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(※『死神の精度』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『死神の精度』。

 「死」をテーマにした物語なので暗くて重い雰囲気になると思っていましたが、読めば明るく楽しい気分になれること間違いなしの小説です。

 今回は『死神の精度』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 小説『死神の精度』のあらすじ

 物語の主人公は死神の千葉。彼は監査部から指定された人間を調査し、「死」を実行するのに適しているどうかを判断するために人間界にやってきました。

 この小説では、6人の人間を判断します。

死神の精度

 大手電機メーカーで苦情係をしている藤木一恵は、つらい毎日に嫌気が指し、死にたいと思っていました。そんな彼女の前に突然現れたのが死神の千葉。彼女は千葉にストーカーまがいの電話をかけてくる男がいることを相談します。しかし、その男は――。

死神と藤田

 やくざ者の藤田は、誠実と任侠を大切にする男。先日も、年寄りを路地裏に引き込んで金を奪った若者を殴り、骨を折っています。しかし、それが原因で栗木というヤクザから命を狙われることに。藤田は大勢のヤクザ相手に一人で立ち向かう!?

吹雪に死神

 吹雪のなかを歩いて洋館にたどり着いた千葉。そこで次々と殺人事件が起こります。他人の死に興味はない千葉でしたが、探偵役として謎解きをすることに。いったい犯人は誰!?

恋愛で死神

 ブティックで働く萩原は向かいのマンションに住む古川朝美に恋をしていました。しかし、朝美は萩原を悪徳勧誘の人間と勘違いしており、警戒しています。千葉を巻き込んでなんとか誤解を解いた萩原でしたが、残された時間はあとわずか。彼の恋は成就するのか!?

旅路を死神

 子どもの頃のトラウマを抱えたまま二十歳になった森岡は、あることがきっかけで母をナイフで刺し、街で若者を殺害します。その後、千葉を引き連れて十和田湖に向かうことに。はじめは強気だった森岡でしたが、徐々に自分がやろうとしていることに疑問を持つようになりました。そして最後は――。

死神対老女

 散髪屋を営む老女は、千葉を見た瞬間に「人間じゃないでしょ」と彼の正体を見抜きます。その後、老女は千葉を巻き込んで音信不通だった孫に会う準備を整えました。彼女は無事、孫に会えるのか!?

 死神のキャラクター設定が面白い

 死神というと怖ろしいイメージがありますが、この物語では違います。

 まず外見は、ターゲットに接触しやすいもの――若い女性が相手なら、ファッション雑誌の男性モデルとしても通用する青年になってやって来ます。場合によっては、ターゲットの恋人になることもあるのだとか。

 ターゲットに接触している間も、ご飯をおごったり、優しく接したり、相談にのったりと至れり尽くせり。

 そんな彼らの仕事は、ターゲットを1週間調査し、「可」か「見送りか」を判断すること。ただし、判断基準は個人の裁量に任されており、よほどのことがない限り「可」を選択します。

 それなら、なぜ死神たちは人間界にやってくるのか。

 それは音楽を聴くためです。死神たちは人間が生み出した音楽をこよなく愛しており、調査そっちのけで音楽を聴き続けます。

 こうした設定が暗い物語を明るくしているのでしょうね。

 死神のセリフが場を和ませる

 さらに、死神たちは賢いようでどこか抜けています。

 たとえば、四十代の男性として人間界にやって来た千葉は、若いヤクザに絡まれたときに、「俺にあったのが運の尽きだからよ」「おっさんくらいの年齢だと、年貢の納め時、とか言うんじゃねえの」と言われます。それに対して、

「年貢制度は今もあるのか?」

 なんてズレた返答をします。こうした彼らのセリフが、緊迫した場の雰囲気を和ませてくれるんですよね。

 登場人物の誰もが死を受け入れている

 何よりもこの物語を明るくしているのは、死神に狙われたターゲットたち。

 彼らは死に直面しても、ジタバタしません。残された時間を自分らしく生きていこうとします。

 そのため、重たいテーマを扱っているにも関わらず、明るく楽しい雰囲気になるんでしょうね。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『死神の精度』。「死」をテーマにした物語ですが、読めば明るく楽しい気分になれること間違いなしの小説です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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