川端康成『舞姫』は水面下で家庭が崩壊していく姿にゾッとする物語

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ドロドロした人間ドラマが描かれている物語はお好きですか?

私はまったく好きではありませんが、川端康成さんの小説『舞姫』は楽しめました。

外から眺めていると羨ましく思える家族が、水面下では崩壊に向けて突き進んでいる姿にゾッとしたんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 水面下で家庭が崩壊していく姿にゾッとする物語に興味がある人
  • 価値観の不一致があると夫婦は上手くいかないのか考えてみたい人
  • 浮気は悪いことなのか考えてみたい人
  • 川端康成さんの小説に興味がある人
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あらすじ:夫にたかられる元バレリーナが主人公の物語

物語の主人公は、過去にプリマドンナとして活躍することを夢見ていた波子。

彼女には21歳の娘・品子と、大学生の息子・高男がいましたが、夫の生活費も含めて、波子が面倒をみていました。

とはいえ、夫の元男が働いていなかったわけではありません。

元男はある大学に籍を置いているだけでなく、二、三の学校も掛け持ちしており、地方の学校へ講義に行くこともありました。

それらの給料に加えて、原稿料や著書の印税も入っていたので、結構なお金を持っているはずです。

しかし、そのことに波子は気づかず、また元男もなぜかお金を家に入れませんでした。

そんな父の姿をみてきた高男は、学問ができる父を尊敬していたものの、人としては全く尊敬できずにいました。

大学生活を辞めて母のために働きたいとまで考えています。

一方の品子は、波子の勧めに従ってバレリーナとして舞台に立つことを夢見て練習に励んでいましたが、

彼女にはどこか冷めたところがあり、バレリーナとしての未来を諦めてもいました。

それよりも香山という男性と一緒になりたいと願っていたのです。

そんな家族と暮らす波子も多くの稼ぎがあるわけではありませんでした。

バレエの先生をしているものの、生活資金のほとんどを実家の資産で賄っています。

今では土地や物を売って生活費に充てていました。

それにも関わらず…。という物語が楽しめます。

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感想①:水面下で家庭が崩壊していく姿にゾッとする

家族をテーマにした物語といえば、私は『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』を思い浮かべますが、

どちらの漫画も、ほのぼのとした日常が描かれているので、温かい気持ちになれます。

そういえば、クレヨンしんちゃんも、ユーモアの割合が大きいですが、ほのぼのとした家族の日常が描かれていますよね。

とはいえ、映画になると、「野原一家ファイアー!」と叫ぶシーンが多く見られるように、

一致団結して困難を乗り越えていく姿が描かれています。

一方で、昼ドラで描かれているのは、(あまり見たことがないので聞きかじった情報で書きますが)、

夫婦間の問題が爆発して、家庭が崩壊するような修羅場が多いように思います。

川端康成さんの小説『舞姫』も、どちらかといえば、この昼ドラに近い設定です。

矢木家で暮らす誰もが、家族のことを考えずに、自分のことばかり考えていました。

父の元男は、次の戦争に怯えて自分と息子だけが助かる道を模索し、

母の波子は、元恋人とプラトニックな恋に溺れることで現実逃避し、

娘の品子は、母の期待を無視して、香山という男性と暮らすことだけを夢見ており、

大学生の元男は、父の異常さに気づいた上で、父の誘いに乗ろうとしていました。

このような家族がうまくいくわけがありませんよね。

水面下で徐々に家庭が崩壊していく姿にゾッとする物語です。

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感想②:価値観の不一致があると夫婦は上手くいかないのか?

では、なぜこのように家庭が崩壊していったのでしょうか。

それは、元男と波子の価値観の不一致がきっかけです。

元男は吝嗇家で、たとえば、お客さんが残したお菓子でも食べようとしますが、

一方の波子は裕福な家庭で育ったので、他人の残したものを食べるのは汚いからやめて欲しいと注意するような性格でした。

しかし、こうした価値観の不一致は、どこの家庭でも起こり得ることです。

それでも一緒に暮らしていけるのは、相手への尊敬や愛情があるからですよね。

たとえ同性であっても、尊敬する気持ちがあれば、

漫画『昭和元禄落語心中』に登場する菊比古と初太郎のように、価値観の不一致も乗り越えていけます。

ところが、元男と波子の間には、相手を尊敬したり、愛したりする感情がまったくありませんでした。

家庭崩壊へのきっかけは価値観の不一致でしたが、

本質的には互いを尊敬する気持ち、愛する気持ちがなくなってしまったことが原因だとわかる物語です。

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感想③:浮気は悪いことなのか?について少し考えてみる

先ほども紹介したように、波子は元恋人の竹原と何度も会うようになりましたが、

あくまでもプラトニックな恋を貫いていました。

この浮気はダメなのか?と聞かれると、私はダメとは言い切れないように思います。

なぜなら、元男が波子のことをまったく信じていないことが根本的な原因だったからです。

平野啓一郎さんの小説『ある男』に登場した弁護士の城戸は、これまでの自分の振る舞いを反省して、妻の浮気に目を瞑りました。

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 私たちは誰かを愛しながら生きていますが、その愛はその人の今を見て生まれてきた感情なのでしょうか。  それとも、その人の過去を知っているからこそ生まれてきた感情なのでしょうか。  平野啓一郎さんの小説『ある男』を読んで、...

一方の元男は、浮気される前から「お金を貯めて自分だけ助かる!」という戦略を実行していきます。

これでは浮気をするなという方が難しいですよね。

さて、浮気は本当に悪いことなのか問題についてですが、今回の結論としては、

相手から信頼されているのにも関わらず、浮気をするのは悪いことだけれど、波子のように信頼されていない状態でプラトニックな恋をするのは仕方がない。

と考えてみました。

とはいえ、とても難しい問題なので、機会があれば引き続き考えていきたいと思います。

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まとめ

今回は、川端康成さんの小説『舞姫』のあらすじと感想を紹介してきました。

川端康成さんの小説としては、あまり有名な作品ではありませんが、ドロドロした家庭を覗き見ることができる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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