森見登美彦『有頂天家族』感想/血の繋がりだけでは家族になれない

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 「家族」を大切にしていますか?

 私は大切にしているつもりですが、そもそも「家族」と一言でいっても捉え方は千差万別です。

 血のつながった人たちの集まりを家族と言う人もいれば、一緒に暮らしている人を家族と呼ぶ人もいます。あるいは、愛しあっている人の集まりを家族と捉えている人もいるでしょう。

 おそらく、このどれもが正しくて、どれもが間違っているように思います。では、本当の家族とは何でしょうか。




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 ダメ狸四兄弟の物語

 物語の主人公は、ダメ狸四兄弟の三男タヌキ。

 彼の父は、山に化けられるほどの非凡な化け力と器の大きさをもっていました。傲慢な天狗の赤玉先生に「狸にしておくには惜しい人物」といわせるほどのタヌキでした。

 ところが、金曜倶楽部なる怖ろしい集団によって、狸鍋にされて食べられてしまうんですよね。

 残されたのは、「わが子はひとり残らず亡き父の跡目を継ぐにふさわしい狸」だと信じて疑わない母と、狸界では有名なダメ狸四兄弟でした。

 そんな彼らの性格は…。

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 個性的な四兄弟が一緒に暮らすことなどできない

 一人ずつ違っていました。

 長男狸は、父から責任感だけを受け継ぎました。亡き父のように立派な狸になろうと努力していますが、融通が利かないうえに、緊急時になるとあわてふためいて混乱してしまう、土壇場に弱い狸です。

 次男狸は、父からのんきな性格だけを受け継ぎました。現在は寺の境内の古井戸の中で蛙に化けて隠居生活をしています。

 四男狸は、父から純真さだけを受け継ぎました。化けるのが苦手で気が弱く、恐怖を感じるとすぐに狸姿に戻ってしまいます。唯一の特技といえば、携帯電話の充電ができること。

 そして、主人公である三男狸は、父から阿呆ぶりだけを受け継ぎました。

 「狸として如何に生きるべきか」という難問に取り組んだときは、「どうすべきか分からないときには、何もしない方が得策だ」というナポレオンの言葉に従ってぶらぶらと過ごし、「どうやら面白く生きるほかに何もするべきことなどない」という悟りを得るほどの阿呆ぶりです。

 このように性格も考え方も違う兄弟たちが、同じ場所で仲良く暮らせるはずなどありません。

 そこで、彼らは思い思いの生活をしていました。

 長男狸は父の後を継いで「偽衛門」という狸界の伝統的な称号を手に入れようと躍起になり、次男狸は井の中の蛙として他人の悩みや愚痴の聞き役に徹していました。

 四男狸は修行と称して偽電気プラン工場でバカ狸にいじめられながらも働き続け、主人公である三男狸は女子高生に化けて天狗の世話をしていました。

 ところが、そんな彼らにピンチが訪れます。長男狸が金曜倶楽部の標的になったのです。このままでは、父と同じように長男狸まで狸鍋にされてしまいます。

 そこで、彼ら四兄弟は…。

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 ピンチのときに手を差し伸べられるのが本当の家族

 一致団結して金曜倶楽部に立ち向かって行きます。

 では、なぜ性格も価値観も異なる四兄弟が、一致団結できたのでしょうか。

 それは、どれだけ他人にバカにされても、子どもたちを信じぬく母の愛情によってつながっていたからです。そして父のように偉大になりたいと誰もが思っていたからです。

 つまり、深い愛情によるつながりと互いを尊敬する気持ちがあったからこそ、ピンチのときに手を差し伸べられることができたんですよね。

 もしかすると、本当の家族とは「ピンチのときに手を差し伸べられる関係」を築けていることなのかもしれません。

 ◆

 森見登美彦さんの小説『有頂天家族』。読めば、本当の家族とは何か?と考えたくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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