ひどくてツライ、重くてしんどい…。そんな状況に追い込まれたこと、ありませんか?
私はそんな状況に追い込まれたとき、なんとか抜け出そうと必死にもがき苦しんできましたが…。
伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』を読んで、流れに身を任せるのもありかな?と思うようになりました。
想像を絶するような状況に追い込まれた主人公が、流れに身を任せながらも強くなっていく姿に惹きつけられる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 恐ろしい目に遭っても主人公が奮闘する物語が好きな人
- 複数の視点で語られる物語が好きな人
- 最後にどんでん返しが用意されている物語が好きな人
- 伊坂幸太郎さんの小説が好きな人
あらすじ:遊び感覚で妻を轢き殺された元教師が主人公の物語
物語の主人公は元教師の鈴木。彼の妻はフロラインという会社の社長のバカ息子に遊び感覚で轢き殺されました。
ところが、そのバカ息子は何の罪にも問われませんでした。
なぜなら、フロラインは、薬物、暴力、人殺し、臓器売買など、あらゆる悪事に手を染めていましたが、政治家たちと繋がりがあったので何をしても罰せられない会社だったのです。
そこで鈴木は教師を辞め、復讐のためにフロラインに潜り込みますが、すぐに比与子という上司に疑われ、「拉致した若者を殺して仲間であることを証明しろ」と脅されます。
そんな最悪の状況に追い込まれた鈴木に幸運が訪れました。目の前であのバカ息子が車に轢かれて死んだのです。
「押し屋」という殺し屋がバカ息子の背中を押したからでしたが…。
なぜか鈴木は目的を果たしたのに、比与子の命令に従って押し屋を追いかけるんですよね。
それは直前に殺せと脅された若者たちを救うためでもありましたが、鈴木は逃げずに流れに身を任せました。
その結果…。
流れに身を任せながら出来る限りの行動を起こせば強くなれる
鈴木はどんどん強くなっていきます。
とはいえ、鈴木は殺し屋である押し屋の家に「家庭教師です」と嘘をついて乗り込んだり、
比与子に「バカ息子が息を吹き返した」と騙されて拉致されたり、
蝉という若い殺し屋に「押し屋のところに連れていけ」と脅されたりと、次から次へと恐ろしい出来事に巻き込まれていきました。
しかし、それでも鈴木は、自分にできる最大限の行動を起こして、これらの理不尽に立ち向かっていくんですよね。
そんな鈴木の姿を見ていると、理不尽な目にあったときは、流れに身を任せながらも、自分にできることをひとつひとつやっていくことが大切なのではないか…と思えてきます。
さて、物語としては、鈴木の他に、先ほども紹介した「蝉」という若い殺し屋と、「鯨」と呼ばれる自殺に追い込むのが得意な巨漢の殺し屋が登場し、彼ら3人の視点で物語が描かれていきます。
彼らはそれぞれ別の目的で押し屋と接触しようとしていました。
鈴木は比与子に拉致された若者を救うために、蝉は殺し屋としての名をあげるために、鯨は過去の敗北を清算するために押し屋を目指します。
一方で、押し屋と呼ばれる槿(あさがお)にもある狙いがありました。その狙いとは…。
ラストですべてを覆す衝撃の事実が明かされる
この続きは実際に読んでもらうとして、物語のラストで衝撃の事実が明かされます。
その事実とは、
列車が通り抜けていくのを、鈴木はじっと眺めながら、「それにしてもこの列車、長くないか」と、亡き妻に向かってこっそりと言う。
回送電車は、まだ通過している。
実はこれ。これまでの物語が鈴木の幻覚かもしれないことを示唆しています。
それを物語っているのが、鯨とホームレスの会話です。
「兆候はあるんですよ、幻覚のしるしは。例えば、街で立っている時に、目の前の信号の点滅がちっとも止まらなかったり、歩いても歩いても階段が終わらなかったり。駅にいる時も、通過する列車がいつまで経っても通り過ぎない、とか、この列車ずいぶん長いなあ、なんて思ったら、まずい兆候ですよ。そういうのは全部、幻覚の証拠です。信号や列車は、幻覚のきっかけになりやすいんです。信号はたいがい見始めの契機で、列車は目覚めの合図だったりします」
つまり、物語のどこまでが現実で、どこからが鈴木の幻想なのかわからなくなるんですよね。
他にも驚くような仕掛けが用意されているので、最後まで楽しめる小説です。
まとめ
今回は、理不尽な目に遭ったときは流れに身を任せるのもありかな?と思える伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』を紹介してきました。
殺し屋が多数登場するので少し暗めの物語ですが、驚くような仕掛けが用意されているので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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