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 サイコパスっていますよね。彼らは良心を持たないので、好き放題に振舞っています。

 たとえば、多くの人を殺したにも関わらず少年法に守られて今も平然と暮らしている殺人鬼。彼は成人してからも被害者家族を侮辱するような本を出して大儲けしました。

 もちろん、このような本を出版した人間もサイコパスですが、そんな無敵のサイコパスに立ち向かうにはどうすればいいのでしょうか。

 サイコパスにはまともに立ち向かえない

 実は、25人に1人は良心を持たないサイコパスだそうです。想像以上に多いですよね。

 伊坂幸太郎さんの小説『死神の浮力』の主人公・山野辺の前にも多くのサイコパスが現れました。

 彼らは他人の苦痛がまったく気にならないので、またルールを守る意識も薄いので、できないことがありません。

 山野辺の娘を殺した本城もそのひとり。彼は他者を支配して勝つことだけを目的に行動していました。

 そのため、山野辺の娘を殺すだけでは満足出来ず、無罪を勝ち取り、さらに山野辺夫妻を徹底的に追い詰めていくんですよね。

 ほんと読んでいてムカつく奴ですが、ムカつくのは彼だけではありませんでした。

 マスコミやその周りにいる人まで敵になる

 娘を殺された山野辺夫妻に多くのマスコミが群がりますが、取材を受けないことがわかると、娘の名前が刻印された饅頭を投げつけてくる人間まで現れます。

 それだけでなく一般の人たちまで山野辺夫妻に嫌がらせの電話をしたり、手紙を送ったりしてきました。

 なぜなら、彼らはサイコパスだから。勝てるゲームだと分かると喜んで参加してくるんですよね。

 もちろん、山野辺夫妻を助けようとする人たちもいましたが、その多くは負けてしまいました。良心が働かない人たちは何でもありなので、想像を上回る攻撃をしてくるからです。

 一方で、裁判も被害者家族のためにやってくれるわけではありません。国や社会が余計な流血事件を減らすためにやっているだけです。

 これではサイコパスには立ち向かえませんよね…。

 サイコパスと闘えるのはサイコパスだけ

 ここでようやく死神の千葉の登場です。彼は死神なので良心なんて持ち合わせていませんでした。

 だからこそ、サイコパスである本城と闘えるんですよね。

 このような物語を読んでいると、残念ながら良心という人間にとっての最大の美徳は、サイコパスにとって何の役にも立たないのかもしれない…と思えてきます。悲しいですが、サイコパスと闘えるのはサイコパスだけなのかもしれません。

 ◆

 伊坂幸太郎さんの小説『死神の浮力』。ラストはスッキリ出来ますが、読んでいて怒りが湧き上がったり、悲しくなったりする物語でした。

 気になった方はぜひ。

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