webstation plus

(※『みんなのうた』表紙より)


 田舎に帰ってますか。

 私はもともと都会と呼ばれる場所で育ったので田舎はありませんが、重松清さんの小説『みんなのうた』を読んで田舎で育った人たちの苦労が少しだけわかりました。

 読めば、家族の温かさに感動すること間違いなし!?

 今回は『みんなのうた』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『みんなのうた』のあらすじ

 東大受験に3回失敗したレイコさんは、夢破れて東京から田舎の梅郷に帰ることになりました。

 その帰り道で一緒になったのが幼馴染のイネちゃん。イネちゃんは、レイコさんとは真逆のタイプで、高校一年生で家出をして東京で結婚。今では夫を東京に残したまま子どもと二人で梅郷に帰ろうとしています。

 レイコさんは、そんなイネちゃんを避けようとしますが、田舎暮らしに先に馴染んだイネちゃんに振り回されることに。

 さらに、個性豊かな家族や田舎の人たちとのコミュニケーションを通して、「田舎から抜け出したい」という思いだけで東大を目指してきたレイコさんの考えが変わっていきます。そして最後は――。

 感動間違いなしの物語です。

 『みんなのうた』のおすすめポイント

1. 心がチクっとする短編集

 『みんなのうた』は、全6章で構成された短編集と見せかけた長編小説です。

 レイコさん、イナちゃん、レイコさんの弟など、物語の中心となる人物を変えながらレイコさんとイナちゃんの田舎暮らしが描かれていくんですよね。

 なかでもおすすめなのが、『泳げ、こいのぼり』、『フルサトガエル』、『エラジンさん』。

 それぞれ簡単に紹介していきます。

『泳げ、こいのぼり』

 レイコさんの弟・タカツグはカラオケ店の店長。そのカラオケ店に毎日70歳を超えた服部さん夫婦がやってきます。

 しかし、彼らはクリームソーダを注文して部屋に入ると、歌うことなく時間がくるまで座ったままでした。一体どうして?

 そんな服部さん夫婦が、地域活性化プロジェクト「こいのぼりを空にひるがえらせよう」に協力したいと言います。

 そこでレイコさんとイネちゃんがこいのぼりを借りに家まで行ったところ――。

 服部さん夫婦がクリームソーダを飲む理由に感動すること間違いなし!?

『フルサトガエル』

 イネちゃんの夫が東京から梅郷にやってきました。イネちゃんを迎えに来たのです。

 しかし、イネちゃんは夫に会おうとしませんでした。その理由は――。

 イネちゃんの決断に心がチクっとする物語です。

『エラジンさん』

 梅郷に突然、「絶対反対」という看板が立ちました。しかし、誰が何に反対しているのかまったくわかりません。

 気味悪くなったレイコさんが家族に相談したところ、サブちゃんという60歳を過ぎた気の良いおじさんが立てたことがわかりました。なぜ、サブちゃんは看板を立てたのか!?

 最後に涙が止まらなくなる物語です。

2. 田舎暮らしのツラさがわかる

 田舎で暮らす人たちの悩みは、若者が田舎から都会に出て行くことでした。

 その象徴がこいのぼり。昔は梅郷にも多くの子どもがいたので、5月になるとそこら中にこいのぼりがひるがえっていましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。それだけ子どもが少なくなったのです。

 もちろん、実質的な悩みもあります。農業で生計を立てていた人たちが歳をとったので、田んぼを耕すことができなくなくなりました。

 梅郷に残っているのは、大学に行けなかったサブちゃんのような人たちばかり。そんな彼らが歳をとった人たちに代わって農作業をするのですが、サブちゃん自身も60歳を過ぎています。

 そこで何とかして若者を梅郷に残そうと、カラオケ店を作ったり、こいのぼりをたくさんひるがえしたりして活性化をはかろうとしているわけですね。

 もちろん、夢破れたレイコさんにも梅郷に残って欲しいと誰もが思っていますが――。

 田舎で暮らす人たちの悩みに共感できる物語です。

3. 家族の温かさに感動

 レイコさんの家族は、梅郷に残って欲しいとレイコさんに伝えますが、一方で、「自分の人生は自分で決めるべきだ」という想いをもっていました。

 そこで、彼らはレイコさんの意見を何よりも尊重します。そんな想いに触れたレイコさんは――。

 最後に感動が待っている物語です。

 最後に

 重松清さんの小説『みんなのうた』。読めば、家族の温かさに感動すること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

仕返しするのはダメ?伊坂幸太郎『サブマリン』は少年犯罪について考えたくなる小説

(※『サブマリン』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『サブマリン』。  以前、紹介した『チルドレン』の続編で、家裁調査官の陣内と武藤が無免許運転で人を轢き殺した少年の謎に迫る物語です。読めば、少年犯罪についてあれこれ考え …

盗人にもモラルがあった!?池波正太郎『鬼平犯科帳(1)』は正義と悪がごちゃ混ぜになった小説

(※『決定版 鬼平犯科帳(1)』表紙より)  池波正太郎さんの小説『鬼平犯科帳(1)』。  大きくみると鬼平が悪者を退治するという構成の物語ですが、盗人にもモラルがある者やそうでない者がおり、盗人同士でも闘いを繰り広げる …

悩みにどう向き合う?畠中恵『おまけのこ』は優しさと哀しさに満ち溢れた小説

(※『おまけのこ』表紙より)  畠中恵さんの小説『おまけのこ』。  しゃばけシリーズ第4弾の本作は、若だんなや幼馴染の栄吉、お雛ちゃんたちが自分の悩みにゆるく向き合う時代小説です。  読めば彼らの優しさと哀しさに心動かさ …

『土佐堀川』は自分の悩みがちっぽけに思える小説

(※『土佐堀川』表紙より)  古川智映子さんの小説『土佐堀川』。  NHK連続テレビ小説「あさが来た」の原作で、広岡浅子さんの生涯を描いた物語です。読めば自分の悩みがちっぽけに思えること間違いなし!?  今回は、『土佐堀 …

忍者は残酷!?『忍びの国』は家庭環境の影響力に驚かされる小説

(※『忍びの国』表紙より)  和田竜さんの小説『忍びの国』。  織田信長の次男・信雄(のぶかつ)が伊賀忍者たちに煽られ、信長の忠告を無視して伊賀に攻め込む物語です。読めば家庭環境や育った環境の影響力に驚くこと間違いなし! …

『ホワイトラビット』は何度も驚かされるミステリー小説

(※『ホワイトラビット』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『ホワイトラビット』。  始めから終わりまで伊坂ワールド全開の物語です。読み始めれば、ページをめくる手が止まらなくなること間違いなし!?  今回は『ホワイトラビッ …

人の心も科学!?東野圭吾『ガリレオの苦悩』は心に響く言葉が満載の小説

(※『ガリレオの苦悩』表紙より)  東野圭吾さんの小説『ガリレオの苦悩』。  今作から新たに加わった女性刑事・内海薫の登場により物語の幅が広がったミステリー小説です。読めば湯川准教授の言葉が心に響くこと間違いなし!?   …

病弱でも強くなれる!?畠中恵『しゃばけ』は妖怪が活躍するミステリー小説

(※『しゃばけ』表紙より)  10年ほど前に買った畠中恵さんの小説『しゃばけ』。  久しぶりに読みましたが、病弱なのに難題に立ち向かう若だんなの姿に感動しました。読めば自分も頑張ろうと思えること間違いなし!?  今回は『 …

心揺さぶられる物語!?浅田次郎『おもかげ』は定年退職を迎えたサラリーマンが人生を振り返る小説

(※『おもかげ』表紙より)  浅田次郎さんの小説『おもかげ』。  定年を迎えたサラリーマン・竹脇正一が、送別会の帰りに倒れ、病院内で不思議な体験を繰り返す物語です。  読めば、彼の生き様や家族の温かさに心揺さぶられること …

読書は優雅なもの!?東野圭吾『素敵な日本人』は意外性にあふれたミステリー小説

(※『素敵な日本人』表紙より)  短編はお好きですか。  私は小説に驚きや感動、励ましのようなものを求めているので、物語の世界観にどっぷり浸れて、イッキ読みできる長編を好んでいました。  今もその思いは変わりませんが、東 …