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(※『愚者のエンドロール』表紙より)


 米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。『氷菓』に続く古典部シリーズで、前作よりもミステリー要素が濃い作品です。

 前作『氷菓』の紹介はこちら

 今回は、ミステリーの謎に迫るミステリー小説『愚者のエンドロール』のあらすじと感想を紹介します。

 『愚者のエンドロール』のあらすじと感想

〇 『アバンタイトル』

 チャットで何やら意味深なやり取りが。まゆこと名乗る人物が何らかの問題を起こし、その問題を解決するため、折木たち古典部を巻き込む計画が語られる!?

一 『試写会に行こう!』

 二年F組が製作したビデオ映画の試写会に参加することになった古典部の4人組。映画の内容は楢窪地区と呼ばれる山奥で撮影されたミステリーでした。

 しかし、登場人物の一人が殺害されたシーンで映像が終了。脚本家である真由子が神経性の胃炎、精神的に鬱状態になったため、犯人もトリックもわからず、続きが撮影できなくなっていたのです。

 そこで、折木たち古典部にその矛先が。彼らに謎が解けるのか!?

二 『古丘廃村殺人事件』

 助監督の江原にインタビューすることになった古典部。彼の話によると、殺害現場は密室で、窓から犯人が出入りしたのではないか?ということでした。

 しかし、犯人の心理を考えるとその推理は不可能。一体どのようなトリックが使われたのか!?

 ミステリー好きにはたまらない密室殺人事件。トリックが気になります。

三 『不可視の侵入』

 次にインタビューすることになったのはミステリー好きの小道具班・羽場。彼の話によると、外部からの操作で密室を作ること、被害者自身が密室を作るのは不可能ということでした。

 残された可能性は二階から窓を経由して侵入するルートのみ。しかし、これも折木の推理で不可能が証明される!?

 密室トリックの選択肢がどんどん狭まっていく物語。他の可能性は?と推理しながら読むとさらに面白くなります。

四 『Bloody Beast』

 三人目にインタビューしたのは、広報班の沢木口。彼女の推理は、ミステリーという名のホラー映画に仕上げようとしていたのでは?というものでした。

 しかし、この推理にも矛盾が。折木たちはこの謎を解き明かすことができるのか!?

 「別にいいじゃない、鍵くらい」と、密室殺人事件の醍醐味を全否定するセリフが飛び出す物語。ミステリーの大前提を否定する切り口が面白い物語でした。

五 『味でしょう』

 先輩方三人の推理を否定した折木は、依頼人である入須から改めてビデオ映画の謎を解き明かして欲しいと要請されます。取り組むべきかどうか悩んでいた折木でしたが、入須の言葉に促されて――。

 人にはそれぞれ適材適所があることに改めて気づかされる物語。背伸びせずに自分の良さを伸ばそうと思えます。

六 『万人の死角』

 ついに折木が犯人とトリックを解明。ここまでの内容から推理できるように構成されていますが、意外な人物が犯人でした。

七 『打ち上げには行かない』

 謎を解いた折木でしたが、古典部メンバーの反応はイマイチでした。それは、真由子の意図した結末とは異なる結末を迎えたから。

 そもそも、真由子はなぜ他のメンバーに犯人とトリックを話さなかったのか。折木がその謎に迫る!?

 前作同様、最後にどんでん返しが。意外な結末に驚くこと間違いなし!?

八 『エンドロール』

 『アバンタイトル』と同様にチャットでのやり取りが描かれます。古典部を巻き込んだ張本人が明らかに!?

 最後に

 小説『愚者のエンドロール』は、密室の謎をさまざまな角度から検証し、選択肢を一つずつ消していく過程が面白いミステリーです。まさに、ミステリーの謎に迫るミステリー小説。

 気になった方はぜひ読んでみてください。

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