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 自分さえ良ければいいと思っていませんか?

 自分だけ幸せになれれば、他人は不幸になっても構わない…。そんなふうに考えて生きている人も多いでしょう。

 しかし、百田尚樹さんの小説『フォルトゥナの瞳』を読めば少しは考えが変わるかもしれません。人のために生きるのも悪くないと思えるかもしれませんよ。

 冴えない主人公が特殊能力を手に入れる物語

 物語の主人公は、木山信一郎というごく普通の青年。

 彼は幼い頃に両親と妹を亡くし、孤独な生活を送っていました。友人も恋人もできず、朝から晩まで仕事をしては夜眠るだけの毎日です。

 ところがある日、彼は特殊能力を手に入れます。それは「他人の死」が見える瞳でした。漫画『デスノート』で、死神と契約した弥海砂が、自分以外の人間の寿命が見えるのと似たような能力です。

 しかし、『デスノート』とは決定的に違うところがありました。それは、信一郎が人を殺すためではなく、人を救うためにこの能力を使うところです。

 寿命が尽きようとしている人たちを、死の淵から救い出そうとするんですよね。

 ところが、この能力には意外な落とし穴がありました。他人を救えば、その代わりに自分の寿命が短くなってしまうのです。

 それでも、彼はこの能力を人のために使い続けました。その結果…。

 人のために行動すれば思いもよらぬ幸運が手に入る

 信一郎は思いもよらぬ幸運を手にします。生まれて初めて彼女ができたのです。

 彼の生活は一変しました。これまでのような代わり映えのない毎日ではなく、一日一日が幸せで溢れています。

 そこで、信一郎は自分のためにも、彼女との生活を大切にするためにも、能力を使わないことに決めました。しかし…。

 「数日後に大勢の人たちが命を落とす事故」が起きることがわかります。さらに、この事故を食い止めるには、自分の命を犠牲にするしかありません。

 彼は決断を迫られました。自分の幸せを優先し、大勢の命を犠牲にするべきか、それとも、自らの命を犠牲にして、大勢の命を救うべきか。

 この結末は本書に譲るとして…。

 「自分さえ良ければいい」では世界は悪くなっていく

 自分さえ良ければいいという人たちで溢れると、世界は悪くなるばかりです。

 実際、アメリカのある地域では、数年前からバスの最終時刻が20時になりました。

 スーパーや会社は20時を過ぎても営業しているので、もっと遅くまでバスを利用したい人は大勢いますが、税金が足りないのでバスを走らせることができません。

 では、なぜ数年前から税金が足りなくなったかと言うと、金持ちが「貧乏人のために税金を払いたくない!」といって金持ちしか住めない市を作って独立したからです。

 驚くような話ですが、この流れはアメリカ中に広がっていると言われています。

 しかし、このような人たちが増えれば、経済格差は広がっていき、世界は悪くなる一方ですよね。

 そんな人たちにこそ読んで欲しい本が、百田尚樹さんの小説『フォルトゥナの瞳』。読めば、自分さえ良けばいいと思っている人も、少しは他人のために生きようと思えるかもしれません。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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