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(※『マンガ 線形代数入門』表紙より)


 線形代数をご存知ですか。

 高校で行列を習った人も多いと思いますが、少し強引な説明をすると行列を使った演算のことです。

 行列を使えば、連立方程式などの問題がパソコンを使って簡単に解けるようになります。人が直接計算をするのは少し複雑ですが、パソコンを使っていろんな式を解くためには絶対に理解しておきたい内容です。

 そこで今回は『マンガ 線形代数入門』を参考に、線形代数のイロハの「イ」を紹介します。

 『マンガ 線形代数入門』ってどんな本?

 線形代数をまったく知らない人を対象に、行列の基礎から固有値・固有ベクトルまでの大まかな流れをマンガでわかりやすく説明している本です。中高生程度の数学の知識があれば十分に理解できる内容になっています。

第1章 行列って何? 線形代数って何?
第2章 行列の計算をしよう
第3章 逆行列を求めよう
第4章 連立方程式を解いてみよう
第5章 一次変換を調べよう
第6章 固有値と固有ベクトルを求めよう
第7章 3×3の行列をきわめよう

 数時間で線形代数の大枠が理解できるので、これから線形代数を理解したい人や線形代数をやり直したい人におすすめの本です。

 線形代数イロハの「イ」

 ここからは本書から線形代数のイロハの「イ」を紹介していきます。ダイジェストで紹介するので、より詳しい内容が知りたい方は本書をお読みください。

1. 行列とは?

 行列とは、今まで似たような計算を繰り返していたものを一つにまとめたものです。たとえば、次のような問題を考えてみましょう。

ある集団のお客さんがやって来て、レモンラテを7杯、カフェラテを9杯注文しました。このとき、合計の値段とカロリーはどうなるでしょうか?
 レモンラテ 400円 37kcal
 カフェラテ 450円 54kcal

 これを行列で書くと以下のようになります。ポイントは、行に同じ単位のものを並べて書き、列で種類を分けること。

$$\begin{pmatrix} 400 & 450 \\ 37 & 54 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 7 \\ 9 \\ \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 400 × 7 + 450 × 9 \\ 37 × 7 + 54 × 9 \\ \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 6850 \\ 754 \\ \end{pmatrix} $$

 このように行列を使うと、合計の値段とカロリーが一度に計算できます。便利ですよね。ただし、不便なことも。行列は足し算、引き算、掛け算はできますが、割り算はできません。また、掛け算の順番を入れ替えると答えが変わります。

2. 逆行列とは?

 割り算ができないのなら使い物になりませんよね。そこで、逆行列を使って割り算を実現します。\(5x=3\)の両辺に\(\frac{1}{5}\)をかけて割り算を実現するイメージです。

 たとえば、以下の式で行列\(A\)の値を求めたい場合、

$$\begin{pmatrix} 2 & 3 \\ 1 & 4 \\ \end{pmatrix} A= \begin{pmatrix} 13 & 18 \\ 14 & 19 \\ \end{pmatrix} ・・・(1) $$

 まずは左辺の逆行列を求めます。逆行列の求め方は、

$$\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \\ \end{pmatrix} $$

 とすると、以下の式で計算することができます。

$$\frac{1}{ad-bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \\ \end{pmatrix} $$

 この式に先ほどの(1)式の左辺を代入すると、

$$\frac{1}{2×4-3×1} \begin{pmatrix} 4 & -3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} = \frac{1}{5} \begin{pmatrix} 4 & -3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} $$

 となります。さて、この逆行列を(1)式の両辺に左からかけると、

$$ \frac{1}{5} \begin{pmatrix} 4 & -3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 2 & 3 \\ 1 & 4 \\ \end{pmatrix} A= \frac{1}{5} \begin{pmatrix} 4 & -3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 13 & 18 \\ 14 & 19 \\ \end{pmatrix} $$

 左辺は\(A\)だけになるので(実際に計算してみてください)、

$$ \begin{align*} A & = \frac{1}{5} \begin{pmatrix} 4 & -3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 13 & 18 \\ 14 & 19 \\ \end{pmatrix} \\ & = \frac{1}{5} \begin{pmatrix} 10 & 15 \\ 15 & 20 \\ \end{pmatrix} \\ & = \begin{pmatrix} 2 & 3 \\ 3 & 4 \\ \end{pmatrix} \\ \end{align*} $$

 と計算することができます。これが行列の割り算。

3. 一次変換とは?

 先ほど逆行列を求めるときに「\(ad-bc\)」を計算しましたが(これを行列式という)、この結果が0になると答えが求まりませんよね。分母が0になるからです。

 つまり、行列式の結果が0になれば、連立方程式の解は「不定(解がいっぱいある)」または「不能(解けない)」ということがわかります。反対に0でなければ、解はひと通りだけ存在することがわかります。

 また、行列を\(xy\)座標平面で考えると、行列の掛け算はある点を別の点に移動する処理とも言えます(これを一次変換という)。

 たとえば、以下の\(xy\)座標にある9点を考えてみましょう。

 この座標に行列式が0でない行列(連立方程式の解がひと通りだけ存在する行列)、

$$ \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} $$

 を掛けると、9点は以下のように変換されます。つまり、平面をある別の平面に変換する処理と言えます。

 では、行列式が0になる場合(連立方程式の解が「不定(解がいっぱいある)」または「不能(解けない)」になる場合)はどうでしょうか。たとえば、行列

$$ \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 4 & 2 \\ \end{pmatrix} $$

 を掛けると、先ほどの9点は以下のようになります。

 つまり、平面を直線や点に変換する処理と言えます。

 このように、ある点に行列をかけて別の点に移動する処理を一次変換と呼びます。

4. ハミルトン・ケーリーの法則とは?

