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 モラトリアムから抜け出せていますか?

 もし、「友人と過ごす時間がいちばん楽しい」と感じているようなら、子どもから大人に移行する橋渡し期間(=モラトリアム)から抜け出せていない証拠。今すぐ考え方や行動を変えたほうがいいかもしれません。

 東野圭吾さんの小説『卒業』を読めば、今すぐモラトリアムから抜け出したくなりますよ。

 加賀恭一郎が初登場

 物語の主人公は大学卒業を間近に控えた加賀恭一郎。

 『眠りの森』や『麒麟の翼』、『祈りの幕が下りる時』へと続いていく加賀恭一郎シリーズ第一弾の本作は、刑事になる前の加賀恭一郎が描かれています。

 もちろん、加賀恭一郎らしさは健在です。大学生にも関わらず、するどい推理で事件の本質に迫ります。

 とはいえ、所詮は大学生。他の大学生と同じように仲の良い同級生たちと喫茶店で会話をしたり、バーでお酒を飲むなど、楽しい時間を過ごしていました。

 しかし、ある日。同級生の祥子が寮で手首を切って死にます。はじめは自殺と思われましたが、その後の調べで他殺の可能性が。

 この謎に加賀恭一郎が立ち向かうのですが…。

 「雪月花之式」を用いた斬新なトリック殺人

 祥子に引き続き、もう一人の友人・波香まで死にます。

 しかも彼女は、茶道の「雪月花之式」というくじ引きゲームをしているときに、お茶に毒を入れられて殺されました。

 「雪月花之式」とは、お茶を飲む人や菓子を食べる人、次のお茶の準備をする人を毎回クジで決めるゲームのこと。特定の人を狙ってクジを引かせるのは不可能なはずです。

 しかも、その場にいたのは恭一郎の知り合いばかりでした。

 だからこそ、まわりの人たちは、友人との関係が壊れてしまうので、恭一郎が事件の謎に迫ることをとめるのですが…。

 自分の信念を貫いてモラトリアムから抜け出す加賀恭一郎

「本当の友情とは馴れ合うことではなく、それぞれが信じた道を進むことに拍車をかける関係のことだ」

 と、恭一郎は自らの信念を貫きます。つまり、彼はモラトリアムから抜け出そうとしていたんですよね。

 同種・同族の友人といると安心しますよね。たとえば、自分もまわりも結婚していなければ、「みんな結婚していないから、私もまだいいか…」と考えてしまいがちです。

 しかし、安心したところで本質的な問題は何も解決しません。むしろ危機感を鈍らせるだけです。

 そんな学生気分から大人への道を歩みだした加賀恭一郎を描いた小説が東野圭吾さんの『卒業』。今すぐモラトリアムから抜け出したくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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