小川洋子『人質の朗読会』は偶然が人生を大きく左右することがわかる物語

おすすめ小説

偶然を楽しんでいますか?

私はどちらかといえば、用心深い性格なので、突発的な出来事はあまり好きではありませんが、

小川洋子さんの小説『人質の朗読会』を読んで、偶然が人生を決めると言っても過言ではないことに気づきました。

それだけでなく、変わり者の方が人の記憶に残ることにも気づけたんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 不思議な物語が好きな人
  • 人質の朗読会という特殊な状況の物語を読みたい人
  • 偶然が人生を大きく左右する物語に興味がある人
  • 小川洋子さんの小説が好きな人
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あらすじ:ゲリラグループに拉致された人たちの物語

物語は、日本からみて地球の反対側にある村に観光に来ていた日本人8名が、反政府ゲリラの襲撃を受けて、拉致されるところから始まります。

犯人グループの要求は、逮捕・拘束されていた仲間の釈放と身代金の支払いでした。

その後、しばらくは目立った動きはありませんでしたが、事件発生から100日ほど経過した頃、事態が急展開します。

軍と警察の特殊部隊が彼らのアジトである元猟師小屋に強行突入したのです。

その結果、犯人グループの5名は全員射殺、特殊部隊の隊員2名が殉職、11名が負傷しました。

さらに、犯人が仕掛けていたダイナマイトが爆発し、人質全員が死亡します。

残ったのは、床板に刻まれた文章と犯人たちの様子を探ろうと盗聴したテープだけでした。

ところが、その盗聴テープを聴いたところ、人質たちが朗読会を開いていたことがわかるんですよね。

拉致された人質たちは一体どんな物語を、何のために朗読していたのか…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:不思議なのに心に残る短編集

あらすじでも紹介しましたが、『人質の朗読会』は、人質になった人たちがいつ死んでもおかしくない状況で、自分の過去と向き合いながら朗読しあう物語です。

全部で9つの短編で構成されていますが、どれも不思議なのに心に残る物語ばかりなんですよね。

ここで、いくつかの短編を紹介すると、

  • アルファベットのビスケットを製造する会社で不良品を取り除く仕事をすることになった私が、整理整頓を徹底する変わり者の大家さんとコミュニケーションを重ねていく物語
  • お年寄りの外国人に「公民館のB談話室はどこですか?」と尋ねられた僕は、親切に連れて行ってあげたことがきっかけで「危機言語を救う友の会」など、謎の集まりに参加するようになる物語
  • 眼科医になることを母親から望まれていた僕が、通学途中に出会ったよぼよぼの老人がつくった左目のないぬいぐるみに惹かれる物語

と、どれも不思議な物語ですが、今村夏子さんの小説『木になった亜沙』と同じように、読み始めると続きが気になってとまらなくなります。

今村夏子『木になった亜沙』は不思議な物語なのに最後まで惹きつけられる小説
不思議な物語はお好きですか? 私はどちらかといえば、読書に意味を求めているせいか、テーマがハッキリしている物語が好きなのですが、 今村夏子さんの小説『木になった亜沙』は、不思議な物語なのに最後まで楽しめました。 それだけで...

不思議なのに心に残る…そんな物語に興味がある人におすすめの小説です。

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感想②:常識にとらわれない人たちほど記憶に残る

先ほど人質たちはいつ死んでもおかしくない状況で朗読していたと書きましたが、

このような状況下で彼らが語った物語には、常識にとらわれない人たちが多数登場していました。

必要以上に整理整頓にこだわるケチな老婆や、気持ち悪いぬいぐるみを売る老人、母が出かけた隙に台所を借りにくる娘など、非常識な人ばかりです。

しかし、こうした非常識な人ほど記憶に残り、誰かに語りたくなるんですよね。

『コンビニ人間』では常識にとらわれた人たちが、自分とは違う価値観の人を排除しようとする姿が描かれていましたが、

村田沙耶香『コンビニ人間』は常識にとらわれずに自分らしく生きていこうと思える物語
自分とは違う生き方をしている人を「普通じゃない」って思っていませんか? たとえば、大学卒業後も就職もせず、コンビニでアルバイトをしている人を見たら、普通じゃないって思いますよね。 しかし、村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』を読...

この物語では、常識はずれな人ほど記憶に残り、その出会いが人生において大きな意味を持つことを教えてくれます。

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感想③:偶然が人生を大きく左右する

さて、この物語では、偶然が人生を大きく左右する姿が描かれています。

そもそも、人質になったことも偶然ですが、

それだけでなく、彼らが語った物語からも偶然が人生を決めているかのように思えてきます。

たとえば、母親から眼科医になることを望まれていた僕は、左目のない老人と偶然出会い、なりたくなかった眼科医を目指すようになり、

飛行機のプラモデルが趣味だった夫を亡くしたおばさんは、偶然出会った槍投げをする青年の姿を見ることが生き甲斐になり、

老人と偶然出会ってB談話室に通うようになった僕は、これがきっかけで小説家になる…。

というように、偶然が人生を大きく左右する姿が描かれています。

もちろん小説なので、偶然が起こるように描かれているといえばそれまでですが、

『今は苦しくても、きっとうまくいく』の感想にも書いたように、偶然のチャンスをものにしていけば、その後の人生は大きく変わるんですよね。

なぜ、彼らは「どん底」から這い上がれたのか?
仕事やプライベートで、「どん底」に落ちたことありますか? 私はあります。子供の頃に貧乏だったので、結構悲惨な暮らしをしていました。 しかし、私が味わったどん底よりも、もっとツラいどん底から這い上がってきた人たちがいるんですよね。...

突発的な出来事をあまり好まない私でも、偶然を大切にしていきたいと思える物語でした。

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まとめ

今回は、小川洋子さんの小説『人質の朗読会』のあらすじと感想を紹介してきました。

とても不思議な物語ですが、心に残る物語でもあるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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