今すぐ近所の食堂に通いたくなる小説/山口恵以子『食堂のおばちゃん』感想

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(※『食堂のおばちゃん』表紙より)

 外食していますか?

 私は美味しい食事を取るために外食してきましたが、『食堂のおばちゃん』を読んでお店の人とコミュニュケーションを取るために外食するのもありかなと思うようになりました。

 なぜなら、この小説に描かれている食堂が、とても心温まる場所だったからです。

 そこで今回は、『食堂のおばちゃん』を読むと、なぜお店の人とコミュニュケーションを取りたくなるのか書きたいと思います。




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 お店の人とコミュニュケーションを取りたくなる3つの理由

1. 美味しいおすすめ料理が食べられる

 冷や汁をご存知ですか。

 私は食べた記憶がないのでまったく興味がなかったのですが、本書を読んで考えが変わりました。今すぐ食べてみたくなったからです。

「冷や汁、中身は何ですか?」
客は真剣な顔で尋ねた。
「もう、普通ですよ。アジの干物、キュウリ、茗荷(みょうが)、青紫蘇(あおじそ)、それとよく擂ったゴマをたっぷり」
「う、美味そうだな…」
客がまたしてもゴクンと喉を鳴らした。
「ここの冷や汁はね、ご飯と素麺と選べるんですよ」
康平が少し得意げに口を挟んだ。
「え?素麺ですか?」
「いけますよ。水で洗ったご飯でサラッといくのも美味しいけど、冷や素麺も合います。ツルツル入っちゃう」

 このように、とても細かいところまで描写されているので、今すぐ食べたてみたくなるんですよね。

 他にも、自家製タルタルソース付きサーモンフライや牡蠣フライ、鰯のカレー揚げ、ビーフシチューなど美味しそうなご飯が多数登場。

 これらはメニューに載っていないこともあるので、お店のおばちゃんや常連客と会話をする必要があります。

 美味しいご飯にありつけるなら、お店の人とコミュニュケーションを取るのもアリだと思えてきませんか?

2. 他人よりも少し近い距離感に心温まる

 もちろん、お店の人とコミュニュケーションを取りたくなる理由は他にもあります。他人よりも少し近い距離感で接してくれるからです。

 たとえば、常連の万里は器用になんでもこなす青年ですが、小説家になる夢を捨てきれずバイト暮らしをしていました。しかし、両親に甘やかされたせいか、すぐにバイトを辞めてしまいます。

 そんな万里に向かって食堂のおばちゃんは、

「あんたもね、努力がみんなブーメランみたいに返ってくると思ってたら、世の中渡っていけないよ。仕事なんて、十回のうち九回は空振りするんだから。それでも腐らず二十回、百回とつづけていかないと、どんな仕事だって身につかないよ」

 と叱ってくれます。お節介だとも感じますが、これくらい近い距離感で接してくれる人をどこかで求めているように思うんですよね。

 食堂のおばちゃんや常連さんたちとの会話に入ってみたくなる物語です。

3. 希少性のある食堂

 そうは言っても、近所にこのような食堂があるようには思えません。その多くはチェーン店で、食堂というと潰れかけのお店しか浮かんできません。

 活気があって昔ながらの食堂。あまり見かけなくなったからこそ、無い物ねだりで通ってみたくなるのかもしれませんね。

 とにかく、『食堂のおばちゃん』は心温まる物語。これから外食するときは、昔ながらの食堂にも視野を広げて通ってみようと思います。

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 最後に

 SNSの発達によって知らない人との繋がりは増えましたが、一方で人間らしいアナログな繋がりは減っているように思えます。(ビートたけしさんの小説『アナログ』の感想でも書きました。)

 だからこそ、私たちはアナログな関係を求めて食堂に通ってみたくなるのかもしれません。

 もし、美味しい食事とあたたかい人間関係の物語に興味があるなら、『食堂のおばちゃん』を読んでみてはどうでしょうか。

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