webstation plus

 人間関係って難しいですよね。

 親子や兄弟、夫婦や親友など身近な人ほどお互いの意見を尊重する必要があります。そうしないと、すぐに破綻するからです。

 それにも関わらず、身近な人ほど「こう考えているはずだ」と相手の気持ちを勝手に決めてしまうんですよね。

 たとえば親子関係

 物語の主人公・郁は、男勝りな性格でしたが、彼女の両親は絵に描いたようなバカ親でした。

 母は郁のことを自分基準で勝手に決めつけて心配し、行動を制限します。そのことで郁が嫌がるそぶりを見せると、「愛しているから心配だ」という美しい理由を付けて反抗させないようにします。

 それでも郁が反抗すると、今度は泣き始め、罪悪感を覚えさせます。さらに父が「お母さんが心配してるのに何で分かってやらないんだ」と余計な口出しをしてトドメを刺す始末。

 郁はそんな両親に嫌気がさしていましたが、同僚の柴崎の評価も「典型的に子離れ出来ていないお母さんって感じよね。しかも人当たりいいけど頑なタイプ」と、郁が両親と距離を取っていることに納得します。

 つまり、必要以上に距離を縮めてくるバカ親とは距離を取らないと自分らしく生きられないんですよね。

 たとえば恋愛関係

 一方で、郁の先輩・小牧は近所に住む年下の女性・毬江に好意を持っていましたが、歳が離れているという理由でその気持ちを封印していました。

 しかし、そのことが原因で他の女性と付き合っても、聴覚障害のある毬江のことを優先してしまい、フラれてばかりいたのです。

 そんな小牧に郁は「うわ、オジサン!頭かたーい!」と言います。どれだけ歳が離れていても関係ないと考えていたからです。

 さらに、毬江がキッカケで小牧に災難が押し寄せたときも、毬江に心配をかけたくないと言う理由で知らせるなと言った小牧に対して、

好きな男が自分を理由にされて窮地に陥っているのに黙ってられる女なんているわけない、助けに行きたいに決まってる

 と反論します。郁の親とは反対に、勝手に相手のことを決めつけて必要以上に距離を取るのも問題なんですね。

 兄弟関係も職場関係も距離感が大切

 他にも、郁の同僚である柴崎も手塚も身近な人との距離感で悩んでいました。

 柴崎は、好きな男性を取られたくない同僚の女性から別の男とくっつけられそうになり、手塚は尊敬する兄が父を利用して苦しめている姿に胸を痛めていました。

 誰もが身近な人間関係に悩んでいたんですよね。

 そんな人間関係の悩みを解決する方法は、適度な距離を取ること。相手の想いを決めつけずに、また自分にとって望ましい距離感を取るように行動していくことが大切です。

 そんな当たり前のことに改めて気づかせてくれる小説が有川浩さんの『図書館内乱』。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

前作『図書館戦争』を読まれてない方はこちらから

 関連記事

終わりがある方が面白いのはなぜ?畠中恵『ちんぷんかん』感想

(※『ちんぷんかん』表紙より)  畠中恵さんの小説『ちんぷんかん』。  しゃばけシリーズ第6弾の本作は、兄・松之助の縁談が決まったり、幼馴染・栄吉の弟子入りが決まったりと、若だんなに様々な別れが訪れる物語です。  なかで …

他人に勝つことよりも自分に負けないことが大切な理由

(※『道誉なり』表紙より)  私たちが住む世界には、権力やお金、名誉などをかけた闘いが星の数ほどあります。  身近なところで言えば、会社での出世争いや住んでいる場所での格付け争い、あるいはSNS上での知名度争いなどがそう …

無駄なことでも誰かの役に立つかもしれない/伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』感想

 無駄なことはやめようと思っていませんか。  もちろん、本当に無駄なことはやめた方がいいですが、無駄に思えても一生懸命にやったことは、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれません。  そんな想いにさせてくれた小説が伊坂幸太 …

異なるジャンルの短編がゆるくつながる小説/伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』感想

 伊坂作品の特徴といえば、至るところに散りばめられた伏線がすべて回収されていくところですよね。  これは短編でも長編でも同じです。複数の物語がゆるやかにつながっていき、読了後には必ず驚きとスッキリ感が味わえます。  もち …

人の不幸の上に幸せは築けない!?東野圭吾『容疑者Xの献身』は泣ける小説

(※『容疑者Xの献身』表紙より)  東野圭吾さんの小説『容疑者Xの献身』。  数学教師の石神が隣の部屋に住む女性を守るために、人生をかけて献身する物語です。読めば「人の不幸の上に幸せを築くことなんてできない」と思うこと間 …

毒親とは人生をかけて闘う価値がある/山口恵以子『毒母ですが、なにか』感想

 毒親という言葉が広まりましたよね。このブログでも以前紹介しました。  このエントリにも書いたように、毒親に育てられた子どもは確実に不幸になります。だからこそ、毒親とは人生をかけて闘う価値があるのですが、毒親には子どもを …

対立はなくならない…ではどうする?/伊坂幸太郎『シーソーモンスター』感想

 なぜか出会った瞬間にイヤな気持ちになる人っていますよね。何がイヤなのかはわからないけれど、とにかく気分がムカムカしてくる人がいます。  そんな人がいる限り「対立」はなくなりませんが、ではどうすれば互いにとって良い関係が …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説―part2

(※『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』表紙より)  読書していますか?  この前のエントリで『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』を紹介しましたが、今回はその続き『ビブリア古書堂の事件 …

読書は優雅なもの!?東野圭吾『素敵な日本人』は意外性にあふれたミステリー小説

(※『素敵な日本人』表紙より)  短編はお好きですか。  私は小説に驚きや感動、励ましのようなものを求めているので、物語の世界観にどっぷり浸れて、イッキ読みできる長編を好んでいました。  今もその思いは変わりませんが、東 …

毎日が勝負!?池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』は会社と野球部の逆転劇を描いた小説

(※『ルーズヴェルト・ゲーム』表紙より)  毎日、闘っていますか。  私は闘っていません。会社に行って「今」という時間をやり過ごしているように思います。目の前の仕事に追われて、流されている感じ。  しかし、池井戸潤さんの …