webstation plus

『ジャイロスコープ』はこれまでの伊坂作品とは一味違う短編小説

(※『ジャイロスコープ』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『ジャイロスコープ』。これまでの伊坂さんの作品とは少し異なり、読者の好みよりも、伊坂さんのチャレンジ精神を大切にされた短編集です。

 そのため、「少し物足りない!?」と思う方も出てくるかもしれませんが…。最終話まで読めば楽しめること間違いなし!?

 今回は『ジャイロスコープ』のあらすじと感想を紹介します。

 『ジャイロスコープ』のあらすじと感想

1. 『浜田青年ホントスカ』

 家出をした浜田青年が、稲垣という相談屋の助手として働くことに。メリットは三つ。宿泊場所の確保、食事代、他人の相談を聞けること。ただし、デメリットも。携帯電話が使えない、外出できない、などなど。その理由は…。

 最後に大どんでん返しがある物語。オチで驚くこと間違いなし!?

2. 『ギア』

 数ヶ月の間に一つの町が消えてしまった!?その町から逃げるようにワゴンに乗り合わせた9人が「セミンゴ」という架空の節足動物について語る物語。

 とてもシュールな物語です。伊坂さんのチャレンジ精神に驚かされます。

3. 『二月上旬から三月上旬』

 小学生の頃、学校で友達ができなかった慈郎は、コンビニの駐車場で偶然出会った坂本ジョンという名の少年と友達に。その付き合いは大人になってからも続くのですが、他人からは坂本の姿が見えないことが。坂本は実在する人物なのか!?

 少し難解な物語。2回読むと全体の構成が見えて面白くなります。

4. 『if』

 「あのとき、ああしていれば…」。バスジャックされたバスに乗り合わせた山本は、犯人の言いなりになって人質の女性を見捨てます。そんな不甲斐ない自分に自己嫌悪していた山本に挽回のチャンスが!?

 後悔しないように行動していこうと思える物語です。

5. 『一人では無理がある』

 夫が入院している間にストーカーに付け回されるようになった梨央。ストーカーは、彼女の個人情報を入手し、自宅に侵入すると連絡してきました。梨央は、ストーカーから子どもたちを守れるのか!?

 サンタクロースとストーカーの話がリンクするユニークな物語です。オチでにやけること間違いなし!?

6. 『彗星さんたち』

 子どもを養うために新幹線の車内清掃をしている二村。そんな彼女が乗客たちとの出会いを通じて、危篤状態の先輩の人生を垣間見るという不思議なお話。

 「見る人は見ている」という言葉が実感を伴って心に入ってくる物語。世の中には大変な状況でも頑張っている人が大勢いるんだなぁ、私も頑張らないと!と思えるお話でした。

7. 『後ろの声がうるさい』

 新幹線の後部座席に座っている中年男性の隣に、記者を名乗る人物が押しかけてきます。彼は女優の不倫騒動を追いかけていると言うのですが…。

 これまでの物語で登場した人物たちが再登場。オチで泣けます。

 最後に

 小説『ジャイロスコープ』は、伊坂さんのチャレンジ精神が満載の短編集です。そのため、読み始めてしばらくは戸惑うかもしれませんが、最後はニヤけること間違いなし!?

 気になった方はぜひ読んでみてください。

 関連記事

「退屈」こそが人生を切り開く/冲方丁『天地明察』

 好きでもない仕事に「のめり込む」のはリスクが高い。なぜなら、自分のミッションに気付く前に、目の前にある仕事に満足してしまう可能性があるからだ。もし、目の前にある仕事がどうしても好きになれないのなら――その仕事に打ち込む …

ろくでもない男しか登場しない恋愛小説『恋のゴンドラ』

 この小説に登場する男性が一般的だとすると、多くの女性は男性に失望するのではないでしょうか。なぜなら、ろくでもない男しか登場しないからです。 女性の気持ちを察して行動するのでモテるが、隙あらば浮気しようとする男 女性の気 …

家族とは何か/森見登美彦『有頂天家族』

 「家族」ってなんだろう。血がつながった人たちの集まりのことだろうか。それとも、一緒に暮らしている人たちのことだろうか。あるいは、愛し合っている人たちの集まりのことだろうか。  たぶん、どれも正しくて、どれも間違っている …

『あさひなぐ』は薙刀に全てを捧げる女子高生に励まされる漫画

(※『あさひなぐ 1』表紙より)  ビッグコミックスピリッツに連載中の漫画『あさひなぐ』。薙刀というマイナーなスポーツにすべてを捧げて取り組む女子高生の姿に励まされること間違いなし!?の漫画です。  今回は『あさひなぐ』 …

正しい一発逆転のやり方/阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』

 「こんなはずじゃなかった…」と、大人になった自分に幻滅している人たちも多いだろう。私もそのひとりだ。子どもの頃に思い描いていた「大人になった自分」は、もっと夢や希望で溢れていた。憧れの職業につき、大きな家に住み、奥さん …

『All You Need Is Kill』は物語の世界観に浸れるオススメのSF漫画

(※『All You Need Is Kill 1巻』より)  ライトノベルがハリウッド映画化されて話題になったこの作品。以前から気になっていたのですが、昨日ようやく漫画版を読みました。  感想は「想像していたよりも面白 …

『3月のライオン』は悩みに立ち向かう主人公たちに心動かされる漫画

(※『3月のライオン 1』表紙より)  ヤングアニマルで連載中の漫画『3月のライオン』。将棋を舞台に、自分の課題に真正面から取り組む登場人物たちに心動かされること間違いなしの漫画です。  今回は『3月のライオン』のあらす …

『グラスホッパー』は誰もが闇を抱えている事実に気づける小説

(※『グラスホッパー』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』。  殺し屋である鯨や蝉、そして復讐者である鈴木が主人公の物語ですが、たとえ殺し屋であっても闇を抱えていることがわかる小説です。彼らは自分の闇とど …

辞める勇気をくれる小説『ちょっと今から仕事やめてくる』

 昨年、電通の新入社員が過労自殺した事件が話題になりましたよね。この事件をキッカケに電通のブラック企業っぷりが次々と明かされていますが、この事件に限らず、仕事が原因で自殺をする人が後を絶ちません。  では、なぜ彼らは自殺 …

私たちは「いつかは必ず死ぬ」/伊坂幸太郎『死神の精度』

 私たち人間には、不快に感じる出来事があっても、最後に楽しい出来事があれば、その楽しさを優先的に思いだす性質がある。同様に、どれだけ楽しい出来事があっても、最後に悲しい出来事で終われば悲しさを思いだす。これが、心理学でい …