webstation plus

 何かに依存して生きていませんか?

 ゲームやお酒・タバコ、異性や親子関係、さらにはクスリ…などなど、何かに依存していると、恐ろしいことになりかねません。

 そんな依存性の強い人たちの末路を描いた物語が、知念実希人さんの小説『レフトハンド・ブラザーフッド』。自分が自分であることのありがたさがよくわかる物語です。

 左手に兄が宿った主人公の物語

 では、あらすじから。

 物語の主人公は風間岳士。彼は自分が起こしたバイク事故で、兄の海斗を亡くしていました。

 だからこそ、岳士は「自分のせいで兄が死んでしまった…」と悔やんでいたのですが、それからしばらくすると、左手が勝手に動き出し、脳内で海斗が話しかけてくるようになります。

 なぜか左手に兄の海斗が宿ったんですよね。

 そのことを知った両親は、彼を病院に連れていったところ、エイリアンハンドシンドロームという病気だと診断されました。

 脳障害や精神疾患が引き金となって、片腕が自分の意思とは関係なく動く病気です。

 そこで病院の先生は、海斗の声が聞こえるという幻覚を投薬で消してあげると言ってくれましたが、岳士は先生を殴って逃げ出すんですよね。

 岳士は海斗と共に生きようと考えていたからです。ところが…。

 女とクスリに溺れてしまう主人公

 東京に出てきた岳士は、橋の下で一夜を過ごそうと寝ていたところ、誰かの呻き声を聞き、男性が倒れていることに気づきます。

 その男性はすでに殺されていましたが、気が動転していた岳士は、死体の顔や身体を触ってしまい、血だらけになりました。

 このままでは間違いなく容疑者にされてしまいます。そこで岳士は、海斗の指示に従って逃走しようとしますが、ある女性と出会い、その女性の虜になってしまいました。

 しかも、その女性が使っていたサファイアと呼ばれるクスリに手を出し、セックスの快楽を極限まで高めることを覚えてしまうんですよね。

 サファイアはすぐに副作用が出ないため、何度も使いたくなり、その薬を手に入れるために人殺しをする人たちもいました。

 とはいえ、もちろん副作用はあります。使いすぎると依存症になり、自殺する人も大勢いました。もちろん岳士もそのことは知っていましたが…。

 岳士は、兄を殺してしまったという後悔と、殺人犯として追われる恐怖と、そして虜になった女性との快楽を求める一心でサファイアに手を出し続けるんですよね。

 その結果…。

 依存して生きる人たちの末路が描かれる物語

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、岳士は、兄と女性、そしてクスリに依存して生きていました。

 なかでもクスリの副作用は酷く、自分ではどうすることも出来ません。頭では破滅することはわかっているのにクスリに手を出し続けてしまうんですよね。

 このような物語を読むと、何かに依存せずに生きること、つまり、自分が自分であることのありがたさがよくわかります。

 というわけで、知念実希人さんの小説『レフトハンド・ブラザーフッド』は、依存症の恐ろしさがわかる物語ですが、それだけでなく、

 最後に驚きが待っているミステリー小説としても、兄弟愛を描いた物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

病弱でも強くなれる!?畠中恵『しゃばけ』は妖怪が活躍するミステリー小説

(※『しゃばけ』表紙より)  10年ほど前に買った畠中恵さんの小説『しゃばけ』。  久しぶりに読みましたが、病弱なのに難題に立ち向かう若だんなの姿に感動しました。読めば自分も頑張ろうと思えること間違いなし!?  今回は『 …

伊坂幸太郎『マリアビートル』感想/大人をバカにする中学生への正しい対処法とは?

 ムカつく中学生っていますよね。大したことも出来ないくせに、大人をバカにしたり、見下したり、暴言を吐いたり…。  そんな生意気な中学生にはどのように対応すればいいのでしょうか。  もちろん、痛い目に合わせるしかありません …

伊坂幸太郎『砂漠』は自分を信じてもう一度頑張ってみようと思える物語

 学生時代は真面目に勉強してきましたか?  私は多くの大学生と同じように、バカ騒ぎをして過ごしてきたので、真面目に勉強してきたとは口が裂けても言えませんが、そんな私だからこそ、伊坂幸太郎さんの小説『砂漠』を読んで懐かしい …

平野啓一郎『ある男』感想/愛しているのはその人の「今」なのか「過去」なのか

 私たちは誰かを愛しながら生きていますが、その愛はその人の今を見て生まれてきた感情なのでしょうか。  それとも、その人の過去を知っているからこそ生まれてきた感情なのでしょうか。  平野啓一郎さんの小説『ある男』を読んで、 …

伊坂幸太郎『死神の精度』は生きる意味を追い求めるのが人間らしさだとわかる物語

 自分の行動に意味づけしていますか?  「なぜこの仕事をしているのか?」「なぜこの本を読んでいるのか?」「なぜブログを書いているのか?」…などなど。  私はどんなことでも「なぜ?」を考えないと気が済まない性格なので意味づ …

悩みにどう向き合う?畠中恵『おまけのこ』は優しさと哀しさに満ち溢れた小説

(※『おまけのこ』表紙より)  畠中恵さんの小説『おまけのこ』。  しゃばけシリーズ第4弾の本作は、若だんなや幼馴染の栄吉、お雛ちゃんたちが自分の悩みにゆるく向き合う時代小説です。  読めば彼らの優しさと哀しさに心動かさ …

芦沢央『カインは言わなかった』感想/プロと素人の間には想像を絶する差がある

 プロフェッショナルな仕事をしていますか?  私はプロとして通用する仕事をしようと努力していますが、芦沢央さんの小説『カインは言わなかった』を読んで、プロと素人の間にある差に愕然としました。  プロは人生のすべてを捧げる …

心に闇がある人ほど光を演出する!?/東野圭吾『マスカレード・イブ』

(※『マスカレード・イブ』表紙より)  誰もが自己顕示欲を持っていますよね。出世したかったり、モテたかったり、贅沢な暮らしをしたかったりと、人と比べてスゴイと思われるような生活に憧れています。  しかし、その欲求の裏側に …

伊坂幸太郎『シーソーモンスター』感想/嫁姑問題を解消するには自分をさらけ出して向き合うしかない!?

 嫁姑問題って大変ですよね。  私も結婚してしばらくは毎日泣きそうになりながら嫁姑問題と向き合っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『シーソーモンスター』を読んで、それらの日々が懐かしく思い出されました。  どれだけ努力を …

水野敬也『大金星』感想/就活も恋愛も選ばれなければ始まらない

 数年前から「有名企業に就職しても安心できない時代に突入した」と言われるようになりました。かつて日本が誇っていた「年功序列」「終身雇用制度」が終わりを迎えたからです。  実際、東芝やNEC、ソニーといった大企業でさえリス …