今村夏子『星の子』は新興宗教にハマった家族を描いた物語

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宗教は自分には関係のないものだと思っていませんか?

私はそう思っていましたが、今村夏子さんの小説『星の子』を読んで考えが変わりました。

宗教は私たちの生活に密接に関わっていることに気づいたからです。

ある意味、誰もが洗脳されているんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 宗教は自分には関係のないものだと思っている人
  • 新興宗教がどのようなものか知りたい人
  • 淡々と語られる物語が好きな人
  • 今村夏子さんの小説が好きな人
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あらすじ:娘の病を必死に治そうとする両親の物語

物語の主人公は中学三年生の林ちひろ。

彼女は生後半年のときに湿疹ができ、一週間で全身に広がりました。

そんな娘の姿をみた両親は、ちひろの湿疹を治そうと、専門医に勧められた薬を塗ったり、効果があると聞いたあらゆることを試しましたが、どれも効果はありませんでした。

そんなとき、父の職場の同僚から「水」を勧められます。

その水をかければ、どんな病気も良くなると聞かされたちひろの両親は、試しにちひろにかけてみたところ…。

わずか数日で湿疹が治ったのです。

それだけでなく、その水を飲むようになった両親も、風邪ひとつ引かなくなりました。

こうして、ちひろの両雛は「金星のめぐみ」という水を売る新興宗教団体にハマっていきました。

水はとても高額でしたが、彼らは何よりも優先して購入するようになります。

また、その水で浸したタオルを頭にのせれば、「身体が元気になる」「美容効果がある」と教えられると、言われるがままに行動するようになりました。

そんな両親の姿を目にしたちひろは…。

という物語が楽しめます。

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感想①:宗教を「悪」という視点で語らない

宗教を題材にした物語は色々あります。

たとえば、漫画『カルト宗教を信じてました』のように、エホバ2世の著者が、実体験を通して宗教の恐ろしさを語っているものや、

東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』のように、新興宗教の教祖のトリックを主人公のガリレオが暴いていくという物語もありますが、

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『星の子』では、「宗教=悪」という視点では語られません。

登場人物の感情に任せて宗教を批判することもなく、起きた出来事を淡々と語っていくんですよね。

2020年の本屋大賞「翻訳小説部門」で1位になった『アーモンド』も、淡々と語られる物語ですが、

このように淡々と語られる物語は、登場人物の感情が読者に委ねられるので、受け取る側の感情が増幅されるように思います。

感情を無理強いされないので、恐ろしさや嬉しさが倍増します。

逆にいえば、物語を読んでも感情が動かなければ、あっさりした物語に感じるかもしれません。

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感想②:誰もが宗教のようなものに洗脳されている

先ほどあらすじで、ちひろの両親が洗脳されていく姿を紹介しましたが、

実は、私を含めた多くの人たちも宗教のようなものに洗脳されています。

たとえば、高額な化粧品もそのひとつです。

『星の子』に出てきた新興宗教団体のように教会こそありませんが、「金星のめぐみ」という水が化粧品に変わっただけで、システムとしてはそれほど大差ありません。

「この化粧品を使えば肌に良いですよ」と言われて、実際に効果があれば、肌が弱い人なら高額でも購入しますよね。

他にも、多くの病気が治るといわれている「電気治療器」や、癌に効果があるといわれている「健康食品」などもそうです。

もっと言えば、神社やお寺もそうでしょう。

「お祈り」や「お守り」、「お宮参り」に「厄年」など、科学的には説明できないことばかりです。

それでも多くの人たちが疑うことなく神社やお寺に行く姿を眺めていると、新興宗教にハマったちひろの家族と大差ないように思えてくるんですよね。

つまり、私たちの誰もが宗教にハマっているということです。

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感想③:宗教でも何でも盲目的に信じるのはヤバい

とはいえ、宗教にハマること自体はそれほど悪いことではありません。

数学者の岡清さんも「科学では説明しきれない世界を無視している人は不幸になりやすい」と指摘されています。

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しかし、ちひろ一家のように、住む家が徐々に狭くなっていっても、家庭が崩壊しても、宗教にハマるのは良くありませんよね。

それは盲目的に信じているからです。

漫画『闇金ウシジマくん』でも盲目に信じる人たちがよく登場しますが、

たとえば、情報商材ビジネスをやれば儲かると煽られて、逆にお金を騙しとられている人たちと似たような心理状態のように思います。

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そんな悲しい状況に陥ってしまいます。

宗教であれ、何であれ、盲目的に何かを信じると恐ろしい結末を迎えることがわかる物語です。

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まとめ

今回は、今村夏子さんの小説『星の子』のあらすじと感想を紹介してきました。

芦田愛菜さんが主演で映画化もされている物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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