この世界は平和だと思っていますか?
私は幼い頃に貧乏だったので早い段階で残酷だと気づきましたが、
崔実さんの小説『ジニのパズル』を読んで改めて残酷なことを思い出しました。
大人というのは言い訳をして自分の都合の良い世界を築くことも、あわせてわかる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 在日韓国人の主人公を描いた物語に興味がある人
- この世界は残酷だという理由を知りたい人
- 日常を描いた物語が好きな人
- 大人のずるさがわかる物語に興味がある人
あらすじ:在日韓国人として東京で暮らしていた主人公の物語
物語の主人公は在日韓国人である高校生のジニ。
彼女は、東京、ハワイ州と経由して、今ではオレゴン州でホームステイをしていましたが、
学校ではまったく何もせずに過ごしていたので、退学させられそうになっていました。
彼女がこのように何もしなくなったのは、東京で暮らしてきた日々に原因がありました。
ジニは、日本生まれの韓国人で、小学校までは日本の学校に通っていましたが、
中学校からは朝鮮学校に通うことになり、そこでの暮らしがトラウマになっていたからです。
ちなみに、在日の人たちは南側の韓国学校と、北側の朝鮮学校に通うことができましたが、
韓国学校の生徒は韓国生まれの子ばかりで、朝鮮学校は、日本生まれの朝鮮籍や韓国籍を持つ子が多く通う学校だったので、
ジニは朝鮮学校に通うことになりました。
ところが、ジニは朝鮮学校に通うようになってすぐに違和感を覚えます。それは…。
教室に飾られた肖像画に違和感を覚える
朝鮮学校では日本語が禁止されていたのです。
とはいえ、ジニは韓国語がわからなかったので、授業はしばらく日本語で行われることになりました。
しかし、何よりも違和感を覚えたのは、教室に飾られていた金日成と金正恩の肖像画でした。
もちろん、他の生徒も金一家を尊敬しているわけではありませんでしたが、
終戦後に日本に残った在日朝鮮の人のために、お金を出してくれた北朝鮮に感謝の気持ちとして掲げていると言うのです。
ちなみに、終戦後、韓国側は在日への支援を断っていました。
とはいえ、北朝鮮も単に支援をすることが目的でお金を出したわけではありません。
ジニのおじいさんも北朝鮮に住んでいましたが、北朝鮮側から高額な仕送りを要求されていたのです。
そして仕送りを止めると収容所に入れられる…という恐ろしい現実がありました。
だからこそ、ジニは団体行事がとにかく多い朝鮮学校で、何のために、誰のために行進しているのかを聞かずに過ごしていたのですが…。
どの国にも異常で残酷な人たちがいる
テポドンが発射されたことで、日本人からも酷い仕打ちを受けるようになります。
そもそもは、小学生のときに同級生から「汚い手で触るな」と言われたことが始まりでした。
右翼の「朝鮮人は出ていけ!朝鮮人は国へ帰れ」という言葉に始めは怯えていたジニでしたが、
周りの同級生が誰も気にしていなかったので、そのうちに慣れて気にしなくなったところに、そんなひどい言葉を浴びせられたのです。
そしてテポドンが発射されてからは、チマチョゴリを着ていると唾をかけられたり、学校に「水道水に毒をもった」という脅迫電話が来たりしました。
ジニもチマチョゴリを着てゲームセンターに行ったところ、変な男に絡まれ、バカにされ、恥部を触られ、殴られました。
彼女は、このことを誰にも話せずに泣き寝入りするしかありませんでしたが、この世界の残酷さを少しでも変えるために、ある行動に出ます。
その行動とは…。
まとめ
この続きは実際に読んでもらうとして、崔実さんの小説『ジニのパズル』は、この世界は残酷であることに気づかせてくれる物語です。
特に、
子供相手に脅迫してくる日本人も、子供が犠牲になっても変わらぬ学校の連中も、いとも簡単に人の命を奪う金の糞独裁者も、みんなみんな、糞食らえだ。
という気持ちに共感できる物語なんですよね。
また、
講演会でだって、昔の朝鮮半島の話はしても、現在の問題を話す時には皆、韓国サイドの視点からの歴史問題ばかりだ。都合よく巧みに南と北を混ぜて話をさせて。
と、大人のずるさがわかる物語です。もちろん、話術巧みに日本の正当性だけを主張する人たちも同じです。
それだけでなく、ラストは心にグッとくる終わり方をしているので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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