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 「4回泣ける」と評判の『コーヒーが冷めないうちに』を読みました。残念ながら、Amazonのカスタマーレビューに書かれている通りツッコミどころ満載の小説でしたが、設定が面白くて最後まで一気に読んでしまいました。

 一見拙い文章でも、人の心を動かすのなら、それは力ある文章と言えます。

 と、齋藤孝さんが言っている通りですね。登場人物の名前が覚えにくくても、唐突なセリフに戸惑うことになっても、伏線を張っているように見せかけて回収されることがなくても、最後まで読んでしまう小説でした。

 物語の舞台は、とある街の片隅にある小さな喫茶店。その喫茶店のとある席に座り、コーヒーを入れてもらうと――、過去に戻ることができるというお話です。

 これまでもタイムトラベルを扱った映画や小説はいくつもありました。しかし、その多くは、過去や未来に行くことで現在を変えることができます。

 たとえば、私が大好きな映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、主人公・マーティが過去にタイムトラベルすることで、自分という存在が消えそうになるのを防ぐ物語です。母が車にひかれそうになったのを、父の代わりに救ったせいで、母が父ではなく息子であるマーティに恋をしてしまったからです。

 しかし、『コーヒーが冷めないうちに』は違います。過去に戻っても現在を変えることができません。たとえ交通事故で死ぬことがわかっていて、過去に戻ってそのことを本人に伝えたとしても、死から逃れることができないのです。それだけでなく、過去に戻るには面倒な制約がいくつもあります。

  1. 過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことのない者に会うことはできない。
  2. 過去に戻って、どんな努力をしても現実は変わらない。
  3. 過去に戻れる席には先客がいる。その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ。
  4. 過去に戻っても、席を立って移動することはできない。
  5. 過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから。

 それでも、「過去に戻る」ことで奇跡が起きるというお話なのですが、では、なぜ現在を変えることができなくても奇跡が起きるのでしょうか。それは、過去に戻った人たちが、過去に向き合うことで「嫌いだった自分」を受け入れるからです。

 過去の自分を「ダメな自分」として否定してしまうから、仕事のできる自分も、ミスしない自分も、勇気のある自分も、信頼される自分も遠のいてしまうのです。

 とは、心屋さんの言葉ですが、この言葉どおり過去の自分を否定している限り「望んでいる自分」にはなれません。「仕事をもっと楽にしたい」という望みをかなえたければ、「人に仕事を頼むのがイヤ」という望ましくないことを受け入れるしかありませんよね。それと同じように、嫌な過去を受け入れるからこそ、望んでいる自分になれるのです。

 というわけで、『コーヒーが冷めないうちに』は、「過去の自分にこだわり過ぎて変われない」という人にオススメの小説です。気楽に読める小説ですので、時間があるときにでも読んでみてはどうでしょうか。過去の自分を受け入れるキッカケになるかもしれませんよ。

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