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 なぜ、アメリカ人は「自己主張」がうまくできるのだろう。自分の発言に説得力をもたせ、相手に聞く耳をもってもらえる。人の心を惹きつけ、動かしていける――。なぜ、そんな話術を身につけているのだろうか。

 結論からいえば、子どもの頃から練習しているからだ。アメリカの子どもたちは幼稚園の頃から「show and tell(見せて話す)」という訓練をしている。家にあるオモチャや雑貨、森で拾った蛇の抜け殻などを幼稚園に持っていき、クラスメイトの前で「これは何か?」「どこで手に入れたのか?」「あなたにとってどういう意味があるのか?」という先生の質問に答える。小学二年生くらいになれば、全部ひとりで話した後に、クラスメイトからの質問タイムがある。つまり、アメリカの子どもたちは4、5歳くらいからプレゼンの練習をはじめているのだ。

 彼らが中高生くらいになると、自分の言った意見に対して反論される練習、議論の練習も行う。「コロンブスがアメリカ大陸に到着した後から、奴隷制度が本格化。コロンブスも実は奴隷貿易をしていたんだよね。スパイスよりも奴隷で儲けようとしていたんじゃないの?」などと議論を深めていく。こうして議論していくなかで、「こういう言い方をすると相手を怒らせてしまう」とか、「同じことを言うのでも、言い方を変えれば聞いてもらえる」といったコミュニケーション術を体得していくのである。

 つまり、トレーニングすれば誰だって「話術」は磨けるということ。とはいえ、やみくもにトレーニングしても時間がかかる。そこで本書では、「次の三つの要素を織り交ぜて説得力を高めよう」と提案している。

  1. エトス:人格的なものに働きかける説得要素
  2. パトス:感情に働きかける説得要素
  3. ロゴス:頭脳に働きかける説得要素

 「エトス」とは、現在の立場や功績、肩書きなどにより、「この人がいっているなら聞いてみよう」と思ってもらえる要素のこと。その人自身の信頼性・信憑性を表す要素である。たとえば、「ハーバード大学出身」「アメリカ人」「東京工業大学で教えている」「コメディアン」といったものがそう。肩書きや経歴じゃなくても、「三人の母として」とか「先日職を失ったんですが…」など、伝えたい内容と自分がどのように関係しているのかを盛り込んでもいい。「誰々から聞いた」や「誰々の本に書いてあった」など、エキスパートや実体験のある人の言葉を使ってもOKだ。

 「パトス」とは、怒りや喜び、愛国心など聞いている人に特定の感情を抱かせる要素のこと。たとえば、有名なスポーツ選手を起用したCMをみて「この商品を身につけたり使ったりすると、あの選手みたいにかっこよくなれるよ」と、憧れの気持ちを揺さぶるのがそう。扇動者や愛国心や他国民、他民族に対する怒りや恐怖を煽って戦争や迫害を呼び起こす。高級ブランドやセレブ生活への憧れを煽ってカバンや時計を売り込む。チャリティー団体が恵まれない子どもや災害に遭った人々に対する同情を誘って募金活動をする。お母さんが罪悪感を持たせて、子どもにご飯を残さず食べさせる。――そういったものだ。

 なかでも、ディテール込みのストーリーを使うと感情を引き起こしやすい。「100万人が餓死した」といわれるより、「家族の食べ物がなくなってからは泥で団子をつくり、『ごはんごっこ』で空腹感を和らげていた四歳のアンちゃんは、昨日息を引き取りました」といわれたほうが何倍も悲しくなるだろう。これが「パトス」の力である。

 「ロゴス」とは、その人の言うことをアタマで考えて理解し、納得するというような要素のこと。論理性がある、理論的であるという言葉で表現できるものだ。具体的には、「比喩」「比較」「例え話」「対句」「列挙」「反復」「呼びかけ」「三段論法」といった、いわゆる文章術に相当するものである。

 この「エトス」「パトス」「ロゴス」を組み合わせてストーリーを構成し、自信をもって話すことができれば、あなたの話はとても魅力的になるだろう。なかでも「エトス」を意識して話すようにすれば、少なくとも「話を聞いてもらえない」という悲しい状態にはならないはずだ。ぜひ、普段の何気ない会話から取り入れてみてはどうだろうか。

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