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 伊坂作品の特徴といえば、至るところに散りばめられた伏線がすべて回収されていくところですよね。

 これは短編でも長編でも同じです。複数の物語がゆるやかにつながっていき、読了後には必ず驚きとスッキリ感が味わえます。

 もちろん、『ジャイロスコープ』もそうなのですが、伊坂さんにしては珍しく独立した短編集なんですよね。

 それは、デビュー15年目という節目を記念して企画された「文庫のおくりもの」的な作品だから。とはいえ、異なるタイプの短編を最後に強引につなげていくのは伊坂さんらしいのですが。

 異なるジャンルの短編が楽しめる

 『ジャイロスコープ』は全7章で構成されています。ミステリー要素の強いものから、サスペンス、SF、パラレルワールド的なものまで、さまざまなジャンルの短編が詰め込まれています。

 まさにタイトルどおり。

 「ジャイロスコープ」とは、回転するコマを3つの軸で支え、自由に向きを変えられるようにした装置で、物体のずれや揺れを防ぎます。カメラやドローンにも使われています。

 また、外から力を加えるとコマ独特の意外な振る舞いをすることから、意外性と驚きに満ちた個性豊かな短編小説集だと言っているんですよね。

 しかも…。

 最後にゆるくつながっていくのが嬉しい

 最後にはすべてがゆるくつながっていきます。それがとても嬉しいんですよね。

 最近、妻の同級生が同じマンションに住んでいることがわかりました。それを知った妻はとても喜んでいたのですが、それと同じです。

 私たちは人とのつながりを求めています。それが偶然ならなおさら嬉しいですよね。小説でもそうです。つながりを求め、驚きがあればとても嬉しくなります。

 『ジャイロスコープ』は、そんな楽しみが味わえる小説です。

 独立しているのにつながりが楽しめる短編集

 というわけで、伊坂幸太郎さんの小説『ジャイロスコープ』は、これまでの短編集とは違い、独立した短編集なのにゆるいつながりが楽しめる小説です。

 気になった方は、ぜひ読んでください。

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