私たちは、誰一人として同じ脳を持っていません。
両親の遺伝子の掛け合わせによって生じる存在としての個性があり、さらに、人生最初の三年間に与えられた環境によって、脳の神経回路に偏りが生じるからです。
ここでいう脳の神経回路とは、この世を感知するために使われるもので、生れ落ちた瞬間に人生最大数を誇ります。そのため、赤ちゃんの脳は感じる天才だといえるでしょう。
しかし、三歳の誕生日を迎えるまでに、脳の神経回路数は激減します。おそらく、この世のどの環境にも適応できるように生まれてきて、人生最初の三年間で周囲の環境を感じきり、その環境に必要な神経回路だけを残すからでしょう。
こうして、私たちの脳は、この世でたった一つの脳になり、きらめくような個性を持つわけですが、それにも関わらず、あこがれの誰かを目指したり、世間一般での価値観(誰もがうらやむ成功)を目指すと、どうなるのでしょうか。
結論からいえば、脳の神経回路が健全に機能しなくなるため、幸せを感じることができません。脳にとっての幸せは、その脳に聞いてみるしかないのです。
だからこそ、世間一般で言われている幸せではなく、自分の脳にあった幸せを追い求める必要があるわけですが、運が悪い人たちはこれができていません。なぜなら、自分の脳が何を求めているのかわかっていないからです。
では、どうすれば、自分の脳にあった幸せを追い求めることができるのでしょうか。
「自分の脳にあった幸せ」を追い求めるたった一つの方法
それは、「今を無邪気に楽しむこと」です。今目の前にあることだけに集中し、他のことを思い悩んだり、不安に思ったりしないことです。そのためには、次の三つに捉われないようにする必要があるのですが…、なかなか難しいですよね。
- 結果を意識しすぎる
- 過去や未来にとらわれる
- ネガティブ思考を積み重ねる
とはいえ、これらに捉われていては今を無邪気に楽しむことができません。それぞれ、どのように対処していけばいいのか考えてみましょう。
1. 結果を意識しすぎる
仕事や家事・育児、趣味に至るまで、結果を意識しすぎていませんか。もし、そうだとしたら、もう少しリラックスしてみましょう。そのほうが結果が出やすくなるからです。
たとえば、良いアイデアというのは、気分転換に散歩をしたり、音楽を聴いたり、友達と雑談しているときに「ひらめく」といわれています。それは、私たちの脳が、楽しんで何かをするときにフル回転するからです。
つまり、結果を出したければ、結果を意識せずに今を楽しむ必要があるということ。禅問答のようですが、結果を出す必要があるときこそ、結果を意識せずに今を思いっきり楽しむようにしていきましょう。
2. 過去や未来にとらわれる
私たち人間は、「言葉」と「劇的な記憶力」を手に入れる代わりに、必要以上に恐怖を覚えるようになりました。
たとえば、出産。私たち人間が生きていくうえで、最も強い痛みを感じるのが出産だと言われていますが、犬は出産のときでさえ、それほど痛みを感じているようには見えません。だからこそ、犬は安産の象徴だといわれているわけですが、犬だって人間と同じように痛みを感じているはずです。
では、なぜ犬は出産のときでさえ、けろりとしていられるのでしょうか。
それは、人間のように陣痛の合間に過去の陣痛を思い返して身体を硬くしたり、次の陣痛の痛みを想像して怯えたりしないからです。つまり、過去や未来にとらわれずに、今この瞬間だけを生きているからです。
もちろん、お産は仕方がないとしても、普段の生活でこんなことをしていては身体がもちませんよね。受験生やアスリート、ビジネスパーソンや子育て中のお母さんなど、長丁場で戦う人にとって、過去や未来に捉われてしまうのは致命的です。
そもそも、過去をどれだけ振り返ったところで、今が変わるわけではありません。また、未来は今の積み重ねで決まります。だからこそ、過去や未来に必要以上に思いをはせるのはやめ、今を無邪気に楽しむようにしていきましょう。
3. ネガティブ思考を積み重ねる
とはいえ、どうしても今を無邪気に楽しめない…という方もおられるでしょう。その最大の原因は、過去からのネガティブ思考の積み重ねにあります。
私たちの脳内には、認識や思考、発想などに使われる神経線維ネットワークが張り巡らされています。それこそ、天文学的な数のネットワークが存在し、縦横無尽に使うことができるのですが――、現実には特定のネットワークばかりを使っています。
それは、特定の神経ネットワークを使えば、その神経ネットワークが強化されるからです。よく使う思考ほど、どうしても使いやすくなってしまうわけです。年を重ねるほど頭がかたくなるといわれる理由がこれ。
そのため、ネガティブ思考を積み重ねていけば、ネガティブな神経線維ネットワークが強化され、どんな出来事に対しても、ネガティブ思考に陥りやすくなってしまうのです。
では、どうすればネガティブ思考から抜け出せるのでしょうか。それは、少しでもネガティブな考えが浮かんだら、即座に対応して忘れてしまうこと。すぐに解決できない問題だとしても、今目の前にあることに集中して、やはり忘れるしかありません。
こうした無邪気さが、脳の神経回路の自由を生み出し、「しなやかな発想」と「幸福感」をつくりだしてくれます。ネガティブなことはすぐに忘れて、ポジティブなことに意識を向けるようにしていきましょう。
世間一般に言われている幸せではなく、自分の脳にあった幸せを追い求めよう
昔、人工知能学会で「絶世の美女をつくる」という試みがありました。数多くの美女の顔を分析して、最高と思われるパーツと、その配置の黄金比を割り出し、CGで合成したそうですが、誰もがこの美女の顔を覚えられなかったといいます。
もしかすると、私たちの人生もこれと同じなのかもしれません。誰もがうらやむような世間一般で言われている「幸せ」を追い求め、手に入れることができたとしても、本当に幸せになれるとは限りません。絶世の美女の顔と同じように、手に入れてみれば、記憶としてまったく残らない可能性があります。
では、どうすればいいのでしょうか。やはり、自分の脳にあった幸せを追い求めるしかありません。そのためには、今を無邪気に生きること。まるで子どものように、今を楽しんでいくことです。そうすることができれば、今よりもずっと運が良くなり、楽しい毎日を過ごすことができるはずです。