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 最近、いじめの話題が多いですよね。もちろん、いじめをしている人間が100%悪いのですが、それだけでなく彼らには決定的に足りない能力があります。

 それはアイデアを生み出す力。楽しい遊びを生み出す力がないので、いじめをして自分の能力の無さを隠そうとしているんですよね。

 そんな人間の弱さを浮き彫りにした小説が伊坂幸太郎さんの『ガソリン生活』。いじめをするような情けない人間にはなりたくないと思える物語です。

 人を職業などのカテゴリーで評価してはいけない

 「芸能ゴシップ記者」と聞くと、どう思いますか。

 私は嘘つきで、スクープを取るためには他人を傷つけても平気な人物像を思い浮かべましたが、実際には芸能記者といってもいろんな人間がいます。

 たとえば、パパラッチ。ダイアナ妃は常に彼らに追いかけられてウンザリしていました。しかし、ある日。彼女がある程度写真を撮られることは受け入れるから、夜はそっとしておいてほしいと頼むと素直に聞いてくれたそうです。

 それだけでなく、ダイアナ妃に同情した彼らは、事故死を装って彼女を世間から解放したっていう噂まであるんですよね。

 このように人を職業などのカテゴリーで評価するのは雑なことですが、『ガソリン生活』に登場するゴシップ記者・玉田も雑に評価したくなる人物です。

 彼は女優の荒木翠の浮気現場を抑えようと車で彼女を追いかけ、事故死させてしまいました 。しかし、実は…。

 ひとつの行動を切りとって人を評価してはいけない

 たとえば、先ほど紹介した女優の荒木翠は、働きもせずに祖父の遺産だけで悠々自適に暮らしている丹羽氏と浮気をしていました。

 もちろん、世間からは大バッシングされましたが、彼女の浮気には理由がありました。夫からDVを受けていたのです。

 ネタバレになるので、あまり詳しくは書きませんが、妊娠をしても「妊娠を言い訳に、家事をさぼる気じゃないだろうね」なんて言われます。

 さらに体調を崩して流産すると、「自分の体調管理もできないからそういうことになるんだ」「母親になる資格がなかったんだ」なんて酷い言葉を浴びせられるんですよね。

 これでは浮気のひとつもしたくなります。ただし…。

 いじめはいじめている側が100%悪い

 いじめは別物です。どんな言い訳を並べても、いじめをしている人間が100%悪いと思います。

 なぜなら、

「ようするに、つまらねえんだろ」
「三人でいるだけじゃつまらないから、別の誰かにちょっかいを出したくなる。そういうことなんだろうな。アイデアがねえんだよ」
「自分たちだけで遊ぶアイデアだよ。楽しい遊びが思いつかねえから、同じクラスの誰それを苛めようか、なんてなっちまう。完全にネタギレだ」

 と、自分の能力のなさを誰かをいじめることで発散しているからです。

 そんな情けない人間にはなりたくないと思える物語です。

 ◆

 伊坂幸太郎さんの小説『ガソリン生活』。いじめについて真剣に考えたくなるだけでなく、クルマ同士が会話をするなどユーモア溢れる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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