伊坂幸太郎『魔王』は考える力を失った人たちの恐ろしさがよくわかる物語

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他人の意見に流されていませんか?

私は何でも「なぜ?」と考えるクセがあるので、あまり世間の風潮に流されていないと思いますが、

伊坂幸太郎さんの小説『魔王』を読んで、考える力を失った人たちの恐ろしさがよくわかりました。

彼らは普段からあまり深く考えていないので、発言力のある人たちの意見に簡単に流されてしまうんですよね。

今の日本でもよく見かける光景ですが…。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 洗脳に立ち向かう主人公の物語が気になる人
  • 特殊能力を駆使して戦う人たちの物語が好きな人
  • 他人の意見に流されている人
  • 伊坂幸太郎さんの小説が好きな人
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あらすじ:「考えろ、考えろ、マクガイバー」が口癖の主人公の物語

物語の主人公は、会社員の安藤。

彼は子供の頃にみた海外ドラマ『冒険野郎マクガイバー』の主人公が言ったセリフを大人になった今でも覚えていました。

そして、他人の意見に流されそうになると、そのセリフ「考えろ、考えろ、マクガイバー」を心の中で唱えて自分の考えを整理します。

安藤は何事も自分で考えないと気が済まない性格だったんですよね。

そんな安藤にはある特殊能力がありました。自分の考えたことを他人の口を通して発言できる能力…「腹話術」が出来たのです。

彼はこの能力を使って、電車で偉そうに座っている若者や、会社で部下を怒鳴りつけている上司に向かって暴言を吐きます。というか対象者の口から吐かせます。

ところが、この頼りない能力を使って戦うべき相手が現れました。未来党の党首である犬養舜二です。

犬養はとにかく強い言葉を使って多くの人たちを扇動しました。

たとえば、

「政治を任せてくれれば、五年で景気を回復させてみせる。五年で、老後の生活も保障しよう」
「五年だ。もしできなかったら、私の首をはねればいい」

まったく中身はありませんが、深く考えない人にとって、彼の言葉はとても魅力的でした。

だからこそ、安藤は犬養がムッソリーニやヒトラーのように振る舞うことを警戒し、ファシズムに陥らないか心配していたのですが…。

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多くの人たちが犬養に扇動されて暴動を起こす

残念ながら、安藤の心配通りに物事が進んでいくんですよね。

犬養はアメリカや中国を強く非難していましたが、彼が望む方向へと世間が動き出したのです。

きっかけは、日本代表とアメリカ代表のサッカー親善試合でした。試合後に日本代表の選手がアメリカ人に刺されて死んだため、反米感情が一気に高まったのです。

その結果、アメリカに本社があるファーストフード店が荒らされ、放火されました。

また、安藤と仲の良かったアメリカ人のアンダーソンの家まで燃やされます。

安藤は、ヒステリックに騒ぐ暴徒たちの姿をみて、音楽の授業で習ったシューベルトの『魔王』を思い出しました。

息子がどれだけ叫んでも、父親が魔王の存在に気づかない、あの物語です。

安藤は思います。息子は俺だ。俺だけが魔王の存在に気づき、叫び、騒ぎ、おののいているけれど、周囲にいる誰もがそれに気づいていない…と。

そこで、安藤は腹話術の能力を使って犬養に立ち向かおうとしますが…。

でたらめでもいいから自分の考えを信じて行動しよう

この続きは実際に読んでもらうとして、伊坂幸太郎さんの小説『魔王』は、考える力を失った人たちの恐ろしさがよくわかる物語です。

それだけでなく、自分でもいろいろ考えてみたくなる物語でもあるんですよね。

「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば」
「そうすりゃ、世界が変わる。」

と、安藤が言うように、他人の考えを鵜呑みにしないで、でたらめでもいいから、自分で考えて行動してみたくなる物語です。

さて、この小説は、今回紹介した物語以外にも、安藤の弟である潤也を主人公とした物語が語られます。

ところが、この物語は突然終わりを迎えるので、50年後の世界を描いた『モダンタイムス』を続けて読むことをお勧めします。

とはいえ、それほど繋がりはありませんが…。

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とにかく、『魔王』は、伊坂幸太郎さんにしては珍しく政治的要素が強い物語です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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