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 どれだけの人に信頼されて生きていますか?

 私は、家族には信頼されていると思いますが、それ以外の人たちにはどのように思われているかわかりません。結構、いい加減なところがあるからです。

 そのため、伊坂幸太郎さんの小説『ゴールデンスランバー』を読んで反省したんですよね。もう少し誠実に生きようと心から思いました。

 首相を暗殺した犯人として濡れ衣を着せられた主人公

 では、あらすじから。

 物語の主人公は宅配便の配達ドライバーをしていた青柳雅春。彼は数年前に当時トップアイドルだった凛香を暴漢から救った英雄としてマスコミに取り上げられていましたが…。

 どれだけマスコミや世間から持ち上げられても、彼は調子に乗ることなく宅配ドライバーとしての仕事を坦々と続けていました。とても真面目で誠実な人間だったのです。

 しかし、そんな彼を貶めようとする事件が多発します。痴漢の冤罪で捕まりそうになったり、今では首相殺しの犯人として追いかけられていました。それだけでなく…。

 森田という学生時代の友人を殺した罪まで着せられるんですよね。

 首相がパレード中にラジコンヘリに積まれた爆弾で暗殺されたちょうどその頃、青柳は森田と再会していました。

 このとき、森田は青柳の元彼女である樋口が結婚したことを告げます。樋口は、青柳のことが嫌いになったわけではなく、「よくできました」くらいの人生になるのが嫌で彼と別れることにしました。

 樋口は「たいへんよくできました」と評価される人生を求めていたんですよね。

 そんな樋口との記憶に思いを馳せていた青柳でしたが、森田の言葉で目が覚めます。青柳は森田に薬を飲まされ、眠らされていたのです。

 さらに、森田は今すぐ逃げろと言い出します。森田は家族を人質に取られていたので、警察の指示に逆らうことができませんでしたが、最後に命をかけて彼を救うことにしたのです。

 森田に言われるがままに訳もわからず逃亡生活を始めた青柳ですが、彼が森田の車から降りて逃げようとすると、すぐに警察官が追いかけてきて発砲してきました。

 それだけでなく、森田が銃殺され、車が爆発するんですよね。

 こうして、森田殺しの罪まできせられた青柳でしたが、そんな彼の逃亡を手助けしてくれる人たちがいました。その人物とは…。

 元彼女や元同僚、連続殺人犯たちが青柳の逃亡を手助けする

 元彼女の樋口や宅配ドライバー時代の同僚である岩崎、さらには連続殺人犯のキルオまでもが彼の逃亡を手助けします。

 樋口が青柳の無実に気づいたのは、テレビで報道されている内容に疑問を持ったからでした。

 青柳は痴漢を何よりも許せない性格で、またご飯粒を残すような食べ方をしたことがありませんでしたが、テレビでは真逆の報道がされていました。そこで、樋口は青柳が濡れ衣を着せられていることに気づくんですよね。

 とはいえ、樋口の行動も監視されていました。そこで彼女は、青柳との思い出を頼りに、彼と接触することなく手助けする方法を考えます。

 また、連続殺人犯のキルオは、警察に追われているもの同士として、青柳に興味をもって接触してきましたが…。

 青柳は連続殺人犯であるキルオのことを無条件で信頼するんですよね。だからこそ、キルオは命がけで彼を助けることにしたのです。

 それだけでなく、裏社会とつながりのある人物までもが青柳の手助けに一役買ってくれます。

 そんな青柳の姿をみていると…。

 人間の最大の武器は信頼と習慣

 人間の最大の武器は信頼と習慣だと思えてくるんですよね。

 どれだけマスコミや世間から持ち上げられても、調子に乗ることなく自分の習慣を大切にし、また相手が連続殺人犯や裏社会とつながっている人間であっても、無条件で信頼する青柳だからこそ、多くの人たちが彼の逃亡を手助けしたのだと思います。

 さて、物語としては、これまで逃亡生活を続けてきた青柳が反撃に移ります。その反撃の仕方が想像を上回るものだったので、読んでいてドキドキ・ワクワク感がとまりませんでした。

 また、物語の終わり方が絶妙なので、読み終わったあとに顔をニヤニヤするのが止められなかったんですよね。

 とにかく、伊坂幸太郎さんの小説『ゴールデンスランバー』は、サスペンスとしても、監視社会を描いた物語としても、人間の最大の武器は信頼と習慣だと思える物語としても、楽しめる物語なので…。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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