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 自分の視点で他人を評価していませんか?

 たとえば、「あの人は役に立つ人だ」とか、「あの人には何を任せてもダメだ」なんて評価しがちですが…。実はこの世界には「存在意義がない人」なんて誰もいません。

 そんな当たり前のことに気づかせてくれる小説が東野圭吾さんの『ラプラスの魔女』。物語にハマるだけでなく、この世界の不思議さが垣間見れる小説です。

 物語の主人公は不思議な現象を起こす若い女性

 物語は、「いつか国家元首やハリウッドスター級の大物の身辺警護をしてみたい」と夢見る元警察官の武尾徹に高額報酬での依頼が舞い込むところから始まります。

 彼がボディーガードをする相手は、羽原円華という若い女性でしたが、なぜか円華がどういう人物なのか何一つ教えてもらえませんでした。それだけでなく、円華の素性を詮索することを禁止されます。

 武藤はその条件を受け入れましたが、円華と行動をともにするようになって、彼女がどんな人物なのか気になって仕方なくなりました。

 なぜなら、彼女のまわりでは不思議なことばかり起こるからです。

 たとえば、円華は風船や紙飛行機を思い通りに飛ばすことができます。川に帽子が落ちそうになっても、曲線を描いて彼女の元へ戻ってきたり、雨が止む時間をピタリと言い当てたりと、不思議な現象を次々と起こしていきます。

 ところが、円華のまわりにいる人たちは彼女の行為を当然のこととして受け入れているんですよね。なぜなら、彼女は…。

 未来を見通すことができる力「ラプラスの魔」

 未来を見通すことができる力を持っていたからです。

 以下のエントリでも紹介していますが、自然界で起こる様々な現象は、微分方程式を瞬時に解いて未来を予測する知力をもつ魔物が存在しないと説明できない不思議なことばかりです。

 西洋の科学者たちは、この不思議な現象を「ラプラスの魔」と呼びました。

 たとえば、小川のせせらぎ。小川は実にきれいにせせらぎますね。

 実は、小川のせせらぎは、重力とその他二、三の法則によってそうなるのですが、法則からせせらぎを生みだすには、各瞬間、各水滴が、それぞれの情勢に応じてどちらの方向へどれくらいの速さで流れたらよいかをすぐに判断し、その通りに動く必要があります。

 つまり、物質にはラプラスの方程式よりも、もっと難しい数式をただちに解いて未来を予測する知力があると思うほかないんですよね。

 この「ラプラスの魔」と同じ力をもった女性が羽原円華でした。

 ではなぜ、このような力を手にしたのかというと…。

 世界は一人の力で動いているわけではない

 実際に本書を読んでいただくとして、円華の目を通して世界を眺めてみると、日常の何気ない風景が少し違った世界として浮かび上がってきます。

 たとえば、縁日。縁日では、ずらりと屋台が並ぶ細い通路を大勢の人が行き来します。しかし、ぶつかることはほとんどありません。

 それは、先ほど紹介した小川のせせらぎと同じように、向こうへ行く人間と、こちらへ来る人間の流れがあり、それに従っているからです。

 もちろん、誰もがそんなことを意識して歩いているわけではありません。無意識のうちに自分にとって楽な方法、得な方法を選んでいるだけです。

 しかし、個人個人は自由な意思で動いているつもりでも、人間社会という集合体としてみた場合、驚くような物理現象を生み出しているんですよね。

 つまり、一人ひとりは凡庸で、無自覚に生きているのだとしても、その人たちがいなければ世の中は成り立たないということです。一見何の変哲もなく、価値もなさそうな人たちこそが、社会の重要な構成要素なんですね。

 私たちは、仕事ができる人や、有名人や著名人に価値があるように勘違いしがちです。しかし、その人たちがどれだけ大声で叫んでも、私たちの心に響かなければ、世の中は何一つ変わりません。

 つまり、私たち一人ひとりが小川のせらぎのように、瞬時に判断して行動しているからこそ、世の中は大きく変化していくんですよね。

 そんな世界の不思議さを垣間見れる小説が東野圭吾さんの『ラプラスの魔女』。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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