人とのつながりを大切にしていますか?
私は結婚して家族がいるので、どうしても家族優先になってしまいがちですが、
青山美智子さんの小説『木曜日にはココアを』を読んで、今まで以上に人とのつながりを大切にしたくなりました。
人とのつながりが人生を切り開くきっかけになることがわかる物語が描かれていたからです。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 12編のショートストリーが楽しめる物語を読んでみたい人
- 人とのつながりが新たな扉を開くキッカケになることがわかる物語に興味がある人
- 未来は恐ろしいシナリオになるとは限らない理由を知りたい人
- 青山美智子さんの小説が好きな人
あらすじ:ココアを注文する女性客に恋する主人公の物語
物語の主人公は、マーブル・カフェに勤めているワタル。
彼は毎週木曜日の午後3時頃にやってきて、窓際、隅の席に座ってホットココアを頼む女性に恋をしていました。
英文のエアメールを読んだり、英語のペーパーブックを読んだり、窓の外を眺めたりしている少し年上の女性に惹かれていたのです。
とはいえ、こちらから話しかけるようなことはせずに、自分のできる限りを尽くそうとしていました。
彼女は決してワタルを見ようとしなかったからです。
そのため、木曜日には、とびきりおいしいココアを彼女に捧げる。それがすべてでした。
ところが、7月半ばになったある日。マーブル・カフェにやってきた彼女の頬に涙が伝うのを見たワタルは…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:12編のショートストリーが楽しめる
この小説では、あらすじで紹介した物語を含めて、12編のショートストーリーが楽しめます。
簡単にいくつか紹介すると、
- 専業主夫の夫を持つ朝美が生まれて初めて息子のお弁当を作ろうと奮闘する物語
- 幼稚園に勤めるえな先生がマニキュアを塗って出勤したことを先輩保育士から注意される物語
- 康子に老後は一緒に暮らそうと約束していた理沙がバツイチの男性と結婚する物語
- 新婚旅行でオーストラリアにやってきた理沙が結婚相手のひろゆきさんに20分ほど放置される物語
- 結婚して50年になる美佐子が夫とのこれまでを振り返る物語
これら12編のショートストーリは、どれも主人公が異なっていますが、
前の物語と関わりのある人物が主人公として描かれているので、長編のような楽しみ方ができるんですよね。
凪良ゆうさんの小説『滅びの前のシャングリラ』でも、繋がりのある4つの短編が楽しめましたが、

この小説では、最初の物語から少しずつ遠ざかっていき、ラストではじめの物語と綺麗につながるショートストーリーが楽しめました。
感想②:人とのつながりが新たな世界の扉を開く
この小説では、人との繋がりが新たな世界の扉を開くキッカケになることがわかる物語が描かれています。
あらすじで紹介したワタルもそのひとり。
彼は、高校を卒業してから勤めていたチェーン店のレストランが経営不振になり、リストラにあいました。
就職活動もうまくいかず、暇に任せて歩いていたところ、カフェを見つけ、そこでアルバイト募集の張り紙があったので、マスターに声をかけました。
すると、マスターはすぐに正社員で採用と言って、マーブル・カフェをワタルに任せてしまうんですよね。
他にも、絵を描くことを趣味にしていた朝美の夫も、マスターと出会ったことで、京都で開催されるグループ展に出展できることになり、
翻訳家を目指していたアツコも、マスターに出版社を紹介してもらったことで、長年の夢だった児童文学の翻訳ができるようになりました。
町田その子さんの小説『52ヘルツのクジラたち』では、虐待されていた少年が主人公と出会ったことで救われていく物語が描かれていましたが、

この小説では、マスターを始めとする優しい人たちとの出会いが新たな世界の扉を開くきっかけになることがわかる物語が描かれていました。
感想③:未来は恐ろしいシナリオになるとは限らない
さて、この小説では、「未来は自分で描いた恐ろしいシナリオ通りになるわけではない」をテーマに描かれているように思います。
心臓病を患っていたメアリーはある人物と出会い、励まされて、次のように考えを改めました。
私たちは1秒先のことも知らないまま暮らしている。自分の意思だけではどうしようもない、抗えないことも向こうから訪れる。そんなとき果てなくふくらんでいく不安は、私たちにおそろしいシナリオを書かせる。自分で作ったストーリーなのに、まるで誰かに与えられた未来のように、そしてそれがもう決まってしまったかのように、私たちは脅かされる。でも本当は、そんなものはどこにも実在しないのだ。
つまり、未来は私たちの想像以上に広い世界がひろがっているんですよね。
もちろん、一人ではつまづくこともあります。
だからこそ、先ほども書いたように、人との繋がりが大切なのです。
森絵都さんの小説『ラン』では、一人ではムリでも仲間がいれば辛い現実も乗り越えられるかもと思える物語が描かれていましたが、

この小説でも、人とのつながりを大切にして、自分を信じて行動していけば、未来は想像以上に広い世界がひろがっていると思える物語が描かれていました。
まとめ
今回は、青山美智子さんの小説『木曜日にはココアを』のあらすじと感想を紹介してきました。
人とのつながりが人生を切り開くきっかけになることがわかる物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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