西崎憲『ヘディングはおもに頭で』は恐怖に打ち勝つ方法を教えてくれる青春小説

おすすめ小説

恐怖でやりたいことに挑戦できない…なんてことはありませんか?

私は昔よりはだいぶマシになりましたが、今でも失敗したらどうしよう…と不安になることがあります。

しかし、西崎憲さんの小説『ヘディングはおもに頭で』を読んで、失敗を恐れているからこそ、恐怖が膨らんでいくことがわかったんですよね。

今の環境がイマイチでも、やりたいことに挑戦したくなる物語です。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 恐怖を乗り越えようと奮闘する主人公の物語に興味がある人
  • 自分の存在意義を考えたくなる物語を読んでみたい人
  • 誰もが悪意をもっている事実を知りたい人
  • 西崎憲さんの小説が好きな人
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あらすじ:大学受験に2回失敗した浪人生が主人公の物語

物語の主人公は、浪人生の松永おん。

彼は志望する大学に2回落ちており、3回目を受験すべきか悩んでいました。

とはいえ、大学に行くべき理由は明らかでした。安定した会社に就職して、安定した日常を送るためです。

これ以上、受験に失敗すると自分も道路工事の現場で働く日雇いの人たちのようになるのでは…という不安が襲いかかっていたのです。

しかし、彼はそれほど勉強していませんでした。多くの時間を弁当屋のアルバイトとして過ごしていました。

そんな彼が新しくフットサルを始めます。

高校時代の友人である智樹から誘われたのがきっかけでしたが、

実際にプレーをすると、はじめはしんどいだけだったのが、徐々に楽しくなってきたからです。

さらに、すごく上手い人のプレーを見て、「おまえも、やってみろよ」と言われた気がしたからです。

こうしてフットサルを始めたおんでしたが…。という物語が楽しめる小説です。

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感想①:多くの人が悪意をもって生きている

あらすじでも紹介しましたが、おんは弁当屋でアルバイトをしていました。

しかし、アルバイトはやりがいも楽しさも皆無でした。

パートのおばちゃんと一緒に働いていたのですが、誰もちゃんと教えてくれず、わからないことばかりで、怒られてばかりいたからです。

誰もが舐められたらしまいだ…という思いで、自分の利益ばかりを優先していました。

そこで、おんはフットサルに居場所を求めますが、ここでもいじめがありました。

威圧的な態度を取る二人組の女性が新しくきたコーチをいじめはじめたのです。

おんは、いじめを見た日の帰り道に、自分は何か言うべきだったかと考えましたが、口を紡ぐしかなかったと思いました。

父親が入院していたときの看護師は冷たい人間で、父を物のように扱いました。

しかし、看護師へのクレームや病院へのクレームは、父親にしわ寄せがいくような気がしたので、口をつぐむしかありませんでした。

おんはそのときの無力感を思い出していたのです。

とはいえ、おんにも意地悪な部分がありました。

おんはスクールに通って3回目か4回目のときに、女の人とライン際でボールの取り合いになり、自分がボールを出したのに黙って味方に蹴りました。

最後にボールを触ったのが自分であることを認めず、相手の正当な抗議も無視できる人間だったのです。

他にも、自分の意思で万引きをしたり、学校の備品を壊すことに楽しみを覚えたり、いじめを黙って眺めたりしたこともありました。

東野圭吾さんの小説『悪意』では、殺人事件の容疑者である作家が隠していた凄まじい悪意が暴かれていく物語が楽しめましたが、

東野圭吾『悪意』は言葉で人は騙せても真相は隠しきれないことがわかる物語
何も行動を起こさないのに、調子の良いことばかり言っていませんか? 私は口にしたことは出来るだけ行動するようにしていますが、 知り合いのなかにも調子の良いことばかり言っている人たちがいます。 それだけでなく、自分を正当化する...

この小説では、悪意は誰の中にも眠っており、その悪意を眠らせたままでいられるかどうかが重要なのだと気づけました。

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感想②:自分の存在意義を考えたくなる

先ほど、おんはフットサルを始めたと紹介しましたが、実は彼は運動が苦手でした。

それでもフットサルを始めたのは、フットサルをしている誰もが確信を持って走り、蹴り、そこにいる強固な理由を持っていたからです。

フットサルをしている間は、コートの中にいる理由が明らかで、存在意義があるように思えたんですよね。

しかし、アルバイト先では、怒られて、いじめられていたので、自分の存在意義がわかりませんでした。

浪人生だったのも、存在意義がわからなくなる要因のひとつでした。

一方で、周りの友人たちは自分の存在意義を明確に持っていました。

智樹は大学に進学して彼女と楽しく過ごしており、ジブもイベント会社で一生懸命働いています。

高校の写真部で後輩だった広川あかりも、イギリスの大学に進学することが決まっていました。

だからこそ、おんはフットサルで自分の居場所を見つけようとしたわけですが…。

伊坂幸太郎さんの小説『死神の精度』では「生きる理由なんてもとからないんだ」という死神と人間の対比で、生きる意味を持つことが人間らしさだとわかる物語でしたが、

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自分の行動に意味づけをしていませんか? 「なぜこの仕事をしているの?」「なぜこの本を読んでいるの?」「なぜブログを書いているの?」…などなど。 私はどんなことでも「なぜ?」を考えないと気がすまない性格なので意味づけをしていますが...

この小説では生きる意味を持つことの難しさが描かれており、胸が締め付けられました。

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感想③:何かに必死になって挑戦すれば恐怖は克服できる

さて、この小説では、「何かに必死になって挑戦すれば恐怖は克服できる」をテーマに描かれているように思います。

おんは大学に落ちたらどうしよう、自分を好きになってくれる人はいるのだろうか…などという恐怖を抱えていましたが、

新しくはじめたフットサルでも多くの恐怖を抱えていました。

たとえば、智樹からフットサルの大会に誘われたときも、自分みたいな初心者が参加して大丈夫なのか?と心配します。

参加してからも、つめられる恐怖と、失敗するんじゃないかという恐怖におびえていました。

また、個人でフットサルの練習試合に参加することに恐怖を覚えていましたが、何度も参加しているスクールでの練習試合と大差ないはずです。

それなのに、なぜ恐怖があったかと言えば、夜にダイビングをするのと同じように、昼と夜の実質的な差はなくても、誰がいるかわからない、なにをされるかわからないという不安があったからです。

つまり、見えないからこそ恐怖におびえていたんですよね。

しかし、おんはバカにされても、舌打ちされても、少しでもまわりが見えるように挑戦していきます。

朝倉宏景さんの小説『あめつちのうた』では挫折を味わった人たちが勇気を出して一歩踏み出す姿に感動できる物語が描かれていましたが、

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この小説では、おんの姿を通して、行動せずにまわりが見えないまま放置していると恐怖は増大し、

反対に失敗しても勇気を出して行動すれば視野が広がり、恐怖を克服することができるとわかる物語が描かれていました。

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まとめ

今回は、西崎憲さんの小説『ヘディングはおもに頭で』のあらすじと感想を紹介してきました。

今の環境がイマイチでも、勇気を出して一歩踏み出せば、少しずつ周りが見えるようになり、恐怖を克服していけることがわかる物語です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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