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 「プラシーボ効果」をご存知でしょうか。

 別名、偽薬効果とも呼ばれており、たとえば夜眠れないと訴える患者に、医師が睡眠薬と偽ってビタミン剤を処方すると、患者は薬の効果を信じて安眠できるようになります。

 他にも、「もって一年」と告知された癌患者が、「絶対に治してみせる」と決意し、科学的には効用が認められていない薬品を飲むなど、自らが治ると信じた行動を続けることで癌を克服したケースがあるなど、「プラシーボ効果」には底知れないパワーが秘められています。

 このように「プラシーボ効果(信じる力)」には良い面もありますが、一歩間違えると怖ろしいことにもなりかねません。シェイクスピアの小説『リア王』がそれを物語っています。

 小説『リア王』のあらすじ

 ブリテン国の国王であるリア王は、老いてきたので三人の娘に王国を譲り、政の煩わしさから解放されたいと考えていました。そこで、領地を三分割し、娘たちに平等に分け与えようとしますが…。

 突如、リア王はこんなことを思いつきます。娘たちがどれだけ自分のことを愛しているかで分け与える領地の大きさを決めようとしたのです。

 そのことを知った娘たちの対応は極端に分かれました。長女ゴネリルと次女リーガンは、言葉の限りを尽くしてリア王に「愛している」ことを伝えましたが、三女コーディリアは姉たちのような見え透いた嘘が言えませんでした。父のことを心から大切に想っていたからです。

 お父様。お父様は私を生み、育て、かわいがってくださいました。その御恩にたいしては、私も当然の義務として、お父様に従い、愛し、敬います。お姉様たち、もしすべての愛をお父様に捧げるとおっしゃるのなら、なぜ夫など持たれたのか。私なら、もしいったん嫁いだ上は、愛情も心遣いも日々の務めも、その半分は、夫に捧げるのが当然と考えましょうに。

 しかし、この言葉を聞いたリア王はコーディリアを勘当します。長女や次女が言うように、「父というのは、娘たちから誰よりも愛される存在でなければいけない」と信じていたからでしょう。

 こうしてリア王は長女と次女に王国を譲りましたが、これが悲劇の始まりでした。王国を譲り受けた途端、長女と次女がリア王を邪魔者扱いするようになったからです。

 その後、リア王は長女と次女から追い出され、彼女たちの裏切りに対する怒りと、末娘コーディリアに対する仕打ちへの後悔から、次第に狂い始めていきます。そして、ついに狂人へと様変わりしてしまうのです。信じるもの、信じる相手を間違えた結果だと言えるでしょう。

 小説『リア王』のもう一つのあらすじ

 リア王の家臣であるグロスター伯も信じるもの、信じる相手を間違えたひとり。

 彼には二人の息子がいました。長男エドガーと次男エドマンドです。しかし、グロスター伯は二人の息子を平等に扱いませんでした。次男エドマンドが浮気相手との間に出来た子供だったからです。エドマンドは跡継ぎの候補から外されていました。

 しかし、エドマンドはグロスター伯の跡継ぎになりたいという野望を秘めていたので策を立てます。長男エドガーが財産を狙っているとグロスター伯にほのめかしたのです。最初は信じられない様子のグロスター伯でしたが、度重なるエドガーの策に嵌り、ついにはエドガーを追放してしまいました。

 では、その後、どうなったのか。グロスター伯は、リア王と同じようにエドマンドによって追放されることになりました。しかも両目を奪われて――。

 まとめ

 この物語からわかることは、信じるもの、信じる相手を間違えれば、どれだけ全うに生きたとしてもリア王やグロスター伯のように、その末路は悲惨なものになるということです。

 では、現代に生きる私たちはどうでしょうか。「お金さえあれば幸せになれる」「学歴や権力さえあれば幸せになれる」といった幻想を追い求めていないでしょうか。そういった言葉を吹き込む人を信じていないでしょうか。もし、そうだとしたら、リア王やグロスター伯のように悲しい結末を迎えることになるかもしれません。

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