自分の弱さが嫌になることありませんか?
私はよくあります。
上司に「休ませてください」と直接言いづらくて、メールで連絡したり、プレゼンの前日に緊張して眠れなかったり、ゲームに夢中になり過ぎて、勉強する時間がとれなかったり…。
ほんと自己嫌悪の毎日です。
そんな弱い私にそっと手を差し伸べてくれた小説が西加奈子さんの『おまじない』。
「弱くても大丈夫だよ」と繰り返し励ましてくれる物語です。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 弱い自分を励ましてくれる物語を読んでみたい人
- 言葉の力を味わってみたい人
- 優しい気持ちになれる物語が好きな人
- 西加奈子さんの小説が好きな人
あらすじ:女らしくなりたいと願う少女の物語
「女らしい」という言葉が大嫌いだったお母さん。
そんなお母さんに育てられた私は、スカートではなくズボンを穿いていました。
男の子たちと遊び、その中でもガキ大将でした。
しかし、小学五年生になると、胸が膨らみ、次第に女性らしくなっていきます。
その頃から私はスカートを穿くようになりましたが、頭のおかしい男性に性的な暴力を受けることに。
そのことを知ったお母さんは、
「ほらね!」
と私に言いました。
男を変な気持ちにさせる格好をしていた私が悪いと言うのです。
そして、スカートを燃やしてしまいました。
それから私は再びズボンを穿くようになりましたが、スカートが穿きたくて仕方ありません。
そんな思いで溢れていたとき、小学校の焼却炉で次々とモノを燃やす用務員のおじさんと出会います。
そのおじさんが私にかけてくれた言葉は、私のモヤモヤした気持ちを解き放ってくれました。
その言葉とは…。という物語が楽しめます。
そっと手を差し伸べてくれる短編集
『おまじない』は先ほど紹介した物語も含めて全8篇で構成された短編集です。
どれも私たちの弱い気持ちに優しく手を差し伸べてくれる物語なので、読んでいて勇気が湧いてくるんですよね。
なかでも私のおすすめは、『孫係』『あねご』『マタニティ』の3篇です。
それぞれ簡単に紹介していきます。
『孫係』
大学教授のおじいちゃまが私の家で1ヶ月間暮らすことになりました。
ママは大はしゃぎで、家中をピカピカにしたり、散歩コースを探したりしていましたが、私はちょっとうんざり。
ママのはしゃぎっぷりに合わせるのがしんどかったからです。
しかも、おじいちゃまとの暮らしは窮屈でした。礼儀正しいおじいちゃまに気を使って仕方がなかったからです。
しかしある日。家に誰もいないと思い、「ひとりになりたいなぁ」と呟いたことがキッカケでおじいちゃまとの関係が変わります。
おじいちゃまが私のつぶやきを聞き、「私もです」と言ったからです。
それから二人は…。
他人の気持ちに目を向けようと思える物語です。
『あねご』
浴びるようにお酒を飲んできた私。
そして多くの男性に体を開いてきた私は、大学生になっても、就職をしても、自堕落な生活を続けていました。
そんな私に転機が訪れます。会社が契約を更新してくれなかったのです。次の会社でも同じでした。
そこで私は、お酒を飲んで場を盛り上げる特技が活かせるキャバクラで働くことにします。
お店で働くようになった私は、ブサイクキャラを武器に一気飲みを繰り返しました。
そのおかげで大勢の客がついたのですが…。
弱い自分も認めていこうと思える物語です。
『マタニティ』
38歳の私は、バツイチの魅力的な男性と出会い、猛アピールの末にお付き合いすることになりました。
そして、子供ができたのですが、持ち前のマイナス思考を発揮して、不安で仕方ありません。
ネットで「思いがけない妊娠」というキーワードで検索したのも問題でした。
「無責任」「最低」「理解不能」「人殺し」「子どもがかわいそう」といった言葉が並んでいたからです。
そこで私は、子どもをおろそうかと考えますが、最低なコメンテーターの言葉を聞いて考えを改めます。
なぜなら…。
「弱くても大丈夫」と前向きな気持ちになれる物語です。
◆
というように、どの短編も誰もが抱えている弱い心に寄り添ってくれる物語です。
おじさんの言葉で主人公の女性が変わる!?
ここまでいくつかの短編を紹介してきましたが、実はこれらの短編は、すべて「おじさんの言葉」で主人公の女性が変わります。
用務員のおじさんだったり、おじいちゃまだったり、最低なコメンテーターだったりしますが、とにかく「おじさんの言葉」がキッカケで女性が変わる姿が描かれています。
そのおかげもあって、私のような「おじさん」でも物語に共感できるんですよね。
基本的には女性を励ますように描かれた物語ですが、男性が読んでも十分に楽しめます。
また、言葉には力があることを教えてくれる物語でもあります。
とはいえ、どれも特別な言葉を投げかけているわけではありません。
ほんの少し背中を押すような優しい言葉。そんな言葉だからこそ、私たちの心に突き刺さるのかもしれませんね。
まとめ
今回は、「弱くても大丈夫だよ」と繰り返し励ましてくれる西加奈子さんの小説『おまじない』を紹介してきました。
このような物語を読むと、弱い自分も少しだけ好きになれるんですよね。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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