 行列\(A, E, O\)をそれぞれ次のように定義すると、

$$A= \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \\ \end{pmatrix} $$ $$E= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{pmatrix} $$ $$O= \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \\ \end{pmatrix} $$

 必ず以下の式が成り立ちます。これを「ハミルトン・ケーリーの法則」と言います。

$$A^2-(a+d)A+(ad-bc)E=0・・・(2) $$

 この式を使えば、簡単に行列の\(n\)乗を求めることができます。たとえば、次の行列の\(n\)乗を計算する場合、

$$A= \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 4 & 2 \\ \end{pmatrix} $$

 \(a+b=4, ad-bc=0\)なので、(2)式に代入すると\(A^2-4A=0\)となります。言い換えると、\(A^2=4A\)となり、\(A^n=4^{n-1}A\)と簡単に\(n\)乗の計算ができることがわかります。

 ただし、ハミルトン・ケーリーの式では\(n\)乗が求められない行列も多くあります。そこで、固有値と固有ベクトルの登場です。

5. 固有値・固有ベクトルとは?

 まず、ある行列\(A\)を一次変換したときに\(αA\)となる点を探します(\(α\)は定数)。具体的に書くと

$$ A \begin{pmatrix} p \\ q \\ \end{pmatrix} =α \begin{pmatrix} p \\ q \\ \end{pmatrix} $$

 を満たす\(p\)と\(q\)を求めます。たとえば、

$$A= \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ -2 & 1 \\ \end{pmatrix} $$

 の場合、上の式に代入すると、

$$ \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ -2 & 1 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} p \\ q \\ \end{pmatrix} =α \begin{pmatrix} p \\ q \\ \end{pmatrix} $$

 と書けます。この式を展開して連立方程式を立てると、

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 4p + q = αp \\ -2p + q = αq \end{array} \right. \end{eqnarray}

 となり、\(α\)について解くと\(α=2, 3\)という結果が得られます。この\(α\)が固有値です。

 ここで\(α=2\)のとき、先ほどの連立方程式に代入すると\(2p+q=0\)という式が得られます。\(p=1\)のときは、\(q=-2\)になることがわかりますよね。

 同様に、\(α=3\)のとき、先ほどの連立方程式に代入すると\(p+q=0\)という式が得られ、\(p=1\)のときは、\(q=-1\)になることがわかります。この\(p\)と\(q\)を固有ベクトルと言います。

 さて、上記で求めた固有ベクトル(縦ベクトル)を並べて作った行列を\(P\)とすると、

$$ P = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -2 & -1 \\ \end{pmatrix} $$

 となります。この逆行列\(P^{-1}\)を計算すると、

$$ P^{-1} = \begin{pmatrix} -1 & -1 \\ 2 & 1 \\ \end{pmatrix} $$

 となり、\(P^{-1}\)と\(P\)で\(A\)をサンドイッチすると、

$$ \begin{align*} P^{-1}AP & = \begin{pmatrix} -1 & -1 \\ 2 & 1 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 4 & 1 \\ -2 & 1 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -2 & -1 \\ \end{pmatrix} \\ & = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 3 \\ \end{pmatrix} \end{align*} $$

 と、固有値と0で構成された行列が求まることがわかります。つまり、固有値を\(α, β\)と置くと、

$$ P^{-1}AP = \begin{pmatrix} α & 0 \\ 0 & β \\ \end{pmatrix} $$

 に必ずなるのです。ここで、\((P^{-1}AP)\)の\(n\)乗を計算すると、

$$ \begin{align*} (P^{-1}AP)^n & = P^{-1}A^nP \\ & = \begin{pmatrix} 2^n & 0 \\ 0 & 3^n \\ \end{pmatrix} \end{align*} $$

 となります。この式を活用して\(A^n\)を計算すると、

$$ \begin{align*} A^n & = PP^{-1}A^nPP^{-1} \\ & = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -2 & -1 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 2^n & 0 \\ 0 & 3^n \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -1 & -1 \\ 2 & 1 \\ \end{pmatrix} \\ & = \begin{pmatrix} -2^n+2・3^n & -2^n+3^n \\ 2^{n+1}-2・3^n & 2^{n+1}-3^n \\ \end{pmatrix} \end{align*} $$

 と\(n\)乗の計算を求めることができます。

 最後に

 今回は、『マンガ 線形代数入門』を参考に、線形代数のイロハの「イ」を紹介してきました。

 ダイジェストで紹介してきたので、わからない箇所もあるかもしれませんが、ぜひ本書を読んで補完していただければと思います。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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