webstation plus

(※『小太郎の左腕』表紙より)


 和田竜さんの小説『小太郎の左腕』。

 山奥でひっそりと暮らす小太郎が、戸田家の名将・林半右衛門(はやし はんえもん)によって戦場に連れ出され、圧倒的な力を発揮する物語です。読めば、出世の代償の高さに驚くこと間違いなし!?

 今回は『小太郎の左腕』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 小説『小太郎の左腕』のあらすじ

 物語の舞台は戦国時代の日本。西国で勢力争いをしていた戸沢家と児玉家には、それぞれ名将がいました。

 それが「功名漁り」と呼ばれる林半右衛門と「功名餓鬼」と呼ばれる花房喜兵衛(はなぶさ きへい)。

 彼らは互角の戦いを繰り広げていましたが、戸沢家の跡継ぎである図書の失策により、半右衛門は窮地に追い込まれます。

 このとき、白羽の矢が立ったのが、山奥でひっそりと暮らす小太郎でした。彼のスナイパーとしての腕が買われ、戦場に連れ出されることになったのです。彼の活躍によって得たものとは!?

 圧倒的な強さを誇る林半右衛門

 林半右衛門が圧倒的な強さを誇ったのは、養育係である藤田三十郎の育て方によるものでした。

 三十郎が半右衛門を育成するに当たって立てた方針は、「卑怯な振る舞いはするな」という常識的なことだけ。

 その他は、どれだけ失敗しても叱りませんでした。むしろ、失敗の原因を探り出しては、それを褒め上げ、半右衛門が自らの才能に疑問を持たないようにしたのです。

 自信を持った者の働きには躊躇がありません。元服した半右衛門は臆することなく初陣で槍を振るい、目立つ武功を立てました。

 三十郎はそんな半右衛門を褒め上げ、さらに半右衛門は自信を強固にして武功を立て、それをさらに褒め極め、半右衛門は他国に響く名将に成長したのです。

 しかし、自信を持ちすぎた弊害もありました。半右衛門は、他の武将に従おうとはせず、気の向くままに強敵に立ち向かい、なぎ倒していきます。功名を他人に譲る優しさはありません。

 その結果、下級武士からの人気は高まりましたが、上級武士からは嫌われました。特に、戸塚家の跡継ぎである図書に嫌われ、大切な人を奪われることに。

 自分の利益ばかり追い求めることの怖ろしさがわかる物語です。

 阿呆にしか見えない小太郎

 半右衛門とは対照的に、功名にはまったく興味がなく、阿呆にしか見えない子どもがいました。それが小太郎。

 小太郎は近所に住む悪童たちからいじめられていました。頭の上に柿を乗せられ、遠くから鉄砲で撃たれる――鉄砲の的がわりにされていたのです。

 しかし、小太郎は何をされても怒りませんでした。むしろ、悪童たちと一緒にいられることに喜びを感じていたのです。なぜなら友だちが欲しかったから。

 とはいえ、友だちとして一緒に遊んでいるわけではありません。そこで、小太郎は人並み以上になりたいと願うようになります。そうすれば友だちが出来ると思ったんですね。

 そんな小太郎にチャンスが訪れます。鉄砲試合に出場することになったのです。そこで披露した彼の腕前は圧倒的でした。しかし――。

 何かを得るということは、同時に何かを失うことでもあるんですね。

 出世の代償は高くつく!?

