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 童話はお好きですか?

 私はどちらかと言えば、物語にスリルとサスペンスを求めるので、あまり好きではありませんが、村山早紀さんの小説『百貨の魔法』は、大人向けの童話を読んでいるような物語でした。

 日常にほんの少しの魔法がかけられたら?をテーマに描かれているので、夢のある物語が好きな方におすすめの小説です。

 ロマンチストな父をもつエレベーターガールの物語

 物語の舞台は星野百貨店。星野百貨店も、他の百貨店と同じように不況の煽りを受け、経営が傾いていました。

 しかし、星野百貨店には不思議な噂がありました。それは魔法が使える猫がいるというもの。

 正面玄関の吹き抜けの天井にあるステンドグラスに描かれている白いネコがときどき抜け出して、願い事をひとつだけ叶えてくれるというのです。

 星野百貨店でエレベーターガールをしている松浦いさなは、そんな噂を聞いて叶えて欲しい願いがあることに気づきました。

 それは「夢を信じられるようになりたい」というもの。

 彼女の父は「空を泳ぐクジラを見た」というような夢物語ばかり語る人で、自分の才能を試してくると言って、小学校を卒業したばかりのいさなを置いて東京に出て行きました。

 だからこそ、いさなは現実ばかり見るようになったのですが…。

 夢を抱く力がないと未来は描けない

 どこかで、そんな父を信じたいと願っていました。

 また、不況の煽りを受ける星野百貨店を立ち直らせるには、夢を見る能力が不可欠です。

 百貨店を存続させるためには時代の波の中で常に最先端の鋭い感覚を持ち、より良い形へと変化し続けていかなくてはいけません。

 だからこそ、いさなは夢を見る力を手に入れたいと願っていたのですが、百貨店で出会ったお客様にも似たような女性がいました。

 彼女は、海外から来たバイオリニストで、ロマンチストな亡き母がくれた焼け焦げたティディベアを修理したいと思っていました。

 それだけでなく、彼女は母が自分のことを愛していたのかを知りたいと思っていました。自分のことを放ったらかしにして、音楽に夢中になっていた母の本心を知りたかったのです。

 この話を聞いたコンシェルジュの芹沢結子は、たぶんその願いを叶えてあげられると言います。なぜなら…。

 童話のような心温まる物語

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、多くの人たちが生活を共にする百貨店には、人の数だけ物語があり、その中には魔法のような不思議な出来事もあるのかも!?と思える物語でした。

 エレベーターガールのいさなの他にも、テナントのスタッフや宝飾品売り場のフロアマネージャー、新人コンシェルジュなどが主役となって、いくつかの物語が語られます。

 どれも童話のような物語なので、童話が好きな方は、村山早紀さんの小説『百貨の魔法』を読んでみてはどうでしょうか。

 魔法を信じてみたくなるかもしれませんよ。

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