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 伊坂幸太郎さんの小説には死をテーマにした物語がいくつかあります。中でも私が好きな小説が『死神の精度』と『終末のフール』。

 実はこの二つ。死に対するアプローチが違っているんですよね。どこが違うかと言うと…。

 『死神の精度』と『終末のフール』のアプローチの違い

 『死神の精度』は突然死が訪れますが、『終末のフール』は八年後に死ぬとわかっているところです。小惑星が地球に衝突して、滅亡するという設定なんですよね。

 これは大きな違いですよね。突然死が訪れると何も準備できませんが、八年後に死ぬとわかっていれば、少なくともその八年間は自分の生き方を見直せます。

 ところが、多くの人はどうせ死ぬならとヤケを起こして、ケンカをしたり、レイプしたり、殺人を犯したりします。生きていく希望が持てなくなったからです。

 しかし、その中でも自分を変えようとしている人たちがいました。

 死ぬ気で行動すれば人生は変えられる

 妻と息子をバカにしてきた男は、娘から縁を切られ、久しぶりに再会したにも関わらず、相変わらずな自分に「このままではダメだ」と悟り、

 番組を盛り上げるために他人の不幸を面白く取り上げていたアナウンサーは、その行為が他人を不幸にしてきたことに気づき、

 両親を亡くし、部屋に籠もりっきりで読書をしていた女性は、彼氏を探しに街に出かけます。

 勝ち組として偉そうに振舞っていた男は、妻を亡くして始めてバカにしてきた男の方が楽しく生きていたことを知り、

 本当の家族を亡くした女性は、他人とも家族のように付き合えることに気づきます。

 このように死が迫ってくることで、ようやくこれまでとは違う生き方をしてみようと思うんですよね。

 どれも文字にすれば簡単に変えられそうなことばかりですが、実際には恐怖が伴い行動が起こせません。

 しかし、「死」というそれ以上の恐怖に迫られると、変わることがそれほど大したことのないように思えてきます。

 だからこそ、彼らは行動することに決めるのですが、そんな彼らの姿を見ていると…。

 手遅れになる前に今すぐ行動を起こそう

 と思います。実は、やろうと思えばどれも今すぐ出来ることばかり。躊躇していては勿体ないですよね。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

 と言える生き方をしていきたいですね。

 ◆

 伊坂幸太郎さんの小説『終末のフール』。

 今の生き方で大丈夫かなと不安になったとき、今すぐ行動を起こすキッカケを与えてくれる物語です。気になった方はぜひ。

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