
(※『農ガール、農ライフ』表紙より)
垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』。
「今の仕事がキツイから農業でも始めようかなぁ」「退職後に農業でも始められたらいいなぁ」と漠然と考えている人たちに、厳しい現実を教えてくれる物語です。
読めば「目の前のことに真剣に取り組もう!」と思えること間違いなし!?
今回は『農ガール、農ライフ』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。
小説『農ガール、農ライフ』のあらすじ
32歳の水沢久美子(みずさわ くみこ)は、派遣切りに遭ったその日に同棲相手から別れを切り出されました。彼に浮気相手がいたからです。
もちろん、久美子は怒りましたが、時すでに遅し。過去に彼のプロポーズを断ったことが原因だったからです。
翌日から新たな仕事と住処を探し始めた久美子。しかし、安定した仕事は見つからず、保証人のいない独身女性に家を貸してくれる不動産屋はありませんでした。
そんな彼女に一筋の光が。テレビ特集『農業女子』によると、農業を始めれば安定した仕事と住処が簡単に手に入る!?早速、動き出した久美子でしたが――。
農業は想像以上に大変!?
テレビ特集によると、独身女性が農業を始める場合、
・地に足のついた自給自足の生活が実現できる
・機械を使えば力も体力もいらない
・地域の人たちも新規就農に協力的
・販売経路も複数ある
・田畑も安価で借りられる
など、いいことづくめだと報道していましたが、現実はそんなに甘くありませんでした。実際は、
・農業だけでは食べていけない
・力も体力も必要な重労働
・就農しようと思ってもよそ者には非協力的
・販売経路は限られており、売り手で溢れている
・そもそも田畑を貸してくれない
など、農家になるだけでも一苦労。たとえ農家になれたとしても、夫婦二人でなんとかこなせる重労働を一人でやるのは至難の業で、収入も労働に見合いません。
そのため、独身女性が農業を始める場合、農家に嫁ぐのが一般的なんだとか。しかし、久美子は自らの力で生計を立てようと奮闘します。
読み進めていくうちに、「今の仕事は農業よりもラクかも!?もっと頑張ろう!」と思える物語です。
結婚しても、他の仕事をしても悩みは消えない!?
とはいえ、農業以外の仕事に就いても、結婚して家事・育児に専念するようになっても、悩みが消えてなくなるわけではありません。
久美子の大学時代の先輩・山藤憩子(やまふじ けいこ)や片桐瑞希(かたぎり みずき)も幸せそうに見えて、実は悩みを抱えていました。
憩子はオーストラリアで働くキャリアウーマン。今はオーストラリア人の男性と同棲しています。
こう聞くと幸せな暮らしをしているように思えますが、実際は仕事が忙しすぎて、服装や身だしなみを整える時間もありません。同棲相手の両親からは「アジア人となんて結婚するな!」と猛反対されています。
結婚を機に専業主婦になった瑞希も、家族との幸せな暮らしぶりや家庭菜園の様子、手作りのお菓子などをブログに載せていますが、現実はそんなに甘いものではありませんでした。
つまり、何をするにしても、悩みや苦労があるということ。他人を羨ましがるのではなく、目の前にある現実に向き合っていくしかないということですね。今がツラくても「もう少し頑張ってみよう!」と思える物語です。
人との繋がりが大切!?
では、どうやってこのツライ現実に立ち向かっていくのか。それには他人の助けが必要です。
久美子も、憩子や彼女の母、農家のおばあちゃんや瑞希など大勢の人に助けられ、幸運を掴んでいきました。
人との繋がりが大切だとは誰もがわかっていますが、忙しい毎日を過ごしていると忘れてしまいがち。改めて、人との繋がりを大切にしていこうと思える物語です。
最後に
垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』。農業の厳しさを知り、「目の前のやるべきことに向き合っていこう!」と思える小説です。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。