webstation plus

 自分を客観的に評価できていますか?

 ある有名な実験によると、多くの人が自分を客観的に評価できていないことがわかっています。その実験とは、「あなたはクルマの運転が他人よりも上手いと思いますか?」という質問に対して、約8割の男性が「他人よりも上手い」と答えたというもの。この実験から自分を客観的に評価することの難しさがわかりますよね。

 しかし、自分を客観的に評価できないと、いつか痛い目を見ることになるかもしれません。漫画『デスノート』の主人公・夜神月(ライト)のように。

 『デスノート』のあらすじ

 漫画『デスノート』は、あらゆる才能に恵まれた夜神月が名前を書くだけで人を殺すことができるノート(デスノート)を拾うところから物語が始まります。

 最初はデスノートの力を疑っていたライトでしたが、テレビに映っていた犯罪者を殺害できたことをきっかけに、次々と犯罪者を殺していきます。

 その背景には「犯罪者を殺せば世の中は良くなる」という正義感があったのですが、ライトを捕らえようとする無実のFBI捜査官を殺害するなど、彼自身も犯罪者の仲間入りをしました。しかしライトは、「自分は犯罪者ではない。特別な人間なんだ」と自らの行動を正当化し、殺人をやめようとはしませんでした。

 その後、ライトは最大のライバルであった謎の捜査官「L」との闘いに勝利し、新たな世界の神になろうとしますが、Lの後継者に敗れ死亡。物語は幕を閉じます。

 私たちが犯してしまいがちな矛盾とは?

 この物語で私が衝撃を受けたのは、ライトが自らの行動を顧みることなく殺人を繰り返したところです。「犯罪者は生きる価値などない」と言いながら、自ら犯罪者の道を突き進んでいくライトの姿に、私たちが犯してしまいがちな大きな矛盾を見せつけられたように思います。

・「俺だけを愛して欲しい」と言いながら浮気をする男性
・「お金がない」と言っているのに頻繁にスタバでお茶している女性
・子どもに「もっと勉強しなさい」と言いながらスマホゲームに夢中になっている親

 などなど。どれも自分の行動を客観的に見れていませんよね。しかし、自分ではわからないだけで、他人から見れば丸わかりです。そのため、このツケはいつか必ず自分に返ってくるんですよね。デスノートの結末のように。

 というわけで、『デスノート』は、私たちが犯してしまいがちな自己正当化を見直すきっかけを与えてくれる漫画です。客観的に自分を見れていないと思った人は、ライトの姿を通して、自らの行動を反省してみてはどうでしょうか。

 関連記事

あなたの人生がつまらない理由/下村敦史『生還者』

 コカイン疑惑報道を受けて、芸能界から引退することを決められた成宮寛貴さん。彼は、母子家庭で育ち、中学生のときに母親を亡くした後、弟の面倒をみるなど苦労を重ねた末に芸能界で活躍されていましたが、写真週刊誌「FRIDAY」 …

40歳以降の人生を輝かせる方法/重松清『トワイライト』

 40歳という年齢は、「人生の節目」なのかもしれない。  たとえば、有名な心理学者であるユングは「40歳は人生の正午である」と言った。人生を太陽の軌道にたとえるなら、40歳は正午(ピーク)であり、それを過ぎると衰えていく …

『愚者のエンドロール』はミステリーの謎に迫るミステリー小説

(※『愚者のエンドロール』表紙より)  米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。『氷菓』に続く古典部シリーズで、前作よりもミステリー要素が濃い作品です。  前作『氷菓』の紹介はこちら  今回は、ミステリーの謎に迫るミス …

「退屈」こそが人生を切り開く/冲方丁『天地明察』

 好きでもない仕事に「のめり込む」のはリスクが高い。なぜなら、自分のミッションに気付く前に、目の前にある仕事に満足してしまう可能性があるからだ。もし、目の前にある仕事がどうしても好きになれないのなら――その仕事に打ち込む …

家族とは何か/森見登美彦『有頂天家族』

 「家族」ってなんだろう。血がつながった人たちの集まりのことだろうか。それとも、一緒に暮らしている人たちのことだろうか。あるいは、愛し合っている人たちの集まりのことだろうか。  たぶん、どれも正しくて、どれも間違っている …

『魔王』は自分の考えを信じる大切さを教えてくれる小説

(※『魔王』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『魔王』。政治を舞台に、他人の意見に同調することの怖ろしさと自分の考えを信じる大切さを教えてくれる物語です。  今回は、『魔王』のあらすじと感想を紹介します。  『 …

『ラッシュライフ』は5つの物語がリレーのように繋がっていく小説

(※『ラッシュライフ』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『ラッシュライフ』。5つの物語が交差して、まるでリレーのように繋がっていく作品です。  ある人にとっては不可思議な出来事でも、他の人にとっては当然の出来事で、不可思 …

タイトルに込められた真意とは?/山本兼一『利休にたずねよ』

 小説『利休にたずねよ』には、大きな謎が三つある。  ひとつは、「利休はなぜ美の頂点に君臨することができたのか」。当時、茶の湯には人を殺してでも手に入れたいほどの麗しさがあり、道具ばかりでなく、点前の所作にもそれほどの美 …

『残り全部バケーション』は悪人のセリフで前向きになれる小説

(※『残り全部バケーション』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『残り全部バケーション』。当たり屋や強請りといった悪どい仕事で生計を立てる溝口と岡田が主人公の物語です。  しかし、溝口と岡田のセリフに促されて前向きな気持ち …

『まほろ駅前多田便利軒』は心の奥底を揺さぶられる小説

(※『まほろ駅前多田便利軒』表紙より)  三浦しをんさんの小説『まほろ駅前多田便利軒』。人間の闇の部分に焦点を当て、それを暗すぎず、明るすぎず、ちょうどいい文体で描かれた小説です。読み進めていくうちに心の奥底を揺さぶるこ …