webstation plus

 小説を読んでいますか?

 小説と一言でいっても、さまざまなタイプがありますが、ありきたりな設定で、伝えたいテーマも弱く、読み終わった後も、ぼんやりとしかあらすじが思い出せないのに、面白かったという印象が強く残る物語があります。

 伊坂幸太郎さんの小説『陽気なギャングが地球を回す』もそのひとつ。あらすじでは伝えきれない魅力があるんですよね。

 個性的なギャングに魅了される

 この物語に登場する4人のギャングはとても魅力的です。

 他人の嘘が見抜ける成瀬は、公務員の係長で、お金に困っていないのに銀行強盗をしていました。ギャングの中ではリーダー的存在で、物事の先の先まで見透かしており、何が起きても的確な計画を立てて行動していきます。

 口から出まかせばかり言ってる響野は、銀行強盗をするときには必ず演説をします。代償には対価が支払われなければいけないと考え、口から出まかせの演説を居合わせた人たちにプレゼントするのです。

 スリが得意な久遠は人間よりも動物を愛し、動物に人間が殺されればいいのにという少し変わった考えを持っており、正確な体内時計をもつ雪子は感情を表に出さない冷めた性格をしていますが、息子のことになると感情を爆発させます。

 そんな個性的な彼らが楽しそうに銀行強盗をする姿をみていると、こちらまで楽しい気分になれるんですよね。

 彼らの魅力にハマります。

 見事すぎる伏線の回収

 物語の冒頭に警察官のフリをする警察マニアの話が出てきます。その後、この内容には触れられずに物語は進んでいきますが、ラストでこの伏線が見事に回収されるんですよね。

 他にも、何気ない会話のなかで出てくる様々なモノ――盗聴器や使えないカメラ、特殊なクルマなどすべてが伏線。

 もちろん、ラストですべて回収されるのですが、これでもかと思うほど次々と回収されていくので、まるでジェットコースターに乗っているかのような驚きが味わえるんですよね。

 驚きを味わいたいのなら絶対に読んでおきたい物語です。

 勧善懲悪がテーマ

 この小説にはテーマと言えるほどのテーマはありませんが、あえて言うなら、他人を虐めたり、使い捨てにするような悪者が退治されていく勧善懲悪ものです。

 現実でもこの物語のように悪者が退治されるとスッキリできるんですけどね。

 とにかく、勧善懲悪の世界が描かれているので、読み終わったあとは気分がスッキリします。

 悪い言い方をすればそれだけの物語ですが、あらすじでは伝えきれない魅力があるので、読んでおいて損はしませんよ。

 関連記事

理不尽な目にあっても救いがあるかもと思える小説/伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』感想

 生きていると理不尽な出来事に遭遇することってありますよね。そんなとき、どうすることも出来なくて落ち込んでしまいがちですが、しばらく耐えれば救われるかもと思える物語があります。  それが伊坂幸太郎さんの小説『首折り男のた …

死ぬのと仕事辞めるのと難しいのはどっち?

(※『ちょっと今から仕事やめてくる』表紙より)  仕事頑張っていますか?  私も出来るだけ頑張っていますが、頑張りすぎて追い詰められ、自殺をする人が後を絶ちません。  もちろん、自殺をするまで頑張る必要はありません。逃げ …

犯人は誰!?米澤穂信『愚者のエンドロール』は探偵がいないミステリー小説

(※『愚者のエンドロール』表紙より)  米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。  前作『氷菓』に続く古典部シリーズ第2弾の本作は、2年F組の先輩たちが自主制作したミステリー映画の謎に迫る物語です。読めば驚きの結末が! …

正反対な二人だからこそ面白い!?/東野圭吾『マスカレード・ホテル』

(※『マスカレード・ホテル』表紙より)  自分とは正反対の人って嫌ですよね。  几帳面な人が片付けが出来ない人にイライラするように、頭の回転が速い人が遅い人をバカだと思うように、自己中心的な人が優しい人を優柔不断と決めつ …

離婚はイヤ!?滝口悠生『茄子の輝き』は妻を大切にしようと思える小説

(※『茄子の輝き』表紙より)  滝口悠生さんの小説『茄子の輝き』。  数年前に妻と離婚した男性があれこれ過去を振り返る物語です。読めば「妻を大切にしよう!」と思うこと間違いなし!?  今回は『茄子の輝き』のあらすじとおす …

厳しい現実に立ち向かうには人とのつながりを大切に/垣谷美雨『農ガール、農ライフ』感想

 「今の仕事がキツイから農業でも始めようかなぁ」「退職後に農業でも始められたらいいなぁ」…なんて考えていませんか。  もし、そんな甘い考えをしているようなら、垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』を読むことをおすすめし …

こだわりを持って生きている?小川洋子『人質の朗読会』は不思議なのに心に残る小説

(※『人質の朗読会』表紙より)  小川洋子さんの小説『人質の朗読会』。  地球の裏側にある村で反政府ゲリラの人質になった8名は、暇つぶしに朗読を始めますが、いつの間にか自分の過去と向き合い、真剣に朗読しあうようになりまし …

畠中恵『ぬしさまへ』は若だんなの大人になりたい想いに感動する小説

(※『ぬしさまへ』表紙より)  畠中恵さんの小説『ぬしさまへ』。  『しゃばけ』シリーズ第2弾の本作は、病弱で両親や妖怪たちから甘やかされて育った若だんなが大人になりたいと強く願う物語です。読めば自分も頑張ろうと思えるこ …

『土佐堀川』は自分の悩みがちっぽけに思える小説

(※『土佐堀川』表紙より)  古川智映子さんの小説『土佐堀川』。  NHK連続テレビ小説「あさが来た」の原作で、広岡浅子さんの生涯を描いた物語です。読めば自分の悩みがちっぽけに思えること間違いなし!?  今回は、『土佐堀 …

東野圭吾『予知夢』は科学談義が面白いミステリー小説

(※『予知夢』表紙より)  東野圭吾さんの小説『予知夢』。  警視庁捜査一課の草薙俊平が、帝都大学理工学部の准教授・湯川学とともに科学的な視点で事件を解決していくミステリー小説です。前回紹介した『探偵ガリレオ』の続編。今 …