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 ムカつく中学生っていますよね。大したことも出来ないくせに、大人をバカにしたり、見下したり、暴言を吐いたり…。

 そんな生意気な中学生にはどのように対処すればいいのでしょうか。

 もちろん、痛い目に合わせるしかありませんよね。伊坂幸太郎さんの小説『マリアビートル』を読んで、強くそう思うようになりました。

 大人を舐めている中学生に殺意を覚える

 6歳の息子をデパートの屋上から突き落とされた木村雄一。彼は病院で寝たきりになった息子の復讐をするために、東北新幹線「はやて」に乗り込みましたが、そのことを復讐相手の中学生・王子に見抜かれ、逆に捕まることに。

 一方の王子はというと、大人を舐めきっていました。木村が復讐をしようとやってきたときも、彼をスタンガンで気絶させ、ベルトで固定した後、

「おじさん、本当に馬鹿だね。こんな予定通りに行動してくれるなんて、驚きだよ。パソコンのプログラムだって、ここまで思い通りに動かないのに」
「ごめんね。大好きなお酒まで我慢して、頑張ったのに」

 と言って挑発します。さらに、言う通りにしないと息子の命を奪うと脅迫して、新幹線内で起こるトラブルに首を突っ込んでいくんですよね。

 そんな王子の言動に殺意を覚える物語ですが…。

 二人の大人が彼に罰を与える

 まず一人目は、前作『グラスホッパー』の主人公・鈴木。彼は「人を殺してはいけないのか」と聞いてまわる王子にこう答えます。

「どうして、君たちは決まって、『人を殺してはいけないのか』ということだけを質問してくるのか。それならば、『どうして人を殴ってはいけないのか』『どうして他人の家で勝手に寝泊まりできないのか』『どうして学校で焚き火をしたらいけないのか』とも質問すべきではないかな。どうして侮辱はいけないの?とかね。殺人よりも、もっと理由のわからないルールがたくさんある。だからね、僕はいつもそういう問いかけを聞くと、ただ単に『人を殺す』という過激なテーマを持ち出して、大人を困らせようとしているだけじゃないか、とまず疑ってしまうんだ」

 つまり、そんなくだらない質問をしてまわるなんて、まだまだガキだなぁ…と精神的に未熟なことを見抜くんですよね。

 この答えに腹を立てた王子でしたが、もうひとりによって、徹底的に追い詰められました。彼は王子にこんなことを言います。

「六十年、死なずにこうやって生きてきたことはな、すげえことなんだよ。分かるか?おまえはたかだか十四年か十五年だろうが。あと五十年、生きていられる自信があるか?口では何とでも言えるがな、実際に、五十年、病気にも事故にも事件にもやられずにな、生き延びられるかどうかはやってみないと分からねえんだ。いいか、おまえは自分が万能の、ラッキーボーイだと信じているのかもしれねえが、おまえができないことを教えてやろうか」
「この後、五十年生きることだ。残念だが、おまえよりも俺たちのほうが長生きをする。おまえが馬鹿にしている俺たちのほうが、おまえより未来を見られる。皮肉だろ」
「大人を馬鹿にするなよ」

 このように生意気な中学生には、大人が厳しいお灸をすえることが大切なんですね。しかし、現実は…。

 子供たちが優位な社会になっている

 モンスターピアレントのせいで、学校の先生たちの行動が制限されたり、少年法によってどんな行動も許されたりと、人を見下しても、暴力を振るっても子供が守られる社会になっています。

 そんな社会で子供たちに舐められないようにするには、私たち大人がもっとカッコよくなるしかありませんよね(『チルドレン』の感想でも書きました)。

 そんな思いにさせてくれた小説が伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』。ユニークな殺し屋も多く登場するので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 ※他の殺し屋シリーズもおすすめです。

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