すぐに結果が出ない努力をやめていませんか?
私はどちらかと言うと、すぐに結果が出る努力ばかりしてきましたが、
伊坂幸太郎さんの小説『フィッシュストーリー』を読んで、すぐに結果が出なくても、巡りめぐって誰かの役に立つこともあるかもしれないと思えるようになりました。
そのため、やりたいことは簡単にあきらめずに努力し続けようと思えたんですよね。
今の行動が未来の誰かの役に立つかもしれないと思うと、俄然やる気が湧いてきます。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- ラストで驚ける物語が好きな人
- 感動できる物語が好きな人
- 他の伊坂作品とのつながりを楽しみたい人
- 伊坂幸太郎さんの小説が好きな人
あらすじ:売れないロックバンドの曲が未来に奇跡を起こす物語
今から三十数年前。売れないロックバンドが最後のレコーディングに臨んでいました。
しかし、その間奏中にボーカルの五郎が突然こんなことを言い出します。
「いい曲なんだよ、届けよ、誰かに」
どれだけ努力しても、良い曲を作っても、売れない悔しさを吐き出すように叫んだ言葉でしたが…。
あまりにも演奏の出来が良かったので、彼が叫んだところを無音にして発売することになりました。
そして今から二十数年前。ドライブをしながらこの曲を聴いていた男性が、無音期間に女性の悲鳴を聞いたので助けます。
これがキッカケで二人は結婚し、子供が生まれますが、その子供が大人になった今、ハイジャック犯を捕まえるんですよね。
さらに、その飛行機に乗り合わせていた女性が…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:今の努力が未来の誰かの役に立つかもしれない
この小説は4つの中編で構成されています。
あらすじで紹介したのは、タイトルにもなっている『フィッシュストーリー』ですが、
売れないロックバンドの曲がキッカケで次々と奇跡が起こっていくので、読んでいて気分が高揚してきます。
もちろん、努力したからといって、このような奇跡が起こるとは限りませんが、
もしかすると今の努力が巡りめぐって誰かの役に立つかもしれないと思うと、簡単にあきらめずに行動しようって思えますよね。
漫画『ブラッククローバー』では、魔法が使えるのが当たり前の世界で、魔法がまったく使えないアスタが魔法帝になることを夢見て奮闘していきますが、

こういった直接的に努力が報われる物語ではなく、間接的に、しかも未来に…という視点が伊坂幸太郎さんらしい物語でした。
こういった努力の報われ方も良いかも!?と思える物語です。
感想②:泥棒の黒澤がゆるく物語をつなげてくれる
先ほど紹介したように、この物語は全部で4つの中編で構成されています。
『フィッシュストーリー』以外の3編を簡単に紹介していくと、
まずひとつ目は、動物園の元職員である永沢が、なぜか夜になるとシンリンオオカミの檻の前で寝ているので、主人公たちがその謎を解き明かそうとする物語『動物園のエンジン』。
二つ目は、「山田という男性を探して欲しい」という依頼を受けた泥棒の黒澤が、人里離れた村で「生贄」の儀式を目撃する『サクリファイス』。
そして三つ目は、黒澤の同業者である今村が、彼氏に裏切られて自殺しようとしていた女性を救い、その女性と一緒に空き巣に入った家で衝撃の事実が明らかになる物語『ポテチ』です。
このように、4編のうちの2編に黒澤が登場するので、どことなく繋がっているかのような雰囲気が味わえるんですよね。
瀧羽麻子さんの小説『女神のサラダ』のように、異なる短編が同じテーマで描かれていたり、

『フィッシュストーリー』のように、異なる物語に同じ人物が登場していたりすると、
物語同士がつながっているかのような雰囲気が味わえるので、より一層楽しめます。
それだけでなく、『ポテチ』は、『ホワイトラビット』にも深く関係する今村、中村、若葉が登場するので、
『ホワイトラビット』を読む前に読んでおけば、この物語とのつながりも楽しむことができます。

感想③:切なくてやり切れないストーリーが潜んでいる
ここまで、この小説の明るい部分を語ってきましたが、実は切なくてやり切れないストーリーが潜んでいます。
動物園の元職員も、売れないバンドマンも、今村も、言葉では語り切れない苦悩を抱えて生きていたんですよね。
なかでも、今村の切ない家族関係には心が揺さぶられました。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、今村と母親のお互いを思う気持ちに胸が張り裂けそうになりました。
東野圭吾さんの小説『祈りの幕が下りる時』でも、母と息子のお互いを思う気持ちに感動しましたが、

それとは一味違う感動が味わえる物語です。
まとめ
今回は、伊坂幸太郎さんの小説『フィッシュストーリー』のあらすじと感想を紹介してきました。
切なくてやり切れない問題を抱える登場人物たちが、希望を見出していく物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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