 そんな半右衛門と小太郎の運命を変える出来事が起こります。戸塚家の跡継ぎである図書の失策により、半右衛門が窮地に陥ったのです。

 そこで半右衛門は、小太郎を戦場に連れ出すよう策を練りました。

 その結果、小太郎を戦場に引きずり出すことはできましたが、半右衛門の心は粉々に砕け散ることに。一方の小太郎も大切な人たちを失うことになりました。

 出世の代償の高さに驚かされる物語です。

 最後に

 和田竜さんの小説『小太郎の左腕』。読めば、出世の代償の高さに驚くこと間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

田舎暮らしは大変!?重松清『みんなのうた』は家族の温かさに感動する小説

(※『みんなのうた』表紙より)  田舎に帰ってますか。  私はもともと都会と呼ばれる場所で育ったので田舎はありませんが、重松清さんの小説『みんなのうた』を読んで田舎で育った人たちの苦労が少しだけわかりました。  読めば、 …

『農ガール、農ライフ』は厳しい現実に立ち向かう勇気をくれる小説

(※『農ガール、農ライフ』表紙より)  垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』。  「今の仕事がキツイから農業でも始めようかなぁ」「退職後に農業でも始められたらいいなぁ」と漠然と考えている人たちに、厳しい現実を教えてく …

自分らしく生きるとは?柚木麻子『BUTTER』は首都圏連続不審死事件をテーマにした小説

(※『BUTTER』表紙より)  柚木麻子さんの小説『BUTTER』。  首都圏連続不審死事件をテーマに、なぜ木嶋早苗(作品内では梶井真奈子として登場)に多くの人たちが注目したのかを、その背景と共に描いた小説です。  読 …

ちょっと切ない物語!?米澤穂信『氷菓』は高校が舞台の青春ミステリー小説

(※『氷菓』表紙より)  米澤穂信さんの小説『氷菓』。  高校に入学したばかりの4人が古典部に入部し、日常のちょっとした謎を解いていく青春ミステリー小説です。読めば、少し切ない気持ちになること間違いなし!?  今回は『氷 …

盗人にもモラルがあった!?池波正太郎『鬼平犯科帳(1)』は正義と悪がごちゃ混ぜになった小説

(※『決定版 鬼平犯科帳(1)』表紙より)  池波正太郎さんの小説『鬼平犯科帳(1)』。  大きくみると鬼平が悪者を退治するという構成の物語ですが、盗人にもモラルがある者やそうでない者がおり、盗人同士でも闘いを繰り広げる …

東野圭吾『探偵ガリレオ』は科学的な視点で事件を解決するミステリー小説

(※『探偵ガリレオ』表紙より)  東野圭吾さんの小説『探偵ガリレオ』。  警視庁捜査一課の草薙俊平が、帝都大学理工学部の准教授・湯川学とともに科学的な視点で事件を解決していくミステリー小説です。読めば、湯川准教授に挑戦し …

春ちゃんが結婚!?畠中恵『ねこのばば』は魅力あるキャラクターが多数登場する時代小説

(※『ねこのばば』表紙より)  畠中恵さんの小説『ねこのばば』。  しゃばけシリーズ第3弾の本作は、魅力あるキャラクターが多数登場する時代小説です。ついに若だんなの幼馴染・春ちゃんが結婚する!?  今回は『ねこのばば』の …

これで最後!?東野圭吾『禁断の魔術』は科学よりも大切なものがあることを教えてくれる小説

(※『禁断の魔術』表紙より)  科学を何よりも信じていませんか。  私は信じていました。科学的な根拠があることが、何よりも正しいことだと考えていました。  しかし、東野圭吾さんの小説『禁断の魔術』を読んで少し考えが変わり …

仕事に人生をかけてる?塩田武士『騙し絵の牙』は大泉洋をあてがきした小説

(※『騙し絵の牙』表紙より)  仕事に人生をかけてますか?  私はかけていません。仕事の悩みは星の数ほどありますが、どれも「叱られたくない!」というネガティブな感情からスタートしています。  「成し遂げたいことがある」な …

『ふくわらい』は幼い頃に感情を失った女性を描いた小説

(※『ふくわらい』表紙より)  西加奈子さんの小説『ふくわらい』。  この前のエントリで紹介した『コンビニ人間』の主人公とよく似た女性――他人の感情や言動が理解できない女性が、他人との関わりを通じて感情を取り戻していく過 …