webstation plus

(※『アヒルと鴨のコインロッカー』表紙より)


 悲しい出来事ってありますよね。最近の台風や地震でツライ思いをした方も多いのではないでしょうか。

 伊坂幸太郎さんの小説『アヒルと鴨のコインロッカー』に登場する人物たちもその一人。暴力的な若者に襲われたり、死に至る病に悩まされたりと次から次へと悲劇が起こります。

 しかし、彼らは悲しい出来事をユニークな視点で捉え、爽やかに生きていました。そんな彼らの姿に励まされること間違いなし!?

 今回は、悲しい出来事が起こったときにぜひ読んで欲しい小説『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじ

 大学に通うためにアパートに引っ越してきた椎名は、隣に住む河崎に「一緒に本屋を襲わないか?」と誘われます。

 はじめは断っていた椎名でしたが、河崎の口車に乗せられ、本屋を襲うことに。

 その2年前。動物を殺すことに生きがいを感じている若者たちがいました。

 ペットショップで働く琴美は、店からいなくなった柴犬が彼らに襲われていないか心配になり、ブータン人のドルジと一緒に探しに出かけます。そこで動物殺しの若者たちと出会い、襲われることに。

 この2つの物語がシンクロするミステリー小説です。

 『アヒルと鴨のコインロッカー』のおすすめポイント

1. 登場人物に次々と起こる悲劇に心が痛む

 この物語に登場する人物には、次々と悲劇が起こります。

 たとえば、2年前。行方不明になった柴犬を探しに出かけた琴美とドルジは、動物殺しを楽しむ若者たちに遭遇し、襲われました。

 ドルジの機転により、その日は何とか逃れることができましたが、琴美がパスケースを落としてしまい、住所と名前がバレてしまいます。ここから、彼らの執拗な嫌がらせが始まりました。

 一方、過去に琴美と付き合っていた美男子の河崎は、複数の女性とセックスを楽しんでいましたが、重い病気にかかり、ひとり悩むことに。

 そして、現在。河崎の隣の隣に住む外国人が彼女を失い、ひどく落ち込んでいます。そこで、これらの悲劇を吹き飛ばすために、河崎が椎名を誘って本屋を襲う!?

 登場人物たちに次々と起こる悲劇に心が痛くなる物語です。

2. それでも爽やかに生きる登場人物たちに励まされる

 登場人物の誰もが悲劇に見舞われていましたが、彼らのセリフはそれを感じさせないほど爽やかでした。たとえば、

「ここでバットを振ると、不安だとか不満が吹き飛ぶ。誰かにそう聞いたのを思い出したんだ」
(中略)
「一応、言っておくけど、それを教えてあげたの、たぶん、わたしだから」

 他にも、

「死ぬかもしれない、と言ったら、もっと優しくしてくれるのか」
「死期が近くなったら教えて」

 など、悲劇を吹き飛ばすセリフが満載。なかでも、お気に入りのセリフがこちら。

「神様を閉じ込めておけば、悪いことをしてもばれない」

 彼らの言葉に励まされる物語です。

3. ラストは切ないけれど爽やかな気持ちになれる

 この小説の醍醐味は、すべての伏線が気持ちよく回収されていくところ。たとえば、

・なぜ、河崎は広辞苑を盗むために本屋を襲おうとするのか
・なぜ、ドルジと琴美は現在の物語に出てこないのか
・なぜ、河崎は重い病気になったのに今も生きているのか

 などなど、謎だらけ。これらの伏線が回収されていく過程が面白くて仕方ないんですよね。

 なかでも、タイトルに込められた意味を知ったとき、切なくて悲しくて、それなのに爽やかな気持ちになれること間違いなし!?

 ぜひ実際に読んで切なさと爽やかさを味わってください。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『アヒルと鴨のコインロッカー』。切なくて、悲しくて、それなのに爽やかな気持ちになれること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

田舎暮らしは大変!?重松清『みんなのうた』は家族の温かさに感動する小説

(※『みんなのうた』表紙より)  田舎に帰ってますか。  私はもともと都会と呼ばれる場所で育ったので田舎はありませんが、重松清さんの小説『みんなのうた』を読んで田舎で育った人たちの苦労が少しだけわかりました。  読めば、 …

『みかづき』は塾教育の歴史が楽しみながら学べる小説

(※『みかづき』表紙より)  森絵都さんの小説『みかづき』。  小学校の用務員として働く大島吾郎が、新たに塾を立ち上げようと考える赤坂千秋と出会い、塾講師として、経営者として奮闘する物語です。読めば塾教育の歴史が楽しみな …

『小太郎の左腕』は出世の代償は高くつくことを教えてくれる小説

(※『小太郎の左腕』表紙より)  和田竜さんの小説『小太郎の左腕』。  山奥でひっそりと暮らす小太郎が、戸田家の名将・林半右衛門(はやし はんえもん)によって戦場に連れ出され、圧倒的な力を発揮する物語です。読めば、出世の …

こだわりを持って生きている?小川洋子『人質の朗読会』は不思議なのに心に残る小説

(※『人質の朗読会』表紙より)  小川洋子さんの小説『人質の朗読会』。  地球の裏側にある村で反政府ゲリラの人質になった8名は、暇つぶしに朗読を始めますが、いつの間にか自分の過去と向き合い、真剣に朗読しあうようになりまし …

これで最後!?東野圭吾『禁断の魔術』は科学よりも大切なものがあることを教えてくれる小説

(※『禁断の魔術』表紙より)  科学を何よりも信じていませんか。  私は信じていました。科学的な根拠があることが、何よりも正しいことだと考えていました。  しかし、東野圭吾さんの小説『禁断の魔術』を読んで少し考えが変わり …

離婚はイヤ!?滝口悠生『茄子の輝き』は妻を大切にしようと思える小説

(※『茄子の輝き』表紙より)  滝口悠生さんの小説『茄子の輝き』。  数年前に妻と離婚した男性があれこれ過去を振り返る物語です。読めば「妻を大切にしよう!」と思うこと間違いなし!?  今回は『茄子の輝き』のあらすじとおす …

正反対な二人だからこそ面白い!?/東野圭吾『マスカレード・ホテル』

(※『マスカレード・ホテル』表紙より)  自分とは正反対の人って嫌ですよね。  几帳面な人が片付けが出来ない人にイライラするように、頭の回転が速い人が遅い人をバカだと思うように、自己中心的な人が優しい人を優柔不断と決めつ …

病弱でも強くなれる!?畠中恵『しゃばけ』は妖怪が活躍するミステリー小説

(※『しゃばけ』表紙より)  10年ほど前に買った畠中恵さんの小説『しゃばけ』。  久しぶりに読みましたが、病弱なのに難題に立ち向かう若だんなの姿に感動しました。読めば自分も頑張ろうと思えること間違いなし!?  今回は『 …

終わりがある方が面白いのはなぜ?畠中恵『ちんぷんかん』感想

(※『ちんぷんかん』表紙より)  畠中恵さんの小説『ちんぷんかん』。  しゃばけシリーズ第6弾の本作は、兄・松之助の縁談が決まったり、幼馴染・栄吉の弟子入りが決まったりと、若だんなに様々な別れが訪れる物語です。  なかで …

本当の恋をしていますか?知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』は心揺さぶられる恋愛ミステリー小説

(※『崩れる脳を抱きしめて』表紙より)  知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』。  研修医の碓氷蒼馬(うすい そうま)が、脳に爆弾を抱える弓狩環(ゆがり たまき)と出会い、恋に落ち、そして彼女の死の謎に迫る恋愛ミ …