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 「グーグルが成功した最大の理由の一つは、事業計画が実はまったく計画らしくなかったことにある」と、グーグルの会長であるエリック・シュミット氏は言う。

 実際に、グーグルでは、財務予想や収入源に関する議論などしない。ユーザや広告主、あるいはパートナー企業が何を望んでいるのか、それが市場セグメントにどのように当てはまるのかといった市場調査も行わない。セールス部門はこれ、プロタクト部門はこれ、そしてエンジニアリング部門の仕事はこれ、といった組織の概念すらない。何をいつまでにつくるかを詳細に記したロードマップもなければ、予算もなし。取締役会や進捗状況を確認するための目標やマイルストーンもないという。

 では、なぜグーグルではまともな事業計画を立てようとしないのだろうか。結論からいえば、優秀なエンジニアたちの手足を縛るリスクが高いからだ。だから、グーグルのCEOであるラリー・ペイジ氏は「事業計画を立てたほうがいいのでは?」という部下からの質問に対して、「なんでそんなことをしなきゃならないんだ?バカげてるよ」と答えている。

 このようにグーグルでは、「大学院の雰囲気を経営に持ち込む」というこれまでにない経営スタイルを実践しているわけだが、この経営スタイルが実践できるのは、グーグルで働くエンジニアのレベルが相当高いからである。

 では、どれほど高いのか。「グーグルで働くエンジニアたちは最低でも次の三つの能力を持っている」とエリック・シュミット氏はいう。

  1. 専門知識
  2. クリエイティブなエネルギー
  3. 自分で手を動かして業務を遂行しようとする姿勢

 そもそも、自分の「商売道具」を使いこなせるだけの高度な専門知識を持っていなければ、話にならない。グーグルでいえば、コンピュータ科学者であったり、少なくとも日々のコンピュータ画面上で起きている魔法――たとえば検索エンジンの背後にあるシステムの理論や構造を理解している必要がある。そうした知識がなければ、新しいシステムなど生み出せないからだ。

 もちろん、新しいシステムを生み出すには「斬新なアイデア」が必要である。これまで誰も思い浮かばなかったアイデアだ。そして、そういったアイデアを思いつくには、他の人とはまったく違う視点があり、ときには本来の自分とも違う視点に立てること。すなわち、好奇心旺盛で、常に疑問を抱き、決して現状に満足せず、常に問題を見つけて解決しようとし、それができるのは「自分しかない」と確信している――そういったエネルギーで溢れている必要がある。

 さらに、思い浮かんだアイデアを自らの手で成し遂げる力がいる。グーグルでは基本的に自分たちでサービスを生み出している(プログラミングしている)そうだ。そのことを示す面白い例がある。

 グーグルでは、社内にビリヤード場があるのだが、そこに「ある問題」を貼りだしておいたところ、そこで遊んでいたエンジニアたちが勝手にその問題を解き、サービスとして運用できるレベルにまで仕上げてしまったという。

 他の会社がサービスを作るなら、計画書を書き、予算を確保して、仕様書を書いて、その仕様書に基づいてプログラミングできる会社をみつけ、仕様の説明をして外部委託する――といった気が遠くなるような手順を踏む必要がある。ところが、グーグルではそういった無駄な手順は一切踏まずに自分たちで作り上げる。

 このようにグーグルのエンジニアたちは相当レベルが高いように思えるが、もちろんこれは最低限求められるレベルである。他にも、分析力やビジネス感覚が優れているといった素晴らしい力が必要だ。では、どうすればこうした力を手に入れることができるのだろう。本書が示しているのは次の二つ。

  • 徹底的に努力をする
  • とにかくスピード

 グーグルのエンジニアたちは、自分たちが成し遂げようとしていることが「朝九時から夕方五時の勤務」で実現できないことを知っている。全財産をなげうって火星を目指しているあのイーロン・マスクも、土曜日の夕方に帰る社員たちをみて、「すっかり弱腰になっちゃってね。こんな甘えた状態でいいのかと会社にメールで活を入れようと思っていたところですよ」といっている。つまり、多くの人たちが休んでいる間に努力するのが当たり前になっているということ。

 そして、何よりもスピードだ。先ほども説明したように、他の会社のエンジニアたちが仕様書を書いている間に、グーグルのエンジニアたちは自らプログラミングをしてプロトタイプを作り上げてしまう――その圧倒的なスピードでグーグルは成功してきたのである。つまり、ものすごいスピードで人の倍以上の努力をしているからこそ、グーグルのエンジニアたちは素晴らしいサービスを生み出し続けられるのである。

 さて、これから私たちが生きる世界では、インターネットの発達によって、いつでもどこでも誰もがつながる世界になっていくだろう。実際に、文章やプログラミング、ハンドメイド作品など、様々なものが個人で販売できる環境が整ってきた。こういった流れがさらに加速するとどうなるのか。これまで日本にしかいなかったライバルたちが、中国やインド、ブラジルといった世界各地にあふれることになる。すなわち、グーグルのエンジニア相当の人たちが競争相手になるのだ。

 だからこそ、今すぐにでも――グーグルのエンジニアたちに負けないような技術者に成長していく必要がある。グーグルのエンジニアのように、ものすごいスピードで人の倍以上の努力をしていく必要がある。そうすれば、これからの厳しい世界でもきっと生き残っていくことができるだろう。

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