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 世の中には悪い奴らが大勢いますよね。そんな悪い奴らに立ち向かうにはどうすればいいのでしょうか。

 もちろん、瞬間移動しかありませんよね。

 伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』は、瞬間移動という特殊能力を持った双子が、極悪非道の人間に立ち向かう姿を描いた物語です。

 内容的にはつらい話ばかりですが、最後まで読めばスッキリできますよ。

 父親に痛めつけられる双子の物語

 物語の主人公は、双子の優我と風我。彼らは幼い頃から、父親に痛めつけられて育ちました。少しでも気に入らないところがあると、気絶するまで殴られます。

 そんな彼らが小学生になると、同級生の中にも父親のような極悪人がいました。ある同級生を「ワタボコリ」と呼び、埃を食べろと命じたり、女子トイレに閉じ込めるなどのいじめを繰り返します。

 大人になっても優我と風我のまわりには極悪人がいました。

 風我の彼女は、叔父から虐待されていました。裸にされて水槽に入れられ、電気ショックを与えられたり、溺れて苦しむ姿を見せ物にされたりします。

 さらに、小学生を轢き殺すことに楽しみを覚える未成年の男が登場するなど、これでもかと思うほど極悪人が次々と登場するんですよね。

 現実でも、いじめをする人間がいるのはもちろんのこと、多くの人を殺した未成年男性が、成人してからも被害者家族を苦しめるような本を出版する極悪非道っぷりを発揮しています。

 彼らには常識がないので善良な人たちを簡単に痛めつけていきますが、そんな極悪人に優我と風我は…。

 瞬間移動という特殊能力と二人で力をあわせることで立ち向かう

 瞬間移動という特殊能力と二人で力をあわせることで立ち向かっていきます。

 優我と風我は、父親から虐待されるなど不運な星のもとに生まれましたが、二人で一人だと決め、力を合わせて立ち向かっていきました。

 たとえば、優我と風我は、暴力を振るう父親に負けても、何度も立ち向かっていきます。圧倒的な強さにいつも叩きのめされますが、それでも彼らは戦い続けました。

 それだけでなく、ワタボコリをいじめていた同級生や風我の彼女を痛めつけていた叔父などを相手に瞬間移動の能力を駆使して戦っていくんですよね。

 そんな優我たちの信条は、「父のように支配欲で他人を押さえつける人間は許さない」というもの。だから、小学生を轢き殺した未成年男性まで懲らしめようとします。

 そんな優我たちの姿をみていると、一人では無理でも、本当の仲間を見つければ、極悪人に立ち向かっていけるのかもって思えてくるんですよね。

 逆にいえば…。

 では、あなたは悪に立ち向かいますか?

 私たちが悪事に無関心でいれば、極悪非道の人間がのさばってしまうということです。

 伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』は、他の伊坂作品と同じようにラストに驚きが用意されています。悪い奴らに虐げられる登場人物たちの姿を見るのを乗り越えれば、間違いなく楽しめます。

 とはいえ、物語を楽しむだけでなく、少しまわりを見渡せば簡単に見つかる苦しんでいる人たちに、手を差し伸べようと思える物語なんですよね。

 世の中には悪いところも多くありますが、自分にできるところからでも良くしていこうと思える小説です。気になった方は、ぜひ。

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