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(※『いぬやしき(1)』表紙より)


 つい先日までイブニングで連載されていた漫画『いぬやしき』。ある日突然、強大な力を手に入れたらどうする?がテーマの漫画です。

 今回は『いぬやしき』のあらすじと感想を紹介します。

 家族からも他人からも見下される一家の大黒柱

(※『いぬやしき(1)』より)


 妻と二人の子供がいる58歳の犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)。彼は家族からも他人からも見下されていました。

 たとえば、長年働いてようやく一軒家を購入した犬屋敷でしたが、家族の反応はイマイチでした。そればかりか、荷ほどきをするのは彼ひとりで、妻と子どもたちは彼をおいてファミレスへ。

 電車でマナーの悪い若者に絡まれても、オヤジ狩りの現場に遭遇しても、何ひとつ行動できない犬屋敷。そんな父の姿を見た息子から「穴の中に隠れて怯えて暮らせばいいんだよ」と言われます。

 さらに、彼が牛丼屋でひとりご飯を食べていると、偶然通りかかった息子の同級生から「何が楽しくて生きているんだろう」と言われる始末。

 しかし、そんな犬屋敷に大きな変化が訪れます。突然落下してきた謎の物体に衝突したことがきっかけでロボット化することに!?

 ここから犬屋敷の新たな人生――人助けの人生が始まります。

 ロボット化したもう一人の主人公

(※『いぬやしき(2)』より)


 犬屋敷と同じタイミングでロボット化した人間がもう一人いました。それが高校生の獅子神皓(ししがみ ひろ)。

 獅子神は犬屋敷とは反対に人を殺すことで「生きていること」を実感します。そのため、交差点で車を衝突させたり、他人の家に勝手に上がり込んで、一家全員を殺害したりします。

 しかし、友達思いな一面も。仲のいい友人・安堂がいじめられて引きこもっていることを知ると、安堂をいじめた人間を片っ端から殺していきます。

 ところが、これがきっかけで安堂は獅子神の怖ろしさに気づき、犬屋敷と二人で獅子神の暴走を止めることを決意。

 こうして獅子神と犬屋敷の戦いが始まります。

 獅子神だけが悪者なのか!?

(※『いぬやしき(5)』より)


 無差別殺人を繰り返す獅子神でしたが、一方で、この事件を面白おかしく扱うマスコミや2ちゃんねらーの姿が。

 特に2ちゃんねらーは獅子神の家の住所を特定して晒したり、獅子神の親を自殺に追い込むような発言をしたり、獅子神をバカにした発言を繰り返したり…と最低。

 そんなマスコミや2ちゃんねらーを獅子神は次々と殺害していきます。

 もちろん、殺人を繰り返す獅子神に問題があるのは当然ですが、無責任に盛り上がる2ちゃんねらーやマスコミにも問題があることに改めて気づかされる物語です。

 最後に

 ある日突然、強大な力を手に入れたら?がテーマの漫画『いぬやしき』。犬屋敷と獅子神は正反対の行動を取りますが、どちらの考え方にも共感できる面白い物語です。

 自分ならどうするかな?と考えながら読むと、さらに面白くなるかもしれません。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。あわせてこちらもどうぞ。

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