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(※『フィッシュストーリー』表紙より)


 無駄なことはやめようと思っていませんか。

 もちろん、本当に無駄なことはやめた方がいいですが、無駄に思えても一生懸命にやったことは、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれません。

 そんな想いにさせてくれた小説が伊坂幸太郎さんの『フィッシュストーリー』。

 今回は『フィッシュストーリー』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『フィッシュストーリー』ってどんな小説?

 ジャンルの異なる全4編の中編で構成された小説です。それぞれ簡単に紹介すると、

『動物のエンジン』

 毎晩、動物園の地面で寝ている元職員が、朝になるとなぜか建設現場で反対運動をする物語。

 40歳前後の河原崎が、彼が地面で寝ている理由と反対運動をする理由をダジャレを交えながら推理するのが面白い物語です。

『サクリファイス』

 人探しを頼まれた黒澤が、山形県の山奥で「こもり様」と呼ばれる生贄の風習を目の当たりにする物語。

 「現代に生贄があればこうなるのか!」と思える視点で描かれているので、最後まで一気に読んでしまいます。

『フィッシュストーリー』

 三十数年前に魚をテーマにした小説を引用してつくられた曲が、めぐりめぐって誰かの役に立つ物語。

 無音期間が1分もある曲がなぜ作られたのか、そしてその曲がなぜ誰かの役に立ったのかがミステリー調で描かれています。最後は笑顔になれる物語です。

『ポテチ』

 黒澤の知り合いで泥棒をしている今村が、同い年で同じ町出身のプロ野球選手・尾崎の家に泥棒に入る物語。

 今村が尾崎にこだわる理由が明かされたとき、とても切ない気持ちになる物語です。

 ◆

 このように、異なるジャンルの中編で構成された小説です。さまざまなジャンルの中編が読めるので面白いですよ。

 『フィッシュストーリー』のおすすめポイント

1. 他作品でも活躍する黒澤とその仲間たちが登場

 伊坂幸太郎さんの多くの作品で活躍する黒澤が出てくる物語が2編あります。それが『サクリファイス』と『ポテチ』。

 それぞれ異なるジャンルの物語ですが、黒澤が登場するとあって、何処となく繋がっているかのような雰囲気が味わえるんですよね。

 なかでもポテチは『ホワイトラビット』にも出てくる今村、中村、若葉が登場。今村の切ない家族関係が明かされたり、若葉との出会いが描かれたりしているので、読んでおくと『ホワイトラビット』がより一層楽しめます。

 黒澤という捉えどころのない泥棒の魅力にハマる物語です。

2. 無駄なことも誰かの役に立つかもしれないと思える物語

 仕事でもブログでも趣味でも、これ以上続けても無駄かな…って思うことありますよね。特に思っているような成果が出なかったとき、今の行動が無駄に思えて仕方ありません。

 しかし、無駄に思える行動がめぐりめぐって誰かの役に立つかもしれないんですよね。

 そう思えたのは『フィッシュストーリー』を読んだからです。

 『フィッシュストーリー』は、売れないバンドが契約を切られる直前に、魚をテーマにした小説を引用してつくった曲が多くの人を救うキッカケになったという物語。

 ドライブをしながらこの曲を聴いていた男性が無音期間に女性の悲鳴を聞いて助け、その二人の息子がハイジャック犯を捕まえ、その飛行機に乗り合わせていた女性が…というように、売れないバンドの曲がキッカケで多くの人が救われていきます。

 もちろん、すべての行動がこのような奇跡を生むとは限りませんが、いまは無駄だと思っていることも、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれないと思うと、なんだか楽しくなってきませんか。

 そんな素敵な気分にさせてくれる物語です(ミスチルの『彩り』もそんな感じの曲でしたね)。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『フィッシュストーリー』。今は無駄に思えることでも、一生懸命やれば、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれないと思える物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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