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(※『グラスホッパー』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』。

 殺し屋である鯨や蝉、そして復讐者である鈴木が主人公の物語ですが、たとえ殺し屋であっても闇を抱えていることがわかる小説です。彼らは自分の闇とどのように向き合っていくのか!?

 今回は、『グラスホッパー』のあらすじと感想を紹介します。

 『グラスホッパー』のあらすじと感想

妻をクルマで轢き殺された鈴木の物語

 薬物、暴力、人殺し、臓器売買…。何をしても罰せられない会社・フロライン。その社長の馬鹿息子に妻を轢き殺された鈴木は、フロラインに潜り込み復讐の機会を伺います。しかし、幹部社員から疑いをかけられ、見ず知らずの若いカップルを殺せと脅されることに。

 その立会人として現れたのは、妻の仇である馬鹿息子でした。ところが、馬鹿息子は鈴木の目の前で「押し屋」という謎の殺し屋に殺害されます。鈴木が押し屋を追いかける!?

人を自殺に追い込む殺し屋・鯨の物語

 人を自殺に追い込む仕事をしている鯨は、半年ほど前から目眩を感じるようになりました。その時は決まって、これまで自殺に追い込んできた亡霊たちが鯨に語りかけてきます。

 どうすれば亡霊たちから解放されるのか――そう悩んでいた鯨に、元カウンセラーのホームレスから「押し屋と対決」することを提案されます。鯨は過去に負けたことがある押し屋に今度こそ勝てるのか!?

雇われて人殺しをしている蝉の物語

 雇われて人殺しをしている蝉は、鯨を殺して欲しいという依頼を斡旋されます。しかし、その途中で道草を食い、依頼者であるはずの政治家が殺されてしまいました。

 以前から斡旋者の言いなりになっている自分に嫌悪感を抱いていた蝉は、たまたま耳にした押し屋の話を利用して名を上げようとします。蝉が押し屋を殺すのか!?

 最後に

 人殺しを仕事にしている鯨は、犯してきた罪の重さに耐えきれず幻覚を抱くようになり、蝉は上司の言いなりになっている自分に嫌気がさし、何事も「大丈夫だろう」と高をくくっていた鈴木は、そのせいで痛い目にあう…。

 登場人物の誰もが何らかの悩みを抱えており、どこかで死にたいと感じています。しかし、小説家やミュージシャン、妻の言葉を頼りに毎日を頑張って生きている――。心の闇を照らすのは誰かの励ましの言葉なのかもしれませんね。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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