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 私たち日本人は、昔から「表現の自由」を制限されて生きてきた。たとえば、江戸時代。江戸時代には、キリスト教や幕府批判が禁止され、出版物から言論にいたる「幅広い表現」が取締りの対象であった。実際、幕府の軍事体制を批判する内容が含まれていた小説『海国兵談』は、出版停止に追い込まれている。

 その後も、国家による「取締り」は続く。第一次世界大戦が勃発し、ロシアで2月革命が起こると、天皇制に影響を与えるすべての思想――共産主義思想や社会主義思想、自由主義思想などが抑圧の対象になった。ロシアの帝政が社会主義革命によって崩壊したことを受け、それらの思想によって天皇制国家が覆ることを怖れたからである。

 昭和に入るとこの抑圧がさらに加速していく。「治安維持法」が改定され、天皇制を批判したり、国体の変革に言及したりすると、出版停止や没収だけでなく、場合によっては逮捕されることになった。

 日本軍への批判も同様だ。軍部に対する批判・反論は許されず、軍の与えた情報を鵜呑みにすることが求められた。そのため、石川達三氏が小説『生きている兵隊』を発表すると、即日販売禁止処分となり、禁固4年、執行猶予3年の判決を受けている。石川氏が中国大陸でみた日本軍の実態を描いたことが、「反軍的内容をもった時局柄不当な作品」と判断されたからだ。

 さらに、公衆トイレの落書きから井戸端会議にいたるまで、すべての表現が取締りの対象になった。宗教や町内の集まりにも警察官が顔を出し、言論を取り締まるようになったのである。いわゆる「警察国家」の仕組みが出来上がったのだ。これでは、「表現の自由」など、あろうはずがない。

 しかし、この「取締り」は意外な形で終わりを迎える。終戦後、GHQによって「治安維持法」が廃止されたからだ。ところが、それと同時に新たな「取締り」が始まる。「連合国」や「極東軍事裁判」に対する批判、「原子爆弾の投下」や「それによる被害状況」の報道をGHQが禁止したのである。

 こうして江戸時代から戦後にいたるまで、私たち日本人は「表現の自由」を奪われてきたわけだが、この抑圧が本当に終わりを迎えたのは1947年(昭和22年)5月3日。「日本国憲法」が施行された日だ。

 ここまで長々と日本の歴史を振り返ってきたのには理由がある。今を生きる私たちも、ひとつ間違えれば「表現の自由」を奪われる可能性があるからだ。古代ローマの歴史家クルティウス・ルフスがいったように「歴史は繰り返す」――かもしれない。

 実際、2013年8月には、松江市立小中学校の図書館で漫画『はだしのゲン』が「閉架」状態にあることが報じられた。「首をはねたり、女性に乱暴したりするシーンが、発達段階の子どもには適切ではない」と市の教育委員が判断し、子どもが自由に閲覧できないようにすることを求めたからだ。すなわち、市の権力者たちが子どもたちに対する「表現の自由」を奪ったと言える。

 では、このような考えが加速していけばどうなるのか。間違いなく「表現の自由」が奪われていくことになるだろう。たとえば、犯罪が起きた場合、「犯人はあの本のせいで歪んだ」などと理由づけをして、その原因を取り除こうとする人たちがあらわれる。そうなれば、表現できる内容がどんどん狭まっていく。正論しか書けなくなり、どれも似たような表現ばかりになってしまう。

 そんな近未来を描いたのが小説『図書館戦争』だ。表現を取り締まろうとする人たちと、表現の自由を守ろうとする人たちの闘いを描いた小説である。

 さて、ここまで「表現の自由」を守ることの大切さを語ってきたわけだが、もちろん「表現の自由」を守る上での痛みもある。それは、どこまでが「表現の自由」と言えるかだ。たとえば、2015年。ある殺人犯が本を出版してベストセラー作家になった。被害者遺族の感情を逆なでするような内容で――だ。そうして、その殺人犯は大金を手に入れた。

 あなたは、この事実を知った上でも「表現の自由」を守るべきだといえるだろうか。『図書館戦争』を読んで、ぜひその答えを考えてほしい。

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