負の遺産を引き受ける覚悟はありますか?
私は新しい物好きの目立ちたがりな性格のため、負の遺産を引き受けるようなことはしてきませんでしたが、
東野圭吾さんの小説『夢幻花』を読んで、負の遺産を引き受けるかっこいい人たちのおかげで社会が成り立っていることに気づきました。
それだけでなく、次々と気になる謎が提示されるので、ページをめくる手が止まらなくなったんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 水泳でオリンピック出場を目指していた主人公の物語を読んでみたい人
- 気になる謎が次々と提示される物語が好きな人
- 誰かが負の遺産を引き受ける必要があるとわかる物語を読んでみたい人
- 東野圭吾さんの小説が好きな人
あらすじ:水泳でオリンピック出場を目指していた主人公の物語
物語の主人公は、水泳でオリンピック出場を目指していた秋山梨乃。
彼女は、ある出来事がきっかけで泳げなくなり、将来を不安に思っていましたが、
そんな彼女に母から「従兄の尚人が飛び降り自殺をした」と連絡がきます。
遺書は見つかっておらず、思い当たる原因もありませんでした。
こうして、謎の死を遂げた尚人のお葬式に参加することになった梨乃は、
久しぶりに会った祖父の周治から「家に遊びにおいで」と言われたので、遊びに行くようになったところ、今度は周治が何者かによって殺害されます。
梨乃は周治が殺される直前に、謎の黄色い花だけはブログに載せないで欲しいと言ったことを思い出し…。
という物語が楽しめるミステリー小説です。
感想①:異なる3つの物語が楽しめる
この小説では、先ほどあらすじで紹介した物語を含めて大きく3つの物語が語られます。
残り2つの物語を簡単に紹介していくと、
物理エネルギー工学第二科で原子力工学を学んでいる蒲生蒼太は、父と兄に除け者にされているように感じていましたが、
梨乃が尋ねてきたことで、兄が何か隠していることに確信を持ち、彼女が探していた黄色い花の正体を探る手伝いをします。
ところが、その途中で、蒼太が中学生の頃に恋心を抱いていた伊庭孝美とよく似た女性を見つけ、彼女の行方を追うことに。
浮気が原因で妻と別居している警察官の早瀬亮介は、どうしても秋山周治を殺した犯人を捕まえたいと思っていました。
中学生の息子が万引きの疑いをかけられたときに、秋山周治が助けてくれたからです。
それだけでなく、息子にお父さんの手で犯人を捕まえて欲しいと言われたからでした。
加藤シゲアキさんの小説『オルタネート』でも、絡み合っていく3つの物語が楽しめましたが、

この小説でも、これら3つの物語がどう絡みあっていくのか気になって、ページをめくる手が止まらなくなりました。
感想②:気になる謎が次々と提示される
先ほど、ページをめくる手が止まらなくなったと書きましたが、
それは、気になる謎が次々と提示されることも関係しています。
たとえば、この小説の始まりは、植木等が流行っていた頃に、ある夫婦が当然何者かに刀で斬られるところから始まります。
その後、場面は変わって蒲生蒼太が両親に連れていかれた朝顔市で伊庭孝美と出会い、良い関係になるも、なぜか当然別れを告げられる物語が描かれます。
この物語だけでも謎が気になって先を読み進めたくなりますが、
続いてあらすじで紹介した物語が語られていくので、続きが気になって仕方なくなるんですよね。
辻堂ゆめさんの小説『十の輪をくぐる』では、現在と過去が交互に語られながら、少しずつ謎が明かされていく物語が楽しめましたが、

この小説では、気になる謎が次々と提示されるだけでなく、すべての謎が黄色い花につながっていくので、物語がつながる気持ちよさも味わえました。
感想③:負の遺産を引き受ける覚悟はあるか?
さて、この物語では、「誰かが負の遺産を引き受ける必要がある」をテーマに描かれているように思います。
原子力工学を学んでいる蒲生蒼太は、博士課程まで進学していましたが、
震災と原発事故のせいで世間のイメージが大きく変わり、選択を間違えたと悔やんでいました。
しかし、ある人物の次のセリフを聞いて考えが変わるんですよね。
世の中には負の遺産というものがあるのよ。それを放っておけば消えてなくなるものなら、そのままにしておけばいい。でもそうならないのなら、誰かが引き受けなければいけないでしょう?
海堂尊さんの小説『ジェネラル・ルージュの凱旋』では、負の遺産をすべて引き受ける速水がかっこ良すぎる物語が描かれていましたが、

この小説を読んで、負の遺産を引き受けてくれるかっこいい人がいるからこそ、社会が成り立っているのだとわかりました。
まとめ
今回は、東野圭吾さんの小説『夢幻花』のあらすじと感想を紹介してきました。
負の遺産を引き受けるかっこいい人たちの姿に感動するミステリー小説なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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