学校が有意義になるかどうかは先生次第だと思いませんか?
私はそう思います。化学のテストでいちばんを取っても、授業態度が気に入らないという理由で5段階評価で「4」をつけられたり、
怪我をしたのに体育教師にプールに入れと迫られたり、不良びいきの音楽教師に中学まで満点だった歌のテストで酷い点数をつけられたりと、先生の匙加減ひとつでなんとでも評価が変わるからです。
学校はある意味では、先生の支配下に置かれているんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 最後に驚きがあるミステリーが好きな人
- 高校時代の懐かしい雰囲気を味わいたい人
- 学校の先生の正体が知りたい人
- 辻堂ゆめさんの小説が好きな人
あらすじ:監禁された英語教師を救うことになった高校生の物語
物語の主人公は、卒業を三日後に控えた高校三年生の黒川良樹。
彼は大人が身勝手なルールを決め、無力な生徒はそれに従うしかない「学校」という空間に気持ち悪さを感じていました。
特に彼が通う欅台高校は、理事長が「一人一人に居場所を」という理念のもと、
「三年間の高校生活で一番悔しかったことを書け」
といった告白カードなるものを書くことを強要され、本当のことを書いても、何も書かなくても理事長と面談することになるので、余計に学校がイヤになっていたのです。
何も改善する気がないのに、メンツにこだわる理事長に嫌気がさしていたんですよね。
そこで黒川は、不良と付き合うようになりましたが、不良グループは学校以上に狭い空間で、無意味なルールで縛られていることに気づき、失望しました。
そんな彼に手を差し伸べてくれたのが、新任教師の伊藤倫太郎です。
伊藤は自分が担当する数学だけでなく、他の先生にも頭を下げて補講をしてもらえるようにお願いするなど、黒川が卒業できるように手を尽くしてくれました。
そのおかげで何とか卒業できるようになった黒川でしたが、卒業三日前に彼宛に謎の手紙が届きます。
内容は、「英語教師である水口里沙子を監禁したので、誘拐の謎を解け、真相は君たちにしかわからない」というものでした。
そこで黒川は、指定された体育館裏に行ったところ、サッカー部だった荻生田隼平、学年一の美女である小松澪、学年一の才女である高畑あやねたちと出会い、同じ手紙を受け取っていたことを知ります。
ところが、彼らには共通点がなく、誘拐された水口里沙子とも特にこれといった関係がありませんでした。
なぜ彼らは集められたのか、犯人の目的は一体何なのか?といったミステリーが楽しめる小説です。
学校の先生はいつでもパワハラできる!?
あらすじでも紹介したように、黒川たち四人が水口を誘拐した犯人を探すことになりましたが、彼らは学校の先生が怪しいと睨んでいました。
なぜなら、彼ら四人の名前と住所を把握できる立場にある人間は限られていたからです。
そこで信頼できる伊藤先生を仲間に引き入れた黒川たちは、生徒受けのいい水口が他の先生から嫌われていたことを知り、先生の誰かが犯人だと確信します。
水口は、休みの少ない運動部の顧問を拒否したり、職員会議や学年会議に遅刻したり、それで他の教師に嫌味を言われると管理職に告げ口をしたりとやりたい放題だったからです。
しかも、そうやって定時で帰っては、複数の男性と飲み歩くような毎日を過ごしていたんですよね。
だからこそ、水口は他の先生から嫌われていたわけですが、実は他の先生も生徒にパワハラをするなど、酷いものでした。
音楽教師である宇野は、女生徒に手を出すだけでなく、デート内容をSNSにアップして相手の女生徒をバカにしたり、
体育教師の野上と家庭科教師の緒方は、自分の保身のために生徒が起こした傷害事件をうやむやにしたり、
誘拐された水口も、テストの不正にまで手を染めていたのです。
このように学校の先生はパワハラし放題の境遇にいることがわかる物語なんですよね。
そのため、誘拐犯は本当に先生の中にいるのか?という疑問が浮かび上がってくるので、最後まで誰が犯人なのか気になって仕方ありませんでした。
生徒想いの先生がいれば学校は有意義になる
パワハラをするようなおかしな先生がいる一方で、黒川のために奔走してくれた伊藤のような優しい先生もいます。
実は、黒川の両親も高校の先生でしたが、ある事件をきっかけに、黒川は両親のことを信じられなくなりました。
こうして黒川は、学校の先生のことを嫌いになったわけですが、水口の誘拐事件をきっかけにある真相にたどり着くんですよね。
その真相については、実際に本書を読んでもらうとして、先生の影響で学校が有意義にも、無駄にもなることがよくわかる物語です。
まとめ
今回は、学校が有意義になるかどうかは先生次第だとわかる辻堂ゆめさんの小説『卒業タイムリミット』を紹介してきました。
もちろん、それだけでなく、最後に驚きが待ち受けているミステリーとしても、高校時代の懐かしい気持ちが蘇る物語としても楽しめる小説なので、
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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