webstation plus

(※『まほろ駅前多田便利軒』表紙より)


 三浦しをんさんの小説『まほろ駅前多田便利軒』。人間の闇の部分に焦点を当て、それを暗すぎず、明るすぎず、ちょうどいい文体で描かれた小説です。読み進めていくうちに心の奥底を揺さぶること間違いなし!?

 今回は、『まほろ駅前多田便利軒』のあらすじと感想を紹介します。

 『まほろ駅前多田便利軒』のあらすじと感想

〇 『曽根田のばあちゃん、予言をする』

 便利屋の仕事をしている多田は、自分の代わりに息子として母の見舞いに行って欲しいという依頼を受けます。その病院で多田は曽根田のばあちゃんから「自分のことで忙しくなる」「嫁と離婚する」などと予言されることに。多田の未来はどうなる!?

 本当にいい息子なら、年老いた母親を病院に放り込んだまま正月を迎えたりしないし、あかの他人に、代理で母親の見舞いをさせたりしない――というセリフが心に残りました。

一 『多田便利軒、繁盛中』

 次に多田のもとにやって来た依頼は、チワワの面倒をみること。しかし、契約の日時を過ぎても依頼者は犬を迎えに来ませんでした。

 その結果、多田の手元に残ったのは、チワワと無職の同級生・行天のみ。多田はチワワと行天をどうするのか!?

 多田の相棒・行天が初登場の物語。高校3年間で一言しか発しなかった行天が、おしゃべりになって多田の前に現れます。なぜ、行天はおしゃべりになったのか気になる物語でした。

二 『行天には、謎がある』

 行天が多田の事務所に押しかけてから二ヶ月が経過。その間、チワワの新しい飼い主を探していた多田でしたが、候補者さえ見つかりませんでした。そこで本格的に探し始めることに。

 そうして、ようやく見つかったのが、自称コロンビア人の娼婦。多田と行天は彼女にチワワを預けるのか!?

 「職業に貴賎はない」という行天のセリフに対して、「それは、落ちたことのないやつが言う綺麗事だ。おまえだってわかってるんじゃないのか」という多田のセリフが心に残りました。

三 『働く車は、満身創痍』

 小学生になる息子の塾の送り迎えをして欲しいという依頼が多田のもとに。しかし、その小学生は、親に隠れてやばいアルバイトをしていました。その結果、多田の愛車のフロントガラスが粉々に!?

 「与えられなかったものを、今度は望んだ形で、おまえは新しくだれかに与えることができるんだ。そのチャンスは残されている」という多田のセリフがカッコ良すぎる物語です。

四 『走れ、便利屋』

 娘のお墓まいりに行った帰りに行天の元妻と子に出会った多田。一方その頃、行天は娼婦を守るためにある人物を殺そうとしていました。一体どうなる!?

 裏社会が描かれる物語。実際にこんな世界があるのかと思うとゾッとします。

四・五 『曽根田のばあちゃん、再び予言する』

 刺された行天の見舞いに訪れた多田。そこで、曽根田のばあちゃんから再び予言されることに。内容は、「家には帰れそうかい?」「あんまり長く旅をつづけていると、帰る場所がわからなくなるからね」というものでした。果たして多田の未来は!?

 行天と多田の関係が徐々に友人と呼べるような関係に。続きが気になって仕方がない物語です。

五 『事実は、ひとつ』

 実の親を殺害して逃走中の女子高生。彼女の友人である清海は、マスコミから追いかけられていました。多田と行天は彼女をマスコミから守れるのか!?

 「会った日の夜に、どうして本当のことを言う気になったのか、って聞いたでしょ?たぶん、便利屋さんたちが本気だったからだよ。本気で私の話を聞こうとしてたから」という清海のセリフが心に残りました。子どもの話を真剣に聞ける大人でありたいと思います。

六 『あのバス停で、また会おう』

 納屋にある荷物を整理して欲しいとの依頼が。行天と共に荷物整理をしていた多田でしたが、そこに現れたひとりの人物がきっかけで行天との関係が悪化。一体どうなる!?

