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 無駄なことはやめようと思っていませんか。

 もちろん、本当に無駄なことはやめた方がいいですが、無駄に思えても一生懸命にやったことは、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれません。

 そんな想いにさせてくれた小説が伊坂幸太郎さんの『フィッシュストーリー』。異なるジャンルの4つの中編が楽しめる小説です。

 泥棒の黒澤とその仲間たちの活躍に惹き込まれる

 伊坂幸太郎さんの多くの作品で活躍してきた泥棒の黒澤が2編で登場します。それが『サクリファイス』と『ポテチ』。

 それぞれ異なるジャンルの物語ですが、黒澤が登場するとあって、何処となく繋がっているかのような雰囲気が味わえるんですよね。

 なかでもポテチは『ホワイトラビット』にも出てくる今村、中村、若葉が登場。今村の切ない家族関係が明かされたり、若葉との出会いが描かれたりしているので、読んでおくと『ホワイトラビット』がより一層楽しめます。

 とにかく、黒澤という捉えどころのない泥棒の魅力にハマる物語です。

 無駄なことでも誰かの役に立つかもしれないと思える物語

 仕事でもブログでも趣味でも、これ以上続けても無駄かな…って思うことありますよね。特に思っていたような成果が出なかったとき、今の行動が無駄に思えて仕方ありません。

 しかし、無駄に思えるその行動がめぐりめぐって誰かの役に立つとしたらどうでしょうか。

 短編『フィッシュストーリー』は、売れないバンドマンが契約を切られる直前につくった曲が多くの人を救うキッカケになるという物語。

 ドライブをしながらこの曲を聴いていた男性が無音期間に女性の悲鳴を聞いて助け、その二人が結婚して出来た息子がハイジャック犯を捕まえ、その飛行機に乗り合わせていた女性が…というように、売れないバンドの曲がキッカケで多くの人が救われていくんですよね。

 もちろん、すべての行動がこのような奇跡を生むとは限りませんが、いまは無駄だと思っていることが、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれないと思うと、なんだか楽しくなってきませんか。

 そんな素敵な気分にさせてくれる物語です(ミスチルの『彩り』もそんな感じの曲でしたね)。

 とはいえ、どれも切ない物語

 そんな素敵な気分にさせてくれる物語ですが、その根底には切なくてやりきれないストーリーが潜んでいます。

 動物園の元職員も、売れないバンドマンも、今村も、言葉では語り切れない苦悩を抱えて生きています。

 そんな彼らが前を向いて行動する姿を見ていると、私も頑張ろうって思えるんですよね。今はツラくても、前を向いて行動すれば、いつかは誰かの役に立つかもしれないって思えてきます。

 もし、今がツライのなら、ぜひ彼らの姿をみて前向きな気持ちになってみてはどうでしょうか。

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