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 ひどくてツライ、重くてしんどい。そんな状況に追い込まれたことありませんか?

・必死になって仕事をしても上司から怒られる
・家族から理不尽に責められる
・義理の両親からいろいろ口出しされる

 などなど。

 そんなとき、どうしても逃げ出したくなりますが、流れに身を任せてみるのもひとつの方法かもしれません。伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』を読んで、そう思うようになりなした。

 理不尽な目にあっても流れに身を任せてみるのもひとつの方法?

 薬物、暴力、人殺し、臓器売買など、何をしても罰せられない会社・フロライン。

 そんな怖ろしい会社のバカ息子に妻をひき殺された鈴木は、教師を辞め、復讐のためにフロラインに潜り込みました。しかし、幹部社員の比与子に疑われ、「人殺しをしろ」と逆に脅されることに。

 そんな最悪の状況に追い込まれた鈴木に幸運が起こります。目の前でバカ息子が車に轢かれて死んだのです。「押し屋」という名の殺し屋がバカ息子の背中を押したからでした。

 これで妻の仇がとれた鈴木でしたが、なぜか比与子の命令に従って押し屋を追いかけていきます。鈴木は逃げずに流れに身を任せるんですよね。

 その結果…。

 流れに身を任せて理不尽に立ち向かっていけば強くなれる

 鈴木はどんどん強くなっていきました。押し屋の家に「家庭教師です」と嘘をついて乗り込んだり、殺し屋に脅されても「彼らを撃たないでくれ」と交渉したりと、最悪な状況でも怯えているだけではありません。

 自分にできる最大限の行動を起こして理不尽に立ち向かっていきます。

 そんな鈴木の姿をみていると、理不尽な目にあったときは、流れに身を任せながら、自分に出来ることをひとつひとつやっていくことが大切だと思えてくるんですよね。

 鈴木の頑張りに励まされる物語です。

 鈴木に興味が向いてしまう物語

 そんな鈴木の頑張りに励まされる一方で、物語としては、最後にどんでん返しが待っています。これまで鈴木が経験してきたことは、実は幻覚かもしれないと思わせるシーンが用意されているんですよね。

 では、どこまでが幻覚で、どこまでが現実だったのか。それが気になってすぐに再読したくなります。

 多くの殺し屋が登場するのに、最初から最後まで鈴木に興味が向いてしまう物語です。

 ◆

 伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』。読めば、理不尽な目にあっても自分にできる最大限の行動を起こそうと思える物語です。気になった方は、ぜひ。

 ※他の殺し屋シリーズもおすすめです。

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