 行天の優しさが伝わってくる物語。最後は泣けます。

 最後に

 小説『まほろ駅前多田便利軒』は、人間の闇の部分に焦点を当て、幸福を再生することはできるのか?をテーマに描かれた小説です。多田と行天の物語を通して、心の奥底にある感情を揺さぶられること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

登場人物が薄っぺらい人間ばかりの小説『白ゆき姫殺人事件』

 他人をあれこれ評価していませんか? 「あいつは仕事のやり方が悪い」 「いい人なんだけどダサいよね」 「あれじゃ、結婚できなくて当然」  などなど。もし、普段からこのような陰口を言っているようなら、キッカケさえあれば友人 …

『PK』は「勇気は未来に伝染する」がテーマのSF小説

(※『PK』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『PK』。三編の中編から構成されており、「勇気は未来に伝染する」がテーマのSF小説です。読み進めていくうちに勇気が湧いてくること間違いなし!?  今回は『PK』のあらすじと感 …

『魔王』は自分の考えを信じる大切さを教えてくれる小説

(※『魔王』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『魔王』。政治を舞台に、他人の意見に同調することの怖ろしさと自分の考えを信じる大切さを教えてくれる物語です。  今回は、『魔王』のあらすじと感想を紹介します。  『 …

日本人にとってもはや戦争は他人事なの?/月村了衛『土漠の花』

 私がまだ子どもだった頃。終戦記念日にテレビをつけると、ほとんどのチャネルで戦争番組が放送されていた。「アニメやお笑いがみたい」と思っても、その日は諦めるしかなかったほどだ。  ところが、今では戦争番組そのものが減ってい …

過去の自分を受け入れたくなる小説/『コーヒーが冷めないうちに』

 「4回泣ける」と評判の『コーヒーが冷めないうちに』を読みました。残念ながら、Amazonのカスタマーレビューに書かれている通りツッコミどころ満載の小説でしたが、設定が面白くて最後まで一気に読んでしまいました。  一見拙 …

あなたの人生がつまらない理由/下村敦史『生還者』

 コカイン疑惑報道を受けて、芸能界から引退することを決められた成宮寛貴さん。彼は、母子家庭で育ち、中学生のときに母親を亡くした後、弟の面倒をみるなど苦労を重ねた末に芸能界で活躍されていましたが、写真週刊誌「FRIDAY」 …

信じる力の恐ろしさを教えてくれる小説『リア王』

 「プラシーボ効果」をご存知でしょうか。  別名、偽薬効果とも呼ばれており、たとえば夜眠れないと訴える患者に、医師が睡眠薬と偽ってビタミン剤を処方すると、患者は薬の効果を信じて安眠できるようになります。  他にも、「もっ …

就活も恋愛も選ばれなければ始まらない/水野敬也『大金星』

 「有名企業に就職しても安心できない時代に突入した」という人たちが増えている。かつて日本が誇っていた「終身雇用制度」が終わりを迎え、いまや有名企業に就職したからといって一生安泰とはいえなくなったからだ。実際、シャープや東 …

言葉には力がある/原田マハ『本日は、お日柄もよく』

 言葉には力がある。たとえば、2008年のアメリカ合衆国大統領選挙で、バラク・オバマ氏が民主党の候補者に選ばれたのは、「言葉の力」を用いたからだ。  当時、「次の大統領候補に」という呼び声が最も高かったのは、資金力と知名 …

「ロボットに奪われない仕事」をしよう/池井戸潤『銀行総務特命』

 グーグルの創業者であり、現CEOのラリー・ペイジは、人口知能の急激な発達によって、現在私たちが担当している仕事のほとんどはロボットがやることになるという。加えて次のように断言している。  「近い将来、10人中9人は、今 …