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 「あなたが犯人だ!」とマスコミに取り上げられたとき、どれだけの人が無実だと信じてくれるでしょうか。

 私の場合は…。もっと誠実に生きないとダメですね。伊坂幸太郎さんの小説『ゴールデンスランバー』を読んでそんな思いになりました。

 マスコミは印象操作で忙しい

 芸能人のゴシップ記事などマスコミは印象操作で忙しいですよね。

 宮迫博之さんの反社会組織への闇営業が報道されたときも、松本人志さんが「知らない人から手紙を渡されて、そこにお金が入っていたらどうしようもない」とまるで関係のない話を持ち出して擁護されていましたが、こうした印象操作は様々な場面で行われています。

 もちろん、擁護するならまだしも、無実の罪を着せられた人もいますよね。

 『ゴールデンスランバー』の主人公・青柳雅春もそのひとり。彼は首相殺しの罪で指名手配されましたが、何ひとつ身に覚えがありませんでした。

 しかし、警察は用意周到でした。女性を接近させて首相殺しに使ったラジコンヘリを事前に操作するよう仕向けたり、痴漢したように見せかけたり、そっくりさんを用意したりと青柳が犯人に思えるような報道を次々と流していきます。

 『モダンタイムス』と同じように権力者によって事実は簡単に捻じ曲げられるんですよね。しかも、青柳を見つけた警察は有無を言わせず発砲してきました。

 そんなどうしようもない状況に追い込まれたときに頼りになるのは…。

 信頼してくれる人がどれだけいる?

 青柳のまわりにいる人たちでした。学生時代の友人や職場の同僚など、多くの人が彼を助けます。

 なぜなら青柳が誠実で真面目な人物だったからです。

 首相殺しの2年ほど前。青柳は強盗に入られ、襲われそうになったアイドル歌手を救い、一躍有名になりました。

 このとき、世間は彼を持ち上げましたが、青柳は調子に乗ることも、偉そうに振舞うこともなく、これまで同様に宅配業者として振る舞います。

 そんな青柳のことを多くの人が信頼していたんですよね。

 だからこそ、どれだけマスコミが騒いでも、彼の周りにいる人たちは信じなかったわけですが、では、なぜ彼このように振る舞えたのでしょうか。

 人間の最大の武器は信頼と習慣だ

 それは「人間の最大の武器は信頼と習慣だ」という信条を持っていたからです。

 どれだけマスコミに持ち上げられても、大切なのは日々の習慣だと信じていたので、調子に乗ることなく宅配業者として振る舞えました。

 また、助けてくれる人は、たとえ怪しくても信頼すると決めていたので、連続殺人犯のキルオや裏社会と繋がっている人物までもが、命がけで彼を守るんですよね。

 そんな青柳の姿を見ていると、自分の利益ばかり考えるのではなく、まずは自分から人を信頼していこうと思えてきます。

 伊坂幸太郎さんの小説『ゴールデンスランバー』は、「人間の最大の武器は信頼と習慣だ」と心から思える物語でした。

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