しずつ梅郷で暮らすのも良いかも…って思うようになるんですよね。

 つまり、田舎の強みとは、人間のあたたかさなんだと思います。そんなあたたかな気持ちで若者と接することができれば、もしかすると田舎も活性化できるのかもしれません。

 ◆

 重松清さんの小説『みんなのうた』。読めば、田舎暮らしの大変さと家族のあたたかさに心動かされる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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