webstation plus

(※『ラッシュライフ』表紙より)


 パズルはお好きですか。

 私は子どもの頃からパズルが大好きで、1000ピースとか2000ピースのパズルをよくしていました。しかし、最近は仕事が忙しくてなかなかできないんですよね。

 ところが、まるでピースをはめているかのような快感が味わえる小説に出会いました。それが伊坂幸太郎さんの小説『ラッシュライフ』。

 今回は、『ラッシュライフ』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『ラッシュライフ』のあらすじ

 5つの異なる物語が交差し、最後に一枚の大きな「騙し絵」が完成する小説です。それぞれの物語を簡単に紹介すると、

志奈子の物語

 保身のために恩人を裏切り、拝金主義者の戸田と契約を交わした志奈子が、戸田から肉体関係を迫られる物語。

 人生にはお金よりも大切なものがあるのか?がテーマになっています。

黒澤の物語

 泥棒の黒澤が老人夫婦に拳銃で脅されたり、泥棒に入った家で家主や同級生と鉢合わせになったりする物語。

 黒澤の言葉が心に残ります。

河原崎の物語

 連続殺人事件を解決した高橋を神のように崇める河原崎が、幹部の一人である塚本から「神を解体しよう」と提案され、殺人事件に関与する物語。

 『動物園のエンジン』に登場した河原崎の息子が主人公です。

京子の物語

 青山とダブル不倫をしている京子が、互いのパートナーを殺して、青山と一緒に暮らそうとする物語。

 死体がバラバラになったり、くっついたりする不思議な出来事が驚きとともに解き明かされます。

豊田の物語

 リストラにあった豊田がヨボヨボの老犬を連れて、郵便局に強盗に入ったり、若者を銃で撃ったり、復讐を成し遂げようとしたりする物語。

 弱い自分から一歩踏み出そうとする豊田に励まされます。

 ◆

 これら5つの不思議な物語が、まるで一つの大きな物語のように繋がっていく小説です。

 『ラッシュライフ』のおすすめポイント

1. 5つの異なる物語が驚きと共に繋がっていく

 あらすじでも紹介したように、5つの不思議な物語が少しずつ繋がっていき、最後にすべてが繋がっていたことに気づけるように構成されています。

 たとえば、河原崎や京子、黒澤たちが他の物語に名前を明かさずに登場していたり、ある物語に登場していたサブキャラクターが別の物語のメインキャラクターとつながっていたりと驚きの連続です。

 それだけでなく、バラバラになった死体がいつの間にかくっついたり、死体が何度もトランクから飛び出したり、40億円の宝くじが巡りめぐってある人物のものになったりと、多くの出来事がこれでもかと繋がっていくので、まるでパズルのピースをはめているかのような快感が味わえるんですよね。

 意外なキャラクター同士のつながりに夢中になれる小説です。

2. 黒澤の名言に心奪われる

 たとえば、

探し出すものなんだ。『未来』は闇雲に歩いていってもやってこない。頭を使って見つけ出さなくてはいけないんだ。あんたもよく考えたほうがいい

 他にも、

「誰だって初参加なんだ。人生にプロフェッショナルがいるわけがない。まあ、時には自分が人生のプロであるかのような知った顔をした奴もいるがね、とにかく実際は全員がアマチュアで、新人だ」
「はじめて試合に出た新人が、失敗して落ち込むなよ」
「行き詰まっているとおまえが思い込んでいただけだよ。人ってのはみんなそうだな。例えば、砂漠に白線を引いて、その上を一歩も踏み出さないように怯えて歩いているだけなんだ。周りは砂漠だぜ、縦横無尽に歩けるのに、ラインを踏み出したら死んでしまうと勝手に思い込んでいる」

 など、ハッとさせられる言葉が満載。自分に足りないピースを黒澤にはめられているような感覚が味わえるんですよね。

 読めばきっと心に残る言葉が見つかるはず。

3. 勧善懲悪がテーマ

 現実世界で生きていると、悪が自由にのさばっていますよね。

 そんな中、悪い奴らが滅びていく物語を読むとスッキリできるだけでなく、今の社会に足りないピースはこれなんじゃないかって思えてくるんですよね。

 最後にスッキリできるので、達成感が味わえる小説です。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』。まるでピースをはめているかのような快感が味わえる小説です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

犯人を追いつめるだけじゃない!?東野圭吾『虚像の道化師』は心に残る短編小説

(※『虚像の道化師』表紙より)  東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』。  ガリレオシリーズ第7弾の本作は、犯人を追い詰めるだけじゃない短編ミステリー小説です。読めば、きっと心に残る短編に出会えるはず!?  今回は『虚像の …

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』/厳しい現実に立ち向かうには哲学とユーモアが必要

(※『アヒルと鴨のコインロッカー』表紙より)  私たちが生きている世界は、想像以上に厳しいですよね。  たとえば、仕事。ほんの数十年前までは終身雇用が保証されていましたが、今ではいつリストラされるかわかったものではありま …

畠中恵『ぬしさまへ』は若だんなの大人になりたい想いに感動する小説

(※『ぬしさまへ』表紙より)  畠中恵さんの小説『ぬしさまへ』。  『しゃばけ』シリーズ第2弾の本作は、病弱で両親や妖怪たちから甘やかされて育った若だんなが大人になりたいと強く願う物語です。読めば自分も頑張ろうと思えるこ …

東野圭吾『予知夢』は科学談義が面白いミステリー小説

(※『予知夢』表紙より)  東野圭吾さんの小説『予知夢』。  警視庁捜査一課の草薙俊平が、帝都大学理工学部の准教授・湯川学とともに科学的な視点で事件を解決していくミステリー小説です。前回紹介した『探偵ガリレオ』の続編。今 …

性格の悪さを隠すとさらに性格が悪くなる理由

(※『ジーキル博士とハイド氏』表紙より)  性格の悪さを隠していませんか?  誰もが他人に良く見られたいという思いから、性格の悪さを隠し、自分の良さをアピールして生きていますが、悪い性格を隠せば隠すほど、さらに性格が悪く …

人と対等に付き合ってる?伊坂幸太郎『チルドレン』は口達者な家裁調査官が奇跡を起こす物語

(※『チルドレン』表紙より)  人と対等に付き合っていますか?  私は対等に付き合っていると思っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。障害のある人たちを「可愛そう」という視点で見ていること …

毎日が勝負!?池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』は会社と野球部の逆転劇を描いた小説

(※『ルーズヴェルト・ゲーム』表紙より)  毎日、闘っていますか。  私は闘っていません。会社に行って「今」という時間をやり過ごしているように思います。目の前の仕事に追われて、流されている感じ。  しかし、池井戸潤さんの …

伊坂幸太郎『重力ピエロ』/他人の考えに縛られる必要なんてない

(※『重力ピエロ』表紙より)  他人の考えに縛られていませんか?  たとえば、「お金があれば幸せになれる」とか、「頭の良さは遺伝で決まる」とか、「どれだけ悪い人間でも罪の重さを知れば反省する」なんて思い込まされていません …

若だんなに勇気づけられる!?畠中恵『うそうそ』は他人を犠牲にしても利益を得ようとする人たちを描いた小説

(※『うそうそ』表紙より)  畠中恵さんの小説『うそうそ』。  しゃばけシリーズ第5弾の本作は、相変わらず病弱な若だんなが箱根で誘拐事件、天狗の襲撃、止まらない地震などの厄介ごとに巻き込まれる物語です。  読めば、若だん …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説ーpart3

(※『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』表紙より)  読書していますか?  私は『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』を読んでから、他の本を放り出して『ビブリア古書堂の事件手帖』シリー …