
(※『眠りの森』表紙より)
人生を捧げてもいいと思えるほどの「好きなこと」がありますか。
収入が減っても、プライベートな時間がなくなっても、結婚や恋愛が出来なくても、やりたいと思えること。
そんな何かを持っている人って羨ましいですよね。生きる意味が明確だからです。
東野圭吾さんの小説『眠りの森』に登場するバレエダンサーたちもそのひとり。バレエに人生を捧げる登場人物たちの姿に胸が熱くなる物語です。
しかし、じっくり考えてみると、好きなことに人生を捧げる生き方は本当に幸せなんでしょうか。リスクが高いと思いませんか。
そこで今回は『眠りの森』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら、「好きなことを仕事にするのは本当に幸せなのか?」を考えてみたいと思います。
『眠りの森』のあらすじ
高柳バレエ団の事務所で男性が殺されます。ダンサーの葉子が不法侵入してきたその男性と鉢合わせになり、驚いて殺してしまったのです。
バレエ団は葉子の正当防衛を主張しますが、男性が不法侵入した理由がわかりません。金目当ての侵入とは思えず、高柳バレエ団との関係も見つからなかったからです。
そんななか、第二の殺人事件が起こります。リハーサル中に演出家の梶田が殺されたのです。犯人はバレエ団の誰か!?
加賀恭一郎が犯人に迫ります。
『眠りの森』のおすすめポイント
1. 散りばめられた伏線とその回収が気持ちいい物語
『眠りの森』では次々と謎が浮かび上がってきます。たとえば、
なぜ、風間は高柳バレエ団に不法侵入したのか。
なぜ、演出家の梶田が殺されたのか。
なぜ、未緒は貧血を起こすようになったのか。
などなど。物語が終盤に向かうにつれてこれらの伏線が回収されていくのが、読んでいて気持ちいいんですよね。
少し入り組んだ構成ですが、最後にスッキリできる物語です。
2. 加賀恭一郎の恋の行方が気になる
前作『卒業』で沙都子にプロポーズをした加賀恭一郎。しかし、『眠りの森』では彼女との関係は終わっていました。
今回、彼が恋した女性はバレエダンサーの未緒。少しずつ距離が縮まっていく彼らの姿に胸の高まりがとまりません。そして最後には――。
彼らの恋の行方が気になる物語です。
3. バレエに全てを捧げる人たちの物語
『眠りの森』に登場するバレエダンサーたちは、人生の全てをバレエに捧げていました。
結婚や恋愛ができなくても、過剰なダイエットをすることになっても、プライベートな時間がなくても、ダンサーとして舞台に立つために練習に励みます。
そんな彼女たちの姿をみて、加賀恭一郎は
「うらやましいな」
と口にしました。他の何かを犠牲にしてまでやりたいことは、そう簡単に見つからないからです。
しかし、リスクも高まります。他のことをする余裕がないので、怪我をしてバレエが出来なくなったら「おしまい」です。
それでもバレエにすべてを捧げる彼女たちの姿を見ていると――。リスクが高いと考えて行動しないよりも、今を精一杯生きた方が幸せではないか?と思えてきます。
彼らの熱意に影響されて、今すぐ何かに挑戦したくなること間違いなし!?
最後に
東野圭吾さんの小説『眠りの森』。読めば、自分も何かに挑戦しようと思える物語です。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。