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 人生のすべてを捧げてもいいと思えるほどの「好きなこと」がありますか。

 収入やプライベートな時間があまりなくても、結婚や恋愛が出来なくても、やりたいと思えること。

 そんな何かを持っている人って羨ましいですよね。とはいえ、その代償はあまりにも大きい…。

 東野圭吾さんの小説『眠りの森』を読んで、その代償の大きさに衝撃を受けました。

 バレエ団で繰り広げられる殺人事件

 物語は、高柳バレエ団の事務所で、ある男性が殺されるところから始まります。

 バレエダンサーの葉子が不法侵入した「その男性」と鉢合わせになり、驚いて殺してしまったのです。

 しかし、その男性が事務所に不法侵入する理由がわかりません。金目当ての犯行とは思えず、高柳バレエ団とのつながりも見つからなかったからです。

 そんななか、第二の殺人事件が起こります。リハーサル中に演出家の梶田が殺されたのです。

 状況からすると、犯人は高柳バレエ団の誰かです。刑事になった加賀恭一郎が事件の謎を解き明かすべく乗り込みますが…。

 バレエに全てを捧げるダンサーたちに衝撃を受ける

 バレエダンサーと接するようになって、加賀は衝撃を受けました。彼女たちは人生のすべてをバレエに捧げていたからです。

 結婚や恋愛ができなくても、過剰なダイエットをすることになっても、プライベートな時間がなくても、ダンサーとして舞台に立つために練習に励みます。

 そんな彼女たちの姿をみて、加賀恭一郎は

「うらやましいな」

 と口にしました。他の何かを犠牲にしてまでやりたいと思えることは、そう簡単に見つからないからです。

 だからこそ、加賀はバレエダンサーの未緒に恋をするのですが…。

 すべてを捧げた代償はあまりにも大きい

 彼女たちの生活はリスクと隣り合わせでした。バレエ以外のことをする余裕がないので、怪我をしてバレエが出来なくなったら「おしまい」です。

 殺人事件の背景には、そんなリスクが見え隠れしていました。

 それでもバレエにすべてを捧げる彼女たちの姿を見ていると、リスクを恐れて行動しないよりも、今を精一杯生きる方が幸せなのかも…と思えてくるんですよね。

 東野圭吾さんの小説『眠りの森』は、バレエダンサーたちの情熱に突き動かされて、今すぐ何かに挑戦したくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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