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 私たち人間には、他の生物にはない特権が与えられている。それは「目標がもてる」ということだ。

 人間は、目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる。

(アリストテレス)

 では、人間以外の生物はいったい何に突き動かされて生きているのだろうか。結論からいえば、遺伝子である。

 小説『風の中のマリア』は、オオスズメバチの世界を描いた物語。主人公であるマリアはオオスズメバチのワーカー(働き蜂)として、三十日という短い命を与えられる。しかし、彼女はその短い一生を「狩り」に費やす。恋をすることも、子どもを産むこともなく、アシナガバチ、イナゴ、コガネムシといった虫を狩り、巣で待つ幼虫のために持ち帰る――そんな仕事をして一生を終えるのだ。

 では、なぜ彼女たち働き蜂は恋もせずに働き続けるのだろうか。それは、自分と同じ遺伝子(ゲノム)を未来に残す確率を高めるためだ。

 具体的に説明していこう。たとえば、(A)+(B)というゲノムをもつ女王蜂と、(C)というゲノムをもつオス蜂がいたとする。この女王蜂がオス蜂の子どもを産む場合、(A)+(C)または(B)+(C)の二種類の子どもが生まれることになる。

 ここで、(A)+(C)のゲノムをもって生まれてきた働き蜂からみると、同じ(A)+(C)のゲノムをもって生まれてくる妹(働き蜂)には100%ゲノムが引き継がれ、(B)+(C)のゲノムをもって生まれてくる妹(働き蜂)には50%引き継ぐことができる。つまり、妹の世話をすれば、平均(100+50)/2=75%のゲノムを引き継ぐことができるのだ。

 一方、働き蜂(A)+(C)がオス蜂(D)と交尾をして子どもを産む場合、生まれてくる子どものゲノムは(A)+(D)または(C)+(D)となる。どう頑張っても50%しかゲノムを引き継ぐことができない。だから、働き蜂たちは、恋をすることも、子どもを産むこともなく、妹たちのために狩りに出かけるのである。

 では、私たち人間はいったい何に突き動かされて生きているのだろうか。もちろん、遺伝子に突き動かされている部分もあるだろう。子どもが欲しくなるのもそのためだ。しかし、冒頭にも書いたように、私たち人間は目標がもてる。この限りある生を何のために使うかを自分で決めることができるのだ。

 だから、複数の異性とSEXをして自慢するような生き方をしいてはもったいない。それでは虫と変わらないではないか。そうではなく、私たち人間だからできること。そういう大きな目標を掲げて生きていきたい。

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