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(※『フーガはユーガ』表紙より)


 悪い奴らって容赦がないですよね。

 ある殺人鬼は、多くの人を殺したにも関わらず、少年法に守られて反省もせずに出所。成人してからも被害者家族を苦しめるような本を出版する極悪非道っぷりです。

 それに加担する出版社があるのも驚きですが、とにかく自分の利益になるなら他人を傷つけることを厭わない人たちが大勢いるんですよね。

 悲しいけれど、これが現実。では、どうすればこのような悪い奴らに対抗できるのでしょうか。

 伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら考えてみましょう。

 『フーガはユーガ』のあらすじ

 幼い頃から父に虐待されて育ってきた優我と風我。彼ら双子の兄弟は父から殴られるだけでなく、幼稚園児のころまで夕食は毎日もらえるものだと知らないほど何も与えられませんでした。

 しかし、彼らにはある特殊能力がありました。誕生日にだけ、二時間おきに互いの場所に移動することが出来たのです。

 彼らはこの能力を駆使して支配欲が強い人間を懲らしめていきます。いじめっ子や性的な虐待をする悪い奴らを倒していったのです。

 そんな二人が成人し、彼らを捨てた母と再会するため、テレビディレクターに特殊能力の話をします。そうして、テレビに出演するチャンスを得ようとする優我でしたが――。

 最後に驚きの結末が待っている物語です。

 『フーガはユーガ』のおすすめポイント

1. 極悪非道の人間は一人でも強い

 あらすじでも紹介したように、優我と風我の父は、彼らを痛めつけていました。少しでも気に入らないところがあると、すぐに手を出します。

 優我と風我が通う小学校でも、ワタボコリと呼ばれる同級生をいじめる悪い奴がいました。彼に埃を食べろと命じたり、女子トイレに閉じ込めたりします。

 風我の彼女の叔父も虐待をしていました。彼女を裸にし、水槽に入れ、電気ショックを与えたり、溺れて苦しむ姿を見世物にしたりします。

 他にも、小学生を轢き殺すのを楽しむ未成年など、これでもかと思うほど極悪人が次々と登場するんですよね。

 彼らには常識がないので善良な人たちを簡単に痛めつけていきます。そんな悪い奴らの行動に胸が痛くなる物語です。

2. 優我と風我の仲の良さが対抗する力

 優我と風我は、暴力を振るう父に何度も立ち向かいますが、圧倒的な強さにいつも叩きのめされました。それでも彼らは戦い続けます。

 さらに、ワタボコリをいじめていた同級生や風我の彼女を痛めつけていた叔父などを相手に能力を駆使して戦っていくんですよね。

 そんな優我たちの信条は、父のように支配欲で他人を押さえつける人間は許さないというもの。だから、小学生を轢き殺した未成年まで懲らしめようとします。

 では、なぜ彼らは悪い奴らに立ち向かえたのでしょうか。

 それは一人ではなかったからです。彼らは不運な星のもとに生まれましたが、二人で一人だと決め、力を合わせることで悪い奴らに立ち向かっていきました。

 そんな彼らの姿をみていると、一人では無理でも、本当の仲間を見つければ悪い奴らと戦えるかもしれないと思えるんですよね。

 優我と風我の戦いに励まされる物語です。

3. 信頼できる仲間がいれば不運も乗り越えられるがテーマ

 ここまで紹介してきたように、これでもかと思うほど極悪人が出てきますが、信頼できる仲間がいればどんな不運も乗り越えられるがテーマの物語なので最後にはスッキリできます。

 それだけでなく、他の伊坂作品と同様にラストには驚きが待っているので、途中のツラさ――悪い奴らに虐げられる登場人物たちの姿を見るのを乗り越えれば、間違いなく楽しめます。

 伊坂さんの初期の作品『オーデュボーンの祈り』や『重力ピエロ』、『アヒルと鴨のコインロッカー』などを彷彿させる物語です。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』。悪人に立ち向かう優我と風我の姿に胸が熱くなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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