webstation plus

(※『星の子』表紙より)


 宗教は自分には関係のないものだと思っていませんか。

 私は思っていました。洗脳された人が、怪しいものを買ったり、変な行動を取ったりするものだと思っていました。

 しかし、今村夏子さんの小説『星の子』を読んで少し考えが変わりました。

 なぜなら、私たち日本人の多くが当たり前のようにしている初詣やお宮参りなどと大差ないことに気づいたからです。

 今回は、『星の子』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『星の子』のあらすじ

 小さい頃、体が弱かった林ちひろ。彼女は生後半年のときに湿疹ができ、わずか一週間で全身に広がりました。

 彼女の両親は、ちひろの湿疹を治そうと専門医に勧められた薬を塗ったり、ありとあらゆる民間療法を試しましたが良くなりません。

 そんなとき、父の職場の同僚・落合さんから「水」を勧められます。その水をちひろにかけたところ、わずか数日で湿疹が治りました。水を飲むようになった両親も風邪ひとつひかなくなります。

 その水は「金星のめぐみ」という名前で、新興宗教団体が販売していました。

 ちひろの両親は、この新興宗教にどっぷりハマっていきます。しかし、ちひろの姉・まさみはまったく信じていませんでした。

 こうして林家にみえない亀裂が入ります。林家の運命は!?

 『星の子』のおすすめポイント

1. 新興宗教にハマる理由が客観的にわかる!?

 ちひろの両親は、ちひろの湿疹が治ったことがきっかけで新興宗教にハマっていきました。

 しかし、最初から宗教だとわかってハマったわけではありません。最初は、落合さんが勧めてきた「水」を試しに使ってみただけでした。

 ところが実際に使ってみると、ちひろの症状は劇的に良くなっていきます。専門医でも、あらゆる民間療法でも効果がなかったのに。

 また、ちひろの両親も水を飲むことで風邪ひとつひかなくなりました。

 そんな不思議な水があれば欲しいと思いますよね。そこで、ちひろの両親は高額な水を買うようになります。

 さらに、落合さんの家に行き、水で浸したタオルを頭にのせると身体が元気になる、美容効果があるという話を聞きます。早速試してみたところ、効果があるように思えました。

 こうして、ちひろの両親は宗教にどっぷりハマっていったんですね。新興宗教にハマる人たちの気持ちがわかる物語です。

2. 宗教は私たちのまわりに溢れている

 『星の子』の視点で物事をみてみると、私たちのまわりには宗教が溢れていることがわかります。

 たとえば、高額な化粧品。教会こそありませんが、水が化粧品になっただけで、システムとしては同じです。

 「この化粧品を使えば、肌に良いですよ」と言われて、実際に効果があれば、高額でも買ってしまいますよね。

 他にも、病気が治るとされる電気治療や癌が治ると言われている健康食品などもそうです。

 お寺や神社も同じでしょう。なぜお守に効果があるのか?厄年って何なのか?祈る効果はあるのか?など科学的には説明できないことばかり。

 それでも私たちは疑うことなくお寺や神社に行っています。新興宗教との違いは、古くからあるかどうか…なのかもしれませんね。

 誰もが新興宗教にハマる可能性があることに気づかされる物語です。

3. 林家がたどる結末とは!?

 新興宗教にどっぷりハマった林家。そんな彼らの生活がリアルにわかるのが一番のおすすめポイントです。

 親戚から反対されたり、住む家が徐々に狭くなっていったり、家庭が崩壊していったりと、それはそれは怖ろしい物語。しかし、先ほども説明したように誰もが新興宗教にハマる可能性があります。

 ぜひ、実際に読んで彼らの生活を目の当たりにしてください。

 最後に

 今村夏子さんの小説『星の子』。読めば誰もが新興宗教を信じてしまう可能性があることに気づかされる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 こちらのエントリでも紹介しています。

 関連記事

考えろ考えろマクガイバー、考えなきゃ騙されるぞ/伊坂幸太郎『魔王』感想

 最後まで読み切ってもストーリーがよくわからない小説。それが伊坂幸太郎さんの『魔王』。  登場人物のセリフを追いかけていくと、いろいろ考えさせられるんですけどね。  魔王って誰のこと?  タイトルにもなっている …

仕返しするのはダメ?伊坂幸太郎『サブマリン』は少年犯罪について考えたくなる小説

(※『サブマリン』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『サブマリン』。  以前、紹介した『チルドレン』の続編で、家裁調査官の陣内と武藤が無免許運転で人を轢き殺した少年の謎に迫る物語です。読めば、少年犯罪についてあれこれ考え …

本当の恋をしていますか?知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』は心揺さぶられる恋愛ミステリー小説

(※『崩れる脳を抱きしめて』表紙より)  知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』。  研修医の碓氷蒼馬(うすい そうま)が、脳に爆弾を抱える弓狩環(ゆがり たまき)と出会い、恋に落ち、そして彼女の死の謎に迫る恋愛ミ …

仕事に人生をかけてる?塩田武士『騙し絵の牙』は大泉洋をあてがきした小説

(※『騙し絵の牙』表紙より)  仕事に人生をかけてますか?  私はかけていません。仕事の悩みは星の数ほどありますが、どれも「叱られたくない!」というネガティブな感情からスタートしています。  「成し遂げたいことがある」な …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説ーpart6

(※『ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~』表紙より)  読書していますか?  『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズもとうとう6巻目。栞子さんに怪我を負わせた犯人が再び登場するなど、いよいよ物語もク …

正反対な二人だからこそ面白い!?/東野圭吾『マスカレード・ホテル』

(※『マスカレード・ホテル』表紙より)  自分とは正反対の人って嫌ですよね。  几帳面な人が片付けが出来ない人にイライラするように、頭の回転が速い人が遅い人をバカだと思うように、自己中心的な人が優しい人を優柔不断と決めつ …

臆病は伝染する。そして勇気も伝染する/伊坂幸太郎『PK』感想

 タイムパラドックスを描いた小説。それが伊坂幸太郎さんの『PK』です。  この小説は3つの短編で構成されているのですが、タイムパラドックスを念頭に置いて順番を並び替えると、まるで一つの長編のような物語が出来上がるんですよ …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説ーpart8

(※『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』表紙より)  読書していますか?  『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ8冊目は栞子さんと大輔が結婚した後の世界が描かれている番外編。  これまで登場してきた人 …

本気で家族のことを想ってる?/伊坂幸太郎『AX アックス』感想

(※『AX アックス』表紙より)  家族のことを本気で想っていますか。  私は家族のことを本気で想っていると自負していたのですが、伊坂幸太郎さんの小説『AX アックス』を読んで少し考えが変わりました。家族思いの殺し屋に衝 …

『ふくわらい』は幼い頃に感情を失った女性を描いた小説

(※『ふくわらい』表紙より)  西加奈子さんの小説『ふくわらい』。  この前のエントリで紹介した『コンビニ人間』の主人公とよく似た女性――他人の感情や言動が理解できない女性が、他人との関わりを通じて感情を取り戻していく過 …