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 中世のヨーロッパで行われた魔女狩りをご存じですか。

 私は過去の出来事として知っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『火星に住むつもりかい?』を読んで、今でも魔女狩りが続いていることに気づきました。

 いつか自分もその対象になるかもしれないと思うと恐ろしくなりますよね。

 相互監視社会が生み出した平和は地獄!?

 では、あらすじから。

 物語の舞台は、平和警察という公的機関が町中に防犯カメラを取り付け、人々を監視し、危険人物だと判断した人たちを連行しては拷問を行い、見せしめのために公開処刑するようになった仙台。

 住民たちは相互監視するようになり、「危険人物」だと密告された人たちは平和警察に連れて行かれて、悲惨な目にあわされました。

 取り調べ室では、警官たちによる暴力や暴言は当たり前です。それだけでなく、エアコンの温度を最低温度に設定して長時間放置したり、母や息子を人質にとって精神的に追い詰められるといったことが日常的に行われていました。

 これにより犯罪は大幅に減りましたが、冤罪が後を絶ちませんでした。気に入らない人たちを「危険人物」に仕立て上げようと嘘の密告をする人たちがいたからです。

 もちろん、このような社会に反感を覚えている人たちもいました。「金子ゼミ」という会合をこっそり開き、危険人物に仕立て上げられた無実の人を救おうとする人たちです。

 その他にも、黒ずくめの男が磁石のような武器をつかって、危険人物に仕立て上げられた人たちを救っていました。

 彼らは、平和警察に勝てるのか!?

 魔女狩りという怖ろしいシステムが存在していた

 …という物語なのですが、伊坂幸太郎さんの小説『火星に住むつもりかい?』は、中世の魔女狩りに着想を得ているように思います。

 中世では医学が未発達だったので、出産の際に赤ん坊が死亡するケースが少なくありませんでした。

 その際に、取り上げた人物、つまりは産婆や助産師たちに責任があると考え、「産婆は魔女だ。だから赤ん坊を食べてしまった!」という理由で非難され、罰せられたそうです。

 もちろん、罰を与える相手は、産婆でなくても誰でも問題ありませんでした。

 農作物が不作になったり、災害があれば、それに対する恐怖や苛立ちをぶつける相手が欲しかったのです。こうして魔女狩りが広がっていきました。

 魔女の見分け方を書いたガイドブックも出版されたそうです。そこには、

その人間を水に沈めるんだ。浮かんでくれば魔女、だとかな。魔女でないことを証明するには、浮かんできてはいけない。ようするに、死なない限りは無実が証明できないわけだ。全部が全部、そういう理屈らしい。魔女であることを白状するまでは、拷問される。拷問に耐えきれず、『魔女です』と言えば、処刑されるし、最後まで認めなかったとしても、拷問で死ぬ。耐えきれずに自殺をしたところで、『魔女は、自殺を選ぶものだ』と言われておしまいだ。

 そんな内容が書かれていたそうです。恐ろしいですよね。

 とはいえ、現代の日本においても、似たようなシステムがあります。たとえば、リストラ。

 リストラでは、仕事ができない人をクビにしていると建前上は言いますが、仕事の大半は代わりがきくものばかりなので、誰が辞めても大差ありません。

 実際、対象者に選ばれた社員は何をどう訴えても退職するしかありません。必死になって会社に残れたとしても、嫌がらせを受けるからです。

 いじめも同じですよね。よくわからない理由で始まり、エスカレートしていくと、自殺をするまで追い詰める…ほんと魔女狩りそっくりです。

 では、なぜこのような悲劇が起こるかと言うと…。

 今でも魔女狩りが続いていることに気づかせてくれる物語

 上に立つ、力ある人間に能力がないからです。

指導者が国民を一つにまとめるのに必要なのは、分かりやすい敵を見つけること。誰でもいいんだ。みなが、欲求不満をぶつけることができる標的ならば。さらには、自分はああなりたくない、と萎縮することになるのなら、最適だ。人間を統率する効果的なやり方は、誰かをこっぴどく痛めつけて、他の人間を萎縮させることだ。

 だからこそ、どこかの社長やいじめっ子たちは、リストラやいじめをしているんですね。そうすることで自分の身を守っているのです。

 もちろん、この流れに便乗して、弱者を攻撃している人たちも同じです。

 というわけで、伊坂幸太郎さんの小説『火星に住むつもりかい?』は、今でも魔女狩りが続いていることに気づかせてくれる物語です。

 もちろん、サスペンスとしても、これから自分はどう生きていこうかと考えるキッカケになる物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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