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(※『ジャイロスコープ』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『ジャイロスコープ』。これまでの伊坂さんの作品とは異なり、まったく繋がりのない6編(+1編)で構成されている短編小説です。

 しかし、最後の『後ろの声がうるさい』で伊坂さんらしさが全開。この短編を読むために6編を読んできたのか!?と思えるほどの面白さでした。

 というわけで、今回は『ジャイロスコープ』のあらすじと感想を紹介していきます。

 『ジャイロスコープ』のあらすじと感想

1. 『浜田青年ホントスカ』

 家出をした浜田青年が、稲垣という相談屋の助手として働くことに。メリットは三つ。宿泊場所の確保、食事代、他人の相談を聞けること。ただし、デメリットも。携帯電話が使えない&外出できない、などなど。その理由は…。

 最後に大どんでん返しがある物語。オチで驚くこと間違いなし!?

2. 『ギア』

 数ヶ月で消えてしまった町。その町から逃げるようにワゴンに乗り合わせた9人が「セミンゴ」という架空の節足動物について語る物語。

 とてもシュールな物語です。伊坂さんも新たなジャンルにチャレンジされているんですね。

3. 『二月上旬から三月上旬』

 小学生の頃、学校で友達ができなかった慈郎は、コンビニの駐車場で偶然出会った坂本ジョンという名の少年と友達に。その付き合いは大人になってからも続くのですが、他人からは坂本の姿が見えないことが。坂本は実在する人物なのか!?

 少し難解な物語。2回読むと全体の構成が見えて面白くなります。

4. 『if』

 「あのとき、ああしていれば…」。バスジャックされたバスに乗り合わせた山本は、犯人の言いなりになって人質の女性を見捨てます。そんな不甲斐ない自分に自己嫌悪していた山本に挽回のチャンスが!?

 後悔しないように行動しようと思える物語です。

5. 『一人では無理がある』

 夫が入院している間にストーカーに付け回されるようになった梨央。彼女の個人情報を入手したストーカーから自宅に侵入するとの連絡が。刃物を持ったストーカーから子供たちを守れるのか!?

 サンタクロースとストーカーがリンクするユニークな物語です。オチでにやけること間違いなし!?

6. 『彗星さんたち』

 子どもを養うために新幹線の車内清掃をしている二村。そんな彼女が乗客たちとの出会いを通して、危篤状態の先輩の人生を垣間見るという不思議なお話。

 「見る人は見ている」という言葉が実感を伴って心に入ってくる物語。世の中には大変な状況でも頑張っている人が大勢いるんだなぁ、私も頑張らないと!と思える短編でした。

7. 『後ろの声がうるさい』

 新幹線の後部座席に座っている中年男性の隣に、記者を名乗る人物が押しかけてきます。彼は女優の不倫騒動を追いかけていると言いますが…。

 これまでの物語で登場した人物たちが再登場。オチで泣けます。

 最後に

 小説『ジャイロスコープ』は、伊坂さんが新たなジャンルにチャレンジされていることがわかる短編集です。そのため、これまでの作品とは少し異なるので戸惑うかもしれませんが、最後にはニヤけること間違いなし。

 気になった方はぜひ読んでみてください。

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