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 自分の行動に意味づけしていますか?

 「なぜこの仕事をしているのか?」「なぜこの本を読んでいるのか?」「なぜブログを書いているのか?」…などなど。

 私はどんなことでも「なぜ?」を考えないと気が済まない性格なので意味づけしていますが、伊坂幸太郎さんの小説『死神の精度』を読んで、意味づけすることが人間らしさなのかな?と思うようになりました。

 「生きている理由なんてもとからないんだ」と決めつける死神と、生きる意味を追い求める人間との対比で強くそう思うようになったんですよね。

 生きている理由なんてないと考える死神が主人公

 では、あらすじから。

 物語の主人公は「千葉」と名乗る死神。彼ら死神は人間界に派遣され、対象者と接触し、8日後に死を与えるべきかどうかを見極める仕事をしていました。

 ところが、死神は「人間が生きている理由なんてもとからないんだ」と考えているので、ほとんどの対象者に「死」を与えます。

 今回、千葉が担当することになったのは、電機メーカーで苦情処理係をしている藤木一恵という女性でした。

 彼女は人生そのものに疲れていたようで、年齢よりも老けて見え、どこか冴えない印象です。

 千葉はそんな彼女に魅力的な男性の姿で接触します。彼女のスーツを汚してしまったお詫びに…と言ってロシア料理店に誘うんですよね。

 そこで彼女は、自分を指名して電話をかけてくるクレーマーに悩まされていることを打ち明けます。

 さらにその後、彼女はそのクレーマーの男性が自分を指名する理由が知りたいと言い出し、彼に会いに行くことにしました。

 彼女の後をつけた千葉がそこで目にしたのは…。

 誰もが生きる意味を追い求めている

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、千葉は多くの人間に「死」を与えるために人間界に派遣されてきましたが、彼が死を与えようとしている人たちはさまざまなことに意味を求めていました。

 藤木一恵が自分を指名して苦情をいうクレーマーに会いに行ったのは、自分に何らかの価値があるのでは?と期待していたからでした。

 ヤクザ者で男気溢れる藤田の舎弟は、正義は必ず勝つと信じて「組」を裏切ってまで藤田を応援し、男前の萩原は、自分の性格を好きになってくれる女性がいると信じて、外見の良さを隠して彼女を作ろうとします。

 幼い頃のトラウマを引きずって人殺しをした森岡は、犯した罪の正当性…存在するはずのない意味を探し求めるんですよね。

 このように、私たち人間は恋愛から殺人に至るさまざまなことに意味を求めていますが、その究極が「生きる意味」です。

 つまり、この物語は、物事の意味を考えようとしない死神と、意味を追い求める人間との対比で、人間らしさとは生きる意味を追い求めることなのでは?と思える構成になっているんですよね。

 それだけでなく…。

 人はいつかは死ぬ

 人はいつかは死ぬという当たり前の事実に気づかせてくれる物語でもあります。それに気づけば、今を一生懸命に生きようと思えますよね。

 というわけで、伊坂幸太郎さんの小説『死神の精度』は、人間らしさとは生きる意味を追い求めることなのかもと思える物語です。

 もちろん、サスペンスとしても面白い物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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