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(※『マリアビートル』表紙より)


 ムカつく中学生っていますよね。大したことも出来ないくせに、大人を馬鹿にしたり、見下したり、暴言を吐いたり…。そんな生意気な中学生にはどのように対処すればいいのでしょうか。

 今回は殺し屋シリーズ第2弾『マリアビートル』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら考えてみたいと思います。

 『マリアビートル』のあらすじ

 6歳の息子をデパートの屋上から突き落とされた木村雄一。彼は病院で寝たきりになった息子の復讐をするために、東北新幹線「はやて」に乗り込みました。しかし、そのことを復讐相手の中学生・王子に見抜かれ、逆に捕まることに。

 一方、木村が乗っている東北新幹線には多数の殺し屋が乗っていました。

 峰岸というヤバイ人間の息子を誘拐犯から救い出した殺し屋・蜜柑と檸檬は、身代金が入ったトランクを盗まれ、探しています。そのトランクを盗んだ七尾は、別の殺し屋に出会い新幹線から降りられなくなりました。

 こうして、殺し屋たちを乗せた東北新幹線は、終点の盛岡を目指して進んでいきます。彼らがたどり着く結末とは!?

 『マリアビートル』のおすすめポイント

1. 大人を舐めている中学生に殺意を覚える物語

 中学生の王子は大人を馬鹿にしていました。木村が復讐をしようとやってきたときも、彼をスタンガンで気絶させ、ベルトで固定した後、

「おじさん、本当に馬鹿だね。こんな予定通りに行動してくれるなんて、驚きだよ。パソコンのプログラムだって、ここまで思い通りに動かないのに」
「ごめんね。大好きなお酒まで我慢して、頑張ったのに」

 と言って挑発します。さらに、言うことを聞かないと息子の命を奪うと脅し、新幹線内で起こるトラブルに首を突っ込んでいきます。

 また、王子はこれまで同級生を自殺に追い込んだり、同級生の両親を破滅に追いやったりと狡猾で悪意に満ちた行動をとっていました。

 そんな王子の言動に殺意を覚える物語です。

2. ユニークな殺し屋に心奪われる!?

 一方の殺し屋たちはユニークな人物ばかりでどこか憎めません。

 檸檬は、短絡的で軽率な性格ですが、機関車トーマスが大好き。彼が口にするたとえ話の大半はトーマスたちのエピソードで、人生の教訓も喜びもすべてそこから学んだかのように話します。

 そんな檸檬とコンビを組んでいる蜜柑は、檸檬と身長や体重、見た目の雰囲気はそっくりですが、性格は正反対。いつも檸檬のミスに悩まされています。

 七尾はツキのない殺し屋で、いつも信じられないトラブルに巻き込まれていました。政治家の浮気現場を撮影する仕事で連続射殺事件が起こったり、ファーストフード店に行って「うますぎる、うまさ爆発だ」と大げさに驚く仕事で、本当に店が爆発したりします。

 今回も誰かの旅行荷物を奪って降りるだけのはずが…。

 他にも、嘘ばかりつく殺し屋・狼や殺した形跡を残さないミツバチなど多数の殺し屋が登場。

 自分が幸運だと信じている狡猾な中学生とは対照的に、好感が持てる殺し屋ばかりです。

3. ラストでスッキリ

 狡猾な中学生・王子の言動に怒りがふつふつと湧き上がってくる物語ですが、ある二人の活躍でスッキリできました。

 まず一人目は、前作『グラスホッパー』の主人公・鈴木。彼は「人を殺してはいけないのか」と聞いてまわる王子にこう答えます。

「どうして、君たちは決まって、『人を殺してはいけないのか』ということだけを質問してくるのか。それならば、『どうして人を殴ってはいけないのか』『どうして他人の家で勝手に寝泊まりできないのか』『どうして学校で焚き火をしたらいけないのか』とも質問すべきではないかな。どうして侮辱はいけないの?とかね。殺人よりも、もっと理由のわからないルールがたくさんある。だからね、僕はいつもそういう問いかけを聞くと、ただ単に『人を殺す』という過激なテーマを持ち出して、大人を困らせようとしているだけじゃないか、とまず疑ってしまうんだ」

 そしてもう一人。名前は明かしませんが、彼は王子に向かって次のように言います。

「六十年、死なずにこうやって生きてきたことはな、すげえことなんだよ。分かるか?おまえはたかだか十四年か十五年だろうが。あと五十年、生きていられる自信があるか?口では何とでも言えるがな、実際に、五十年、病気にも事故にも事件にもやられずにな、生き延びられるかどうかはやってみないと分からねえんだ。いいか、おまえは自分が万能の、ラッキーボーイだと信じているのかもしれねえが、おまえができないことを教えてやろうか」
「この後、五十年生きることだ。残念だが、おまえよりも俺たちのほうが長生きをする。おまえが馬鹿にしている俺たちのほうが、おまえより未来を見られる。皮肉だろ」
「大人を馬鹿にするなよ」

 つまり、反抗期の中学生には厳しいお灸をすえることが大切なんですね。ぜひ、実際に読んでスッキリしてください。

 ※前作『グラスホッパー』もおすすめです。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『マリアビートル』。読めば、大人を馬鹿にする中学生にどのようにお灸をすえるべきか学べる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 ※殺し屋シリーズの紹介はこちら。

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