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(※『食堂のおばちゃん』表紙より)


 食堂に勤めた経験がある著者・山口恵以子さんが描いた本作品。読めば心が温まるだけでなく、今すぐ食堂で美味しいご飯が食べたくなること間違いなしの小説です。

 今回は小説『食堂のおばちゃん』のあらすじと感想を紹介します。

 『食堂のおばちゃん』のあらすじと感想

第一話 『三丁目のカレー』

 食堂のオヤジと結婚した二三。彼女は結婚後もデパートで働き、出世階段を上り続けていましたが、夫の死をきっかけに義母・一子と二人で食堂のおばちゃんとして働くことに。

 この物語では、大衆食堂が似合わないIT企業のオーナーが、はじめ食堂に通いつめる姿が描かれます。なぜ彼は三日に一度、はじめ食堂に通っているのか!?

 最後に納得できる物語。優しい気持ちになれるお話です。

第二話 『おかあさんの白和え』

 なぜ二三は、母一人子一人のバツイチ男である食堂のオヤジと結婚したのか?が明らかになる物語。

 「世の中の人はなんとまあ、人を見る目がないのだろう」という言葉が心に残りました。結婚相手に必要なのは、見た目でも、才能でも、財産でもないことがわかります。

第三話 『オヤジの焼き鳥』

 はじめ食堂の並びにある焼き鳥屋・鳥千。そこの息子である進一は、父が経営する焼き鳥屋をつぶしてイタリアンのお店を出したいと言い出しました。もちろん父は猛反対。一体どうなる!?

 親を頼るよりも自分で行動することの大切がわかる物語。甘い考えをしていると、財産なんて一瞬でなくなってしまうんですね。

第四話 『恋の冷やしナスうどん』

 一子が階段を踏み外して軽い打ち身と捻挫に。一日の休みでお店は再開できましたが、七十二歳になる一子がこのままお店を続けていくのはムリがあります。そこでバイトを雇うことに。

 バイトくんは二三の娘・要と同級生で、彼女に好意をもっていますが、要は別の男性に夢中。バイトくんの恋の行方は!?

 恋は盲目ということが良く分かる物語。人は痛い目をみて成長していくのですね。

第五話 『幻のビーフシチュー』

 一子の夫が洋食屋を営んでいた頃にお世話をした男性がはじめ食堂を訪れます。その男性は、あの頃に食べたビーフシチューの味が忘れられないのでもう一度食べたいというのですが…。

 男らしさとは何かが学べる物語。一子の夫がかっこよすぎです。

 最後に

 『食堂のおばちゃん』は、読了後に心温まるだけでなく、今すぐ食堂で美味しいご飯が食べたくなる小説です。巻末にはレシピも紹介されているので自分で作ることもできますよ。気になった方はぜひ読んでみてください。

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