webstation plus

eyes_01

 世界中で経済格差が広がっています。

 たとえば、アメリカのある地域では、数年前からバスの最終時刻が20時になりました。スーパーや会社などは20時を過ぎても営業しているので、もっと遅くまでバスを利用したいと思っている人たちが大勢いますが、税金が足りないのでバスを走らせることができません。

 では、なぜ数年前から税金が足りなくなったのでしょうか。

 それは、お金を持っている人たちが「貧乏人のために税金を払いたくない!」といって独立したからです。金持ちしか住めない市を作ったんですね。ほんとスゴイ話です。しかも、この流れはアメリカ中に広がっていると言います。

 このような「自分さえよければいい」という人たちが増えていくと、経済格差は広がっていくばかり。この流れを食い止めるにはどうすればいいのでしょうか。百田尚樹さんの小説『フォルトゥナの瞳』は、そのひとつの方法を教えてくれます。

 小説『フォルトゥナの瞳』のあらすじ

 物語の主人公は、木山信一郎というごく普通の青年。彼は幼い頃に両親と妹を亡くし、孤独な生活を送っていました。友人も恋人もできず、朝から晩まで仕事をしては夜眠るだけの毎日です。

 ところがある日、彼は特殊な能力を手にします。それは、他人の運命――「他人の死」が見える瞳でした。漫画『デスノート』で、死神と契約した弥海砂が、自分以外の人間の寿命がわかるのと似たような能力です。

 しかし、『デスノート』とは決定的に違うところがあります。それは、信一郎が人を殺すためではなく、人を救うためにこの能力を使おうとしたところ。寿命が尽きようとしている人たちを、死の淵から救い出そうとしたのです。

 ところが、この能力には意外な落とし穴がありました。他人を死から救うことで、自分の寿命が短くなってしまうのです。

 それでも、彼はこの能力を人のために使い続けました。そこに自分の存在価値を求めたのかもしれません。とにかく、そうやって人のために行動し続けたところ、彼は思いもよらぬ幸運を手にします。生まれて初めて彼女ができたのです。

 彼の生活は一変しました。これまでのような代わり映えのない毎日ではなく、一日一日が幸せで溢れています。信一郎は彼女との生活を大切にするためにも、能力を使わずにいようとしますが――。

 「数日後に大勢の人たちが命を落とす事故」が起きることがわかったのです。さらに、この事故を食い止めるには、自分の命を犠牲にするしかありません。

 彼は決断に迫られます。自分の幸せを優先し、大勢の命を犠牲にするべきか。それとも、自らの命を犠牲にして、大勢の命を救うべきか。

 まとめ

 物語の結末は本書に譲るとして、年々拡大していく経済格差を食い止めるには、信一郎のように「人のため」に行動できる人が一人でも増えていくしかありません。そういう社会を築かなければ、近い将来、大勢の人が貧困に苦しむことになるでしょう。

 というわけで、『フォルトゥナの瞳』は、人のために行動することの大切さを教えてくれる小説です。未読の方は、読まれてみてはどうでしょうか。

 関連記事

『食堂のおばちゃん』は今すぐ食堂に通いたくなる心温まる小説

(※『食堂のおばちゃん』表紙より)  食堂に勤めた経験がある著者・山口恵以子さんが描いた本作品。読めば心が温まるだけでなく、今すぐ食堂で美味しいご飯が食べたくなること間違いなしの小説です。  今回は小説『食堂のおばちゃん …

モテる女性に共通している特徴とは?/池井戸潤『不祥事』

 小説やドラマを観ていると、「本当に素敵な人だなぁ…」と心から惚れてしまう人に出会うことがあります。  たとえば、ドラマ『トリック』に出演されていた仲間由紀恵さん。本当にキレイな方なのに面白い。もちろん、ドラマの設定上「 …

「ロボットに奪われない仕事」をしよう/池井戸潤『銀行総務特命』

 グーグルの創業者であり、現CEOのラリー・ペイジは、人口知能の急激な発達によって、現在私たちが担当している仕事のほとんどはロボットがやることになるという。加えて次のように断言している。  「近い将来、10人中9人は、今 …

「光」あるところには必ず「影」が存在する/百田尚樹『影法師』

 「光が多いところでは、影も強くなる」――と、ゲーテがいったように、光あるところには必ず影がつきまとう。しかし、私たちは光だけを追い求め、影の存在を否定してしまいがちだ。  たとえば、宝くじを買ったり、株やFXで一儲けし …

40歳以降の人生を輝かせる方法/重松清『トワイライト』

 40歳という年齢は、「人生の節目」なのかもしれない。  たとえば、有名な心理学者であるユングは「40歳は人生の正午である」と言った。人生を太陽の軌道にたとえるなら、40歳は正午(ピーク)であり、それを過ぎると衰えていく …

登場人物が薄っぺらい人間ばかりの小説『白ゆき姫殺人事件』

 他人をあれこれ評価していませんか? 「あいつは仕事のやり方が悪い」 「いい人なんだけどダサいよね」 「あれじゃ、結婚できなくて当然」  などなど。もし、普段からこのような陰口を言っているようなら、キッカケさえあれば友人 …

人間に与えられた「特権」を使わないなんて損!/百田尚樹『風の中のマリア』

 私たち人間には、他の生物にはない特権が与えられている。それは「目標がもてる」ということだ。  人間は、目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる。 (アリストテレス …

タイトルに込められた真意とは?/山本兼一『利休にたずねよ』

 小説『利休にたずねよ』には、大きな謎が三つある。  ひとつは、「利休はなぜ美の頂点に君臨することができたのか」。当時、茶の湯には人を殺してでも手に入れたいほどの麗しさがあり、道具ばかりでなく、点前の所作にもそれほどの美 …

「存在意義がない人」など一人もいない/東野圭吾『ラプラスの魔女』

 人間にとって大切なのは、この世に何年生きているかということではない。この世でどれだけの価値のあることをするかである。 (オー・ヘンリー)  たしかに、「価値」を生み出すことは大切だ。私たちが仕事をするのも「価値を生み出 …

『PK』は「勇気は未来に伝染する」がテーマのSF小説

(※『PK』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『PK』。三編の中編から構成されており、「勇気は未来に伝染する」がテーマのSF小説です。読み進めていくうちに勇気が湧いてくること間違いなし!?  今回は『PK』のあらすじと感 …