webstation plus

graduation_01

 30歳を過ぎているにも関わらず、「昔からの友人と過ごしている時間がいちばん楽しい」と感じているようなら、ちょっとまずい状態に陥っているかもしれない。今なお「モラトリアム継続中」の人の典型的なパターンにハマっているからだ。

 たしかに、学生時代からの友人や、同じ趣味・思考を持つ仲間が気楽で付き合いやすいのはわかるが、人間関係の中心を「友人」に置くのは思春期の特徴である。大人になると自然に変わっていくものだ。

 なぜなら、30歳を過ぎれば、仕事も「やりがい」が出てきて楽しくなり、配偶者や子どもとの時間も大切になるため、「友人と過ごす時間」よりも優先すべきことが増えるからである。

 それにも関わらず、「友人と過ごす時間が何よりも楽しい」と感じているようなら、モラトリアム――子どもから大人へと移行する橋渡し期間から抜け出せずにいる、といわれても仕方がないだろう。

 もし、そんな「おこちゃま」な状態に陥っているようなら、東野圭吾さんの小説『卒業』でも読んで、今すぐモラトリアムから抜け出そう。

 小説『卒業』は、数ヶ月後に大学を卒業して社会人へと旅立つ七人グループの物語。主人公は、『新参者』や『麒麟の翼』などで有名な加賀恭一郎である。

 加賀は、まさにモラトリアムから抜け出そうとしていた。これまで何をするのも一緒だった七人の友人たちとの関係にひびが入ることになったとしても、彼にはやるべきことがあったからだ。それは、友人のひとりである沙都子へのプロポーズである。

 彼は、沙都子にプロポーズをするために、憧れの職業だった警察官になることを断念した。なぜなら、加賀にとって「警察官」とは、家庭を不幸にするものだったからだ。

 加賀の母は、彼が幼い頃に失踪していた。その理由は定かではないが、彼は母が出て行ったことを父のせいだと考えていた。父が警察官という仕事を何よりも優先して、まったく家庭をかえりみなかったことに原因があると考えていたのである。

 だから、沙都子との結婚を意識した加賀は警察官になることを諦め、教師になることを決意する。

 また、沙都子にプロポーズをすることで、これまで仲のよかった友人たちとの関係がギクシャクすることになるかもしれないが、それでも彼は沙都子にプロポーズをすることにした。なぜなら、それが自分の進むべき道だからだ。こうして、加賀は仕事と結婚という人生における重要な決断を下し、「モラトリアムからの卒業」を早々と実現したのである。

 その後も、友人たちとの友情が壊れてしまうような事件が次々と起こってくるが、「本当の友情とは馴れ合うことではなく、それぞれが信じた道を進むことに拍車をかける関係のことだ」という信念のもと加賀は自分の信じた道を進み続ける。そうすることで、彼は大人への一歩を踏み出したのである。

 ◆◆◆

 さて、30歳を過ぎてもモラトリアムから抜け出せていない人たちの多くは、同種・同属の友人たちと馴れ合うことで安心しきっている。30歳を過ぎても結婚しない友人たちに囲まれ、「みんな結婚していないから、私もまだいいか…」などと現実逃避をしている。

 たしかに、同じような仲間がいれば、現状に対する自己肯定ができるだろう。不安や焦燥感も軽くなるに違いない。しかし、本質的な問題は何ひとつ解決していない。危機感を鈍らせてはいけないのだ。

 そもそも、大人になってからの友情とは、ストレス発散のための馴れ合いではなく、そこで培われている関係が、5年後の自分にワクワクした喜びを与えてくれるような関係でなければいけない。やるべきことに対して、自分の行動に拍車をかける働きをもたらしてくれる関係でなければいけない。

 もし、そうした関係が友人と築けていないようであれば、本当の「友情」とは何かを真剣に考えてみる機会が必要になるだろう。そのひとつのキッカケとして、小説『卒業』を読むのは悪くない選択肢だと思う。

 関連記事

「子供のままでいること」をオシャレだと思っていませんか?

 クール・ジャパンという言葉が3年ほど前から使われるようになり、日本独自の文化を世界中に発信しようという流れが広がっています。なかでも「KAWAii文化」が世界中から注目されていますよね。  その代表と言われているのが、 …

東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方

 最近、年度末ということもあり、来年度にやる仕事内容を整理しているのですが、「考える力が足りていない!」と上司から叱られています。  とはいえ、私としては精一杯考えているつもり。このギャップを埋めるにはどうすればいいの? …

よくわからない体調不良は「首凝り」が原因/『副交感神経アップで健康になれる!』

 原因がよくわからない体調不良のほとんどが、自律神経の不調によるものだといわれている。自律神経とは、自分の意思ではコントロールできない体の動きをつかさどるもの。具体的には、血液の循環を速めたり、遅らせたり、息を吸ったり、 …

「早起き」に挫折した人がとるべきたった一つの行動

 「早起きした方がいいですよ!」と主張している本には、大抵「夕方以降にカフェインを取ってはいけません。寝つきが悪くなるからね」と書かれています。しかし、私は寝る直前にコーヒーを飲んでも、一瞬で深い眠りにつけるんですよね。 …

「痩せられない」&「時間がない」人にオススメの処方箋

 「痩せたいのに痩せられない」「忙しすぎて自分の時間がまったくもてない」という悩みを抱えていませんか?しかし、これらを改善しようと思っても、なかなか思うようにはいきませんよね。それは、私たちの想定外のところに原因があるか …

天才アーティストに共通する「表現力」とは

 レオナルド・ダ・ヴィンチであれ、ココ・シャネルであれ、スティーブ・ジョブズであれ、天才と呼ばれるアーティストには、ある共通点がある。それは、「シンプル(=単純)に表現する」ということだ。  たとえば、シャネル。彼女は帽 …

「運が良い人たち」は見向きもせず、「運が悪い人たち」が共通して求めているものとは?

 私たちは、誰一人として同じ脳を持っていません。  両親の遺伝子の掛け合わせによって生じる存在としての個性があり、さらに、人生最初の三年間に与えられた環境によって、脳の神経回路に偏りが生じるからです。  ここでいう脳の神 …

年を取ると時間が経つのが速いと感じるのはなぜ?3つの仮説で考察

 大人になってから、あっという間に一日が過ぎていきませんか。朝起きて仕事をはじめたと思ったら、すぐにお昼ご飯。その後も、会議に出たり、電話をしたり、パソコンに向かっているだけで、気づいたときにはすでに夜。あとは、家に帰っ …

「片付けられない人」にオススメの3つの習慣

 どれだけ忙しくても、きちんとしている人いますよね。  普段からキリッとした服装をして、行動もテキパキ。家の中もキレイに片付いていてスタイリッシュ。そんな人になりたいと思いませんか?  「無意識の美意識」さえ押さえてしま …

「お腹痩せ」には過剰な食事制限や運動など不要/『腹だけ痩せる技術』

 これからダイエットしようと思っているのなら、お腹だけがぽっこりしているかどうか確認してほしい。もし、お腹だけがぽっこりしていて、あとはそれほど太っていないようなら、過剰な食事制限や運動などしなくても簡単に痩せられる可能 …