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 ソ連という国についてどれだけ知っていますか?

 私は共産主義であるソ連に対して、なんとなく恐ろしいイメージを持っていましたが、『崩壊の森』を読んで、その恐ろしさが倍増しました。

 私が想像していた以上に恐ろしい国なんですよね。ソ連で取材をしていた記者たちを尊敬するようになりました。

 盗聴や尾行、ハニートラップが当たり前の国

 モスクアはゴミの臭いとガソリンの臭いがとてもひどかったそうです。タクシーの運転手は、これを共産主義の臭いだと言いましたが、それはインフラが整備されていなかったからです。見た目だけ整えていたんですよね。

 このような見た目だけ整えることは、至るとことで行われていました。建前上は自由に報道できると言いながらも、記者の電話を盗聴したり、尾行したり、ハニートラップを仕掛けて国外追放したりと、恐ろしいことだらけです。

 実際、物語の主人公・土井垣も尾行されたり、家の中を無断で調べられたり、クルマをパンクされたりしました。

 そんな状況でも、土井垣は特ダネを掴もうと必死で行動します。その結果…。

 人とのコミュニケーションの積み重ねが特ダネにつながる

 特ダネをモノにしますが、そこに至るまで多くの人たちとのコミュニケーションを地道に積み重ねてきました。

 ソ連ではお酒を飲まないと話し相手として認めてもらえません。ウォッカを何杯も飲まないとダメなんですよね。

 しかし、そうやってグラスを空けたとしても、しかもこちらの奢りでも、重要なことは何ひとつ話してもらえません。なぜなら、彼らは西側諸国を警戒していたからです。

 アメリカは戦争、略奪、諜報と好き勝手をして世界を悪くしているのに、問題はソ連だと押し付けてくる…と考えていました。秘書でさえも心を開いて話してくれません。

 それでも土井垣は、小さなチャンスを確実にモノにしていきます。その結果、特ダネを報道することができたのですが…。

 ソ連という国のことをもっと知りたくなる物語

 ソ連の闇は彼が考えている以上に深いものでした。それがラストで描かれるのですが、それも含めてソ連という国についてもっと知りたくなるんですよね。

 これまでフワッとしか知らなかったゴルバチョフやエリツィン、ペレストロイカについて詳しく知りたくなります。

 このように、『崩壊の森』は私のようなソ連について何も知らない人が読んでも楽しめる物語